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アポロンの顔をして【短編小説】

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2017年に書いた小説で、恋という信仰の破滅を描いたモノローグ的作品です。恋のフェーズによりすっかり変わってしまう世界を大袈裟に歌ってみました。よろしければご覧ください。全15話…
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2022年2月の記事一覧

アポロンの顔をして 1【連載小説】

アポロンの顔をして 1【連載小説】

2017年に投稿した連載小説『アポロンの顔をして』全15話を再掲・再連載します。恋という“信仰”の破滅を描いたモノローグ的作品です。
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  5つの路線が乗り入れる駅。都会に立ち入る際に、最低でも通過を必要とする駅。或る中心の駅。その駅近に住む人に恋慕の情を抱いたのは最大の失敗であった。車両に乗れば自然と連れて行かれ、ある

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アポロンの顔をして 2【連載小説】

アポロンの顔をして 2【連載小説】

2017年に投稿した連載小説『アポロンの顔をして』全15話を再掲・再連載しています。恋という“信仰”の破滅を描いたモノローグ的作品です。

↓過去話はコチラから↓

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 あの人からメールが届いた。〈今度ライブに行くんだ〉と。あの晩に出てきたスリーピースバンドの話題だった。実はわたしには “いわく” の付いたバンドだった。昔とりわけ仲が良かったわけではない知人に勧められたバンド。棚の中でたった一

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アポロンの顔をして 3【連載小説】

アポロンの顔をして 3【連載小説】

2017年に投稿した連載小説『アポロンの顔をして』全15話を再掲・再連載しています。恋という“信仰”の破滅を描いたモノローグ的作品です。

↓過去話はコチラから↓

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 2017年の現代において、こんな年のわたしが貞淑さを示したところで、誰の得にもならない。それを分かりきっていながらも、わたしは強調しなくてはならない。あの人とは一度きりであった。たった一度きりだったのだ……

 高架がずっと続

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アポロンの顔をして 4【連載小説】

アポロンの顔をして 4【連載小説】

2017年に投稿した連載小説『アポロンの顔をして』全15話を再掲・再連載しています。恋という“信仰”の破滅を描いたモノローグ的作品です。

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 鼻だけでする呼吸は浅い。医学的に実際はそうでもないのかもしれないが、少なくとも効率が悪いのは確かだった。この高鳴る心臓の鼓動に見合う呼吸など、キスをしながらできるはずがない。唇が離れた瞬間、わたしは肺に積もり溜まった不要な空気

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