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第4章 スキマ時間を活用する勉強法−机に向かう時間を減らす(3)電子書籍Kindleなら辞書いらず

大学教員や研究者を目指す上で、文献収集を欠くことはできません。

論文執筆のための研究書や論文、報告書、新聞・雑誌記事、さらには授業資料作成のための教科書類など、気がつけば部屋の中は本や資料だらけになってしまいがちです。

私が大学院修士課程にいた頃は、パソコンやインターネットが大きく普及し始める頃でしたが、書籍や論文の電子化は今ほどには充実してはいませんでした。

現在では、J-STAGE(1998年プロジェクト開始)やcinii(2004年サービス開始)、Google Scholar(2004年サービス開始)などの論文・文献検索サイトが非常に充実しています。

特に、J-STAGEは無料ダウンロードできる論文が豊富に表示されますので、大変重宝しています。

また、書籍についても、電子化されるタイトルが増えてきました。特にオススメしたいのが、Amazonが提供するKindleです。

私がKindleを本格的に利用し始めたのは、前任校から江戸川大学へ異動する際の研究室退去がきっかけでした。

江戸川大学への異動が内定した、2020年1月末から少しずつ研究室の整理を進める過程で問題となったのが大量の書籍でした。

元々本を集めることが大好きで、暇と金に飽かせては、せっせと本を買い集め続けていました。気が付いた時には、研究室も自宅も大量の本で溢れかえることとなってしまいました。

研究室退去に際して、法律の改訂などにより陳腐化した書籍は処分し、今後も読む予定のない書籍は古本屋で売却しました。

それでも、300冊くらいが継続保有となりました。そこで目をつけたのが、Kindleでした。

以前から何かと話題となっていたKindleには大いに関心を持っていました。しかし、デジタルデータに冊子体とほぼ同じ金額を投じることには、多少の抵抗感があって踏ん切りがつかず、Kindle導入に至りませんでした。

しかし、3月中に研究室を退去しなければならないという現実的な問題がある以上、大量の書籍を何とかしなければなりません。

そこで思い切って、Kindleのタイトルがある書籍はすべてKindleに置き換え、冊子版は売却することとしました。しかし、当時はまだタイトル数が現在ほど多くはなかったため、Kindleに置き換えることができたのは、30冊ほどに留まりました。

残り270冊の書籍は、毎日少しずつ持ち帰りました。しかし、交通新聞縮刷版や大量の資料類は持ち帰りきれず、最後は自家用車で2往復して、ようやく退去を完了することができました。

その後、Kindleのタイトルは増加し続け、異動当時はKindle化されていなかったタイトルも、後にKindle化されたものもあり、江戸川大学への異動後も少しずつKindle版への置き換えを進めました。

以上のような経緯でKindleを使い始めましたが、使ってみると大変快適であることが分かりました。主な利点は下記の通りです。

まず、重たい冊子版を持ち歩かずに済むようになったことがあります。これまでは、書籍が重いため、持ち歩くのも2冊程度に留めていましたが、Kindleであれば、専用端末あるいはスマートフォンを持ち歩くだけになりました。

日本マイクロソフトの社長を務めた成毛眞さんは著書『本は10冊同時に読め』(三笠書房、2008年)の中で、次のように語っています。

読書の仕方を変えるだけで、高所得階級になれる可能性が出てくるのだ。

みんなと違う読書法−それが本書で紹介する『超並列』読書術である。『超並列』読書術とは、一言でいえば、『本は10冊同時に読め』ということだ。(中略)

私の家のリビングには50冊以上の本が置いてあり、寝室には2、3冊、トイレにも3、4冊の本が置いてある。また、会社の机の上にも数十冊の本が積んであり、カバンの中には通勤用の本が常時2、3冊入っている。(中略)

他の人が探すだろうところから情報を集めていたのでは、他の人が思いつくようなアイデアしか生み出せない。(中略)

