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《小説》おじいちゃんありがとう【おばあちゃんへの手紙外伝】

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朗読手書き小説としてYouTubeでもお聴きいただけます♪ 寝る前に流し聞きなどいかがでしょうzZ 【あおいろ万華鏡ch】にてお待ちしております🩵 https://youtu…
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2022年8月の記事一覧

おばあちゃんへの手紙 外伝10

おばあちゃんへの手紙 外伝10

おじいちゃんありがとう雪編3
「おじちゃん、
今、時間を忘れて
この雪の世界とひとつになっていたでしょ。」

「ああ、勇くんもかい。」

「うん。
おじいちゃんともひとつになってたのかな。

だってここに
僕もおじいちゃんもいなかった感じがしたよ。
ていうことは、
二人ともひとつの世界だった、
てことじゃない?」

おじいちゃんは嬉しそうに笑った。

「静寂と沈黙が、
”ひとつになる”ことのカギだ

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おばあちゃんへの手紙 外伝11

おばあちゃんへの手紙 外伝11

おじいちゃんありがとう大空襲編1

僕が四年生から五年生になろうとしていた
春休みのことだった。

おじいちゃんは季節の変わり目に体調を崩した。

もう一週間も布団で横になったままだ。

毎日枕元に行っては様子を伺う。

すやすや寝息を立てている時もあれば、
苦しそうに口で呼吸をしている時もある。

調子の良い時には
起き上がっておかゆをすすっている時もある。

反対に食事をとらないで寝たままの時

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おばあちゃんへの手紙 外伝12

おばあちゃんへの手紙 外伝12

おじいちゃんありがとう大空襲編2
 「おじいちゃんは奇跡的に助かった、
ていうのはどういうこと?」

 「根こそぎ街を焼き尽くすような空襲だったからね。」
おじいちゃんは
最初少しでも家財道具を持って逃げようと
父親は荷造りをしていて
母親に先に防空壕に逃げていなさい
と言っていたんだ。

それでそのとき
9歳だったおじいちゃんと
7歳だった弟と手を繋ぎ、
母親は当時まだ赤ん坊だった妹をおぶって

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おばあちゃんへの手紙 外伝13

おばあちゃんへの手紙 外伝13

おじいちゃんありがとう大空襲編3
そう言って僕は言葉に詰まった。

もし、その日の9歳の男の子の
小さな勇気と冷静さがなかったら。

恐ろしく強大な炎とともに一つになって
友達になり、そこに寄り添う暗闇を
味方にする賢さがなかったら。

きっと僕はここに生まれていなかった。
今の僕はいなかった。

 「ありがとう…。」

ようやくその一言が言えた時、

おじいちゃんは話し疲れてしまったのか、
既に

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