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RIPPLE〔詩〕

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2023年4月の記事一覧

hole【詩】

hole【詩】

窓辺に身を横たえながら考えた

血は天から戻るのだろうと

なら抜けていった場所は何処だったのか?

地でもない 森でもない

崖にも 中洲にも

それらしき「穴」は見当たらないのだ

かえりみて

目にも口にも心にも

それらしき「