「超並列」読書術なら、そうして仕入れたさまざまな情報を自在に組み合わせて、今までにはないアイデアを生み出すこともできる。

成毛眞『本は10冊同時に読め』三笠書房、2008年。

成毛さんの「超並列」読書術も、冊子版の書籍で実行するのは結構大変な印象です。事実、カバンの中に入っている通勤用の本も2、3冊と書かれています。私は2冊が限界だと考えています。

しかし、Kindleであれば、10冊どころか、100冊だって同時並行してどこでも読書が可能です。成毛さんの「超並列」読書術は、Kindleで行うと効果は何十倍にもなりそうです。

2つめは、Kindleでは読みたいタイトルを1つの端末の中で自由に切り替えることができる点です。これにより、複数の本を何冊も並行して読むことが気軽にできるようになりました。成毛さんの提唱する「超並列」読書術もお手のものです。

冊子版しかなかった頃は、別の本を読みたい場合は、カバンにいま読んでいる本をしまって、読みたい本を引っ張り出さなければなりませんでした。これが意外と手間でした。

そして、外で複数の本を読める冊数は2冊が限界でした。これ以上は重くて無理でした。それが、Kindleによって解決しました。

3つめは、本を探す手間がなくなったことです。それまでは、論文を執筆する際、参照したい書籍を探すのが大変でした。そもそも、自宅にあるのか、大学の研究室にあるのかすらすぐにわからないこともしばしばでした。

また、すぐに参照したい書籍が手元になく困ったことも一度や二度ではありません。自宅で作業していて参照したい書籍が大学の研究室にある、またはその逆もありました。

Kindleでは、希望のタイトルを入力すれば、すぐに呼び出せます。先日も外のカフェで作業していた際、どうしても参照したい書籍があり、それがKindleでしたのですぐに取り出せました。Kindleの良さを実感したものでした。

4つめは、ブックマークやラインマーカーの機能があることです。気になった箇所はすぐに印をつけられますし、また印を削除することも自由自在です。冊子版ではマーカーを引くことに抵抗を感じたり、またマーカーがズレてしまって本が汚くなってしまったり、とトラブルがつきものですが、Kindleではそうしたリスクが一切ありません。

5つめは、複数の端末を登録できることです。自宅や職場ではパソコンで読み、通勤・通学途中ではKindle端末やスマートフォンなどと使い分けることができます。

6つめは、辞書機能が備わっていることです。意味がわからない単語をドラッグして指定すると、辞書が意味を表示してくれます。

特に、英語文献でその威力を実感できます。分からない英単語はドラッグして指定すると、訳の候補が出てきます。従来は、辞書を手元に置いて、分からない英単語が出るたびに、辞書を繰る作業が必要でしたが、そうした煩わしい作業から解放されることになりました。

その他、コピー・アンド・ペーストによる本文の引用も一定の分量まで可能です。論文作成時などに大変便利に使えます。

このように、Kindleにはたくさんの便利で優れた機能が備わっています。使わない手はありません。

また、冊子版よりもKindle版の方が安価な場合もあり、この点も大きな魅力になっています。

紙の本から解放されると、身も心も楽になることを実感できます。未体験の方は、是非トライしてみてはいかがでしょうか。

いつしかその便利さに慣れ、Kindle版がないタイトルは買うのを躊躇うくらいに気持ちが変わります。

それでも、未だにKindle化されていない書籍も多数あります。研究書はまだまだKindle化が大きな流れになっていないのも確かです。

最近私が取り組んでいるのは、冊子版を自炊代行業者に依頼して、PDF化することです。Googleドライブに保存すれば、Kindleアプリで読むことができます。

手間とお金がかかりますが、自宅のスペース確保と、いつでもどこでも、研究書を読める環境を整備するためには、不可欠な手続きだと思っています。

一方、Kindleが普及すると、リアル書店が苦境に陥ることになってしまいます。今後の書店は、本の見本を提供する場所貸し的な店舗となって、電子書籍の販売に応じて版元から手数料を取るビジネスへと転換する可能性もあると思っています。

いずれにしても、Kindleの便利さは体験した人にしか分からないのは確かです。騙されたと思って、是非お試し頂ければと思います。

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