英文意訳:PMFは"CMF"に⁉︎ Web3時代の強靭なグロースのための「コミュニティとの向き合い方」を考えてみた
※以下、英文記事「 Creating a lasting Growth strategy for Web3 」の意訳です。ニュアンスが違うところが有るかもしれませんが、ご愛敬で。
※ほんでめっちゃ長いので、時間があるときにじっくり読んで下さい☆ 読了目安は「8~10分」です。
Web3時代に求められる強靭なグロース戦略のための「コミュニティとの向き合い方」を考えてみた
イントロ
当記事は、以下の構成で成り立つ3連続投稿の2番目にあたる。前回は、Web2時代のグロースモデルをWeb3企業に当てはめることの概観について綴った。
Web3企業が作る「強いグロース戦略」
「Web3精鋭チーム」を作るには
前記事でも触れたが、近頃はクリプト界隈やWeb3界隈への投資が記録的なスピードで行われている。今後、投資家も指数関数的な伸び方を期待するようになるだろう。
Y Combinator創設者の1人でもあるポール・グレアムも、自身のブログでこう綴っている。Web2革命の頃の言葉だが、今でも同じくらい重たく感じる。
「スタートアップ」とは、早く育つように設計された企業です。設立間もないとか、テック領域だとか、VCから調達したとか、イグジットするとか、そういうことではありません。
「グロース」こそスタートアップと呼ばれるための要素ですし、それ以外の要素も結局グロースから生まれているように思います。
では、長期的なグロース戦略を確立させるために、どのようなグロース・フレームワークが有効なのだろうか。
4つの「FIT」を振り返る
まずは、有名な「4つのフィット」のフレームワークをおさらいしよう。これは、グロース戦略を立てるうえで、重要な疑問や仮説を定義するためのツールとして使うのが良いだろう。
![](https://assets.st-note.com/img/1648908584271-T5yMoXo7Ra.png?width=800)
Market-Product Fit:
どのような問題を解決しようとしているのか?
誰の課題を解決するのか?
その問題への解決アプローチはどのようなものがあるか?
Product-Channel Fit:
プロダクトの性質に合った流通・顧客獲得チャネルは何か?
Channel-Model Fit:
上記のチャネルはそのビジネスモデルに合っているか?
Model-Market Fit:
そのビジネスモデルの属する市場はいかに大きく儲かる余地があるか?
、、、これに加え、Web3の文脈ではもう一つの「FIT」を足して考えると成功に近づくと、私は考える。
急成長しているDAO「JUMP」を題材に5つ目の「FIT」を定義する
5つ目のFitは、「CMF」だ。
Community-Market Fit (=”CMF”):
Who are the top 1% of the community contributors on your market?
「上位1%のコミュニティへの貢献者は誰だろう?」
・・・コミュニティは、持続可能で拡張性のあるグロースの原動力になり得る。有機的な成長のループや循環を通じてこれを達成することこそ「コミュニティの役割」のように思う。
数千人にも及ぶWeb3界隈のマーケターで構成される、急成長中のDAO「JUMP」を題材にして考えてみよう。このコミュニティは有機的に成長しており、まだペルソナをも見つけられていない世の中のプロダクトに対して、潜在市場を勝手に明らかにし始めたりしている(訳者注:有志や趣味の域を超えている!コントロール効かないから少し怖いが、、)
このDAOの成長は、JUMPのミッションとして掲げられている「多種多様なマーケターが、$JUMPトークンを通して価値創造を共有する世界を想像しています」から考えても、作為的に作られていると言えよう。いわば、コミュニティあるところに価値あり、だ。
JUMPの”CMF”をフレームワークに落とし込んでいく中で、4つの要素が浮上してきた:
カテゴリー
マーケティング・広告関係者のコミュニティである。
構成メンバー
広告代理店のプロやブランドマーケターが参加する。
課題
①Web3に関連した情報やニュースを1か所でサクッと見つけられる場所は非常に少ない。
②業界の人と繋がることのハードルが高い。
③マーケティングやブランディングのプロ達にとって、Web3領域で何かを始めるのは激ムズで、戸惑うことが多い。
モチベーション
①Web2マーケティングの役割をWeb3に移行することを注視している。
②Web3マーケティング、ブランド、プロダクトに関する最新の情報を集め続けたい。
③他のWeb3マーケターとつながる。
Web3企業(特に分散型の組織)にとってはグロースのエンジンになる基礎を作るという目的で、たった1%のアーリーアダプターをベースとしながら企業倫理やカルチャーを形成できる機会を手にした。
警告:コミュニティ形成は必要条件だが十分条件ではない!
