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RIPPLE〔詩〕

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2023年8月の記事一覧

靴と声 【詩】

靴と声 【詩】

言葉は揃えても
靴は揃えなかった
ひっくり返った片割れ
あさっての方を向いた片割れ
ねじれる ねじれたままにする
その選択が
旅をするかしないかの臨界点になる

「空の高さを知るには
 分度器と赤い風船が必要です」
  とかいう 思い込みの定理

アン・オー 腕を上に
心を楕円に保ったままで
広がった 澄み切った 己の内で踊れ
巨人の創生とか 神体の宇宙とか
遺伝子の綻びより生まれし妄想は
なぜだ

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膨れる 薄まる 【詩】

膨れる 薄まる 【詩】

青空に見限られた心は
まだオレンジの香り
消えないように薫き染めた
A6用紙の世界に栞

行間から洩れ入る光の
かすかな熱で
蒸発させた情念を
多動症として生みなおす

ロッカーはリミッターを外せと歌った
詩人は超感覚の世界を勝手に覗いた

凡庸な病人のわたくしは
比較的調子の良かった数日を
一生にまで延長する

夢を「夢」として見たら終わり

限られていた 何かが 開かれてゆく
かつて 情念だっ

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あがく人へ【詩】

あがく人へ【詩】

夢は溶け
露は煌めき
何かが終わってしまう朝を
飾り立てた
濡れた向日葵

誰かに言葉を贈るたび
空虚を溜め込んだよ
新しい言葉はもう入らない
萎んだのは胸?
それとも夢?

情熱の素粒子が
まだ絶望をくすぐるから

別の歩み方を見つけたんだ

流れ出した
調律を拒む音楽よ
自由という檻の
片隅にある遊び場で
途切れ途切れに歌う
君と世界に隠れて歌う

震え出した
記譜を拒む音楽よ
理想という箱の

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