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多様性に気づけた日

塩谷舞さんの『ここじゃない世界に行きたかった』を読んでから多様性について考えることができた.

少し前に『ポピュリズムとは何か』を書いたときに触れたアメリカのRustBeltに関する話題を塩谷さんも触れていた.

僕はトランプ氏を支持する共和党陣営とバイデン氏を支持する民主党陣営で二項対立のように書いたのだが、実際の事情はもっとカオスで記事を書いた僕はなんだか自分の考えの甘さを反省した.  

RustBeltはアメリカに存在する旧工業地帯のことで、五大湖周辺の豊富な鉱山資源を利用して豊かな時代を築いた.

しかし20世紀後半になるとグローバル化に伴い工場の海外移転が相次ぐ.国内の重工業、製造業は衰退し大規模なレイオフが行われる.

その土地で働いていた多くの労働者は路頭に迷うことになったのだ.

そんな時にトランプ氏が放った言葉によってRustBeltの人々はトランプ氏を支持する.

「アメリカを再び偉大な国に」

RustBeltの人々がずっと待ち望んでいた言葉だった.

メディアではトランプ氏の当選に対して冷ややかな目線を向けることが多い.特に支持層の多くが非エリート層、低学歴層であることに批判をしていたが、その批判している相手は、かつてのアメリカを支え続けてきた人々だった.

如何にメディアが安易に批判をしているか理解できる.


だからと言って僕はトランプ氏の政策に賛成することはできない.

トランプ氏の主張は化石燃料の開発に規制をかけることなく際限なく経済中心主義の提唱である.地球環境の保護のために結んだパリ協定を否定し脱退するなど今後の地球環境を無視した政策には賛成できない.

だが、トランプ氏を支持する人々の気持ちも理解できる.

環境問題を中心にトランプ氏を批判できるのは生活に困ったことのない幸せの人たちで合理的に判断することができるのだろう.

僕らは小さい頃から学校で「経済<環境」であると学んできた.

環境に勝る問題はないと言われてきた.

しかしそんな話は虚構の世界でしかなかったのだ.光を掴むつもりで望んでいる人たちがいたのが事実だった.

表象の世界で生きる僕たちと完全に閉ざされ忘れ去られた世界で生きる人々のギャップは凄まじい.

トランプ氏当選の支持者が低学歴、ノンエリート層だという表象の部分から少しずつ支持者のバックグラウンドを見ていくと世界のカオスさに気づくことができる.僕はこれが皆の言う「多様性」だと思う.

意見の相違を相対性と理解するのではなく、バッググラウンドから見て共感する.理解する.それが多様性なのだと.

世界はよくマジョリティとマイノリティの属させてマイノリティを多様性として擁護したがる.しかしそれは多様性の名前を使った悪である.相対的に考えてしまえば「そう言う意見もあるよね」で終わってしまう.そこに深い理由があっても......

だからこそ、たくさん話あう必要がある.

相手の主張を理解するのではなくて.....

自分の主張というのは趣味と同じようなものでそこに憧れの人がいたり、同じ意識を持った友人がいたりする.しかし、全く趣味思考が合わない人がいたり自分に対して嫌悪感を持った人もいる.

そんな人たちと話すことで自分の主張を理解、知ることができるのである.なぜ自分はこの主張を持っているのか.....

知ってみると意外にも自分の浅はかさ、甘さを感じる.そして相手にさらに嫌われたり、暴言を吐かれたりするかもしれない.

でも自分を見つめ直す機会だと思えば、暴言を吐かれた時の感情はサンクコストで処理してしまえばいい.
新しい価値で上乗せすればいい.そんな楽観的な感覚が一番いいと思っている.

自分の考え方を改めていくと面白い発見や視点が生まれてくる.ここが多様性なんだと思うんだけど中々難しくて.....

多様性は自分の中の理解で他人とは共有できないのかもしれないけど、多様性を感じることができたならば今のような罵詈雑言が飛び交い、表象だけの世界でマイノリティを見ない事態は避けられるのではないだろうか.

改めて多様性を考えるとユートピアのような世界は想像し難い.どちらかというと生々しくてカオスな状態に近いと思う.

今回のRustBeltの人たちを見れば多様性は表象をエグり取った現実の世界のようにも思える.

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