仮に、大多数の興味関心を惹けたとしても、そのままPMFに繋がるとは限らないし、人々がコミュニティを愛するとも限らない。
コミュニティを形成すれば何でも解決するわけではないのに、ここ数カ月、勘違いしていて危ない匂いのするスタートアップを時々見かける。
直近では、NFTのエアドロップや無償配布が最も大きな成長のレバーになっている。コミュニティ形成というものの意義が神格化されていて、どのスタートアップも「コミュニティマネージャー」の採用を急速に行っているのが見て取れる。
しかし、これと似たような状況を、10年前に見たことがある。
そう、Web2時代における「グロース・ハック」の失敗だ。
確かに「急速なコミュニティ形成」は、成長のスパイラルを加速させるいい方法ではある。、、だが、過加熱市場やコミュニティのためにどのようなプロダクトを構築すればいいか絞り込んでいってしまうと、プロダクトは短命に終わるだろう。
では、真の「CMF」とはどんな形か?
コミュニティ形成は、あくまでも「戦術」でしかない。
戦術は、常に「グロースのプロセス」に基づいて然るべし。
そしてグロースのプロセスは「事業戦略」に基づいて然るべし、だ。
コアとなるコミュニティ、そこで発生する課題、コミュニティの動機、そして開発しているプロダクトの基本要素(訳者注:MVP的な、除けることのできない要素のことかなと推察)との間の整合性を取ることこそ、真のCMFへの道と言えるだろう。
上述のJUMPを例にとって、あるべき「コミュニティ」「市場」「初期のプロダクト」の関係性を定義してみた;
提供する価値のコア
マーケター、クリエイター、ブランドのプロフェッショナル達が集い、学び、研究し、Web3の世界を探求する場所であること。
関心のフック
Web3ブランドの未来を形作る活気あるコミュニティへアクセスできること。
価値を享受するまでの時間(TtV)
めちゃはや(JUMPへの応募 → Discordへのアクセス → 毎週発行される高付加価値なメルマガコンテンツを享受)。
コミュニティへの粘着性
非常に高い。上位1%の貢献者に居続けてもらう「戦術」として$JUMPトークンを提供するスキームを取る。
コミュニティと市場の動きに合わせてプロダクト側も適応していくことで、PMFは急発生してしまうことなく、基盤となるコミュニティの拡大につれて常に変化・変化してくれる健全な指標になる。
プロダクトやビジネスモデルの性質に合った流通・顧客獲得チャネルを考える
ほとんどのWeb3企業は、まだアーリーステージで、CMFやPMFを探している段階にあるだろう。そのため、大事なのは「自社プロダクトは、多様に存在する顧客獲得チャネルそれぞれにどのようにフィットするのか」、そしてフィットしたチャネルが見つかったと思ったら「そのチャネルが自社のビジネスモデルの特性になぜフィットしていると言えるのか」を念頭に置くことだ。
Paypal創業者のピーター・ティールは、著書の”Zero to One”で「ほとんどの企業は、流通チャネルを機能させられない。もし、たった1つのチャネルでも成功すれば、それは素晴らしいビジネスになる。いくつかのチャネルに挑戦して1つもうまくいかなかったら、もうおしまいだ」と綴っている。
つまるところ「Product-Channel Fit」とは、「現状のコミュニティやプロダクトに対して最も価値を見出してくれるユーザーを動かすことができて、さらにスケールする可能性の高い獲得チャネルを見つけること」を意味するのだろう。これは、Web2組織にもWeb3組織にも同じことだ。
では「Channel-Model Fit」はどのようなものだろうか?
これは「見つけた顧客獲得チャネルが、いかに持続的なビジネス価値をもたらすか」だろう。
前回の記事でも述べたが、企業は健全なグロース戦略を構築するための第一歩として、「どのようにスケールするか」という問いに答えられるようになる必要がある。
Web3コミュニティやJUMPのようなDAOでも、従来の顧客獲得チャネルや、オーガニック・グロース・ループ(訳者注:対義語はM&Aグロース。つまり内部資源だけ使って事業を成長していくこと)や、強いプロダクトにリードされるような成長フレームワークは、まだ適切だろう。
・・・が、面白いのはそこではなく、チャネルと戦略の全く新しいセットアップの探求こそ、Web3の超絶エキサイティングなところなのだ!
つまり、顧客獲得と流通のループを拡大すると、ビジネス価値を生めば生むほど推進される成長レバーとなるのだ。トークン・インセンティブ、コミュニティ・オーナーシップ、プロダクト・パートナーシップなどが、それにあたる。
「強靭なグロース」を生み出す戦略
戦略の本質的なところは、Web2もWeb3も変わらない。
組織のビジョン、ミッション、アーリーアダプター、コミュニティ、ビジネスモデル、顧客獲得・流通チャネルなどがグロースを形成する。
そして「戦略」とは、具体的な目標、指標、ロードマップのことではない、というところも共通している。これらはあくまでも、戦略を決定するための疑問と仮説に答えるための要素に過ぎない。
運営方法が中央集権型だろうが分散型だろうが、Web3企業のグロース戦略全体においては、以下4つのコンセプトこそ取り組むべきことだ;
信頼を構築する
摩擦を取り除く
価値を享受するまでの時間(TtV)を短くする
強いプロダクトで流通を図る
アウトロ
グロース戦略に関する学習コミュニティ「Reforge」は「良いグロース戦略とは、アクセスへの障壁を取り除き、プロダクトの流通を拡大することで、既存のプロダクトと既存のターゲット市場を最大限に活用すること」と述べている。
Web3時代は、本当にエキサイティングな時代だ。
Web3時代は、創業者や成長チームにとって全く新しい可能性と課題をもたらしている。
きっとこれは、Facebook、Uber、Airbnbのような企業が、テック業界全体のグロースのためのレバーを見出そうとしたかつての時代と同じような感覚なのではないだろうか。
-訳文ここまで-
訳者あとがき
あたたかくて素晴らしいコミュニティは、愛される経営チームとプロダクトの周りに自然発生するのだと思う
Web3時代のビジネスシーンでは「コミュニティ」という言葉が、なんだか掴みどころのない、けれど確かに重要に違いないキーワードとして、誰も無視できないポジションに鎮座しています。
訳者もまた、トークンエコノミーというある種の「コミュニティ」を形成するために、Axie InfinityやSTEP'Nといった先駆者を事細かに分析しながら四苦八苦している者たちの一人です。
日々、バウンティやインセンティブデザインを試作しながら思うのは、理想とするコミュニティの形は見えてもそれを自然発生させることは極めて困難ということです。
そして、私が日々ひしひしと感じている、素晴らしいと感じるコミュニティに共通していると言えるのは、コミュニティの構成員が経営チームとプロダクトを愛しているということです。
2022年3月6日、STEP'Nはサービスのユーザーコミュニティが急拡大する中で、歪な拡大の速さを止めるかの如く、新規ユーザーの参入ペースを「小体制の導入」という形で強制的に制限しました。普通だったら反発する声も多いはずなのに、利用開始できたユーザーも利用開始を制限された人も、総じてその意思決定を歓迎しているように感じます。
それはきっと「よりよいプロダクトに育てていくための意思決定であることを分かっているから」。
すなわち、かつてのClubhouseのように、自然発生した急速拡大のリバウンドとして一気に飽きられてしまうことをコミュニティ全体が望んでいないという、愛の現れだったのだと解釈しています。
私も、そういうコミュニティを作りたいなあ、と。
まだ小さな会社を経営しながら、日々思うわけでした。
了
あとがきのあとがき
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では、本当に終わり。
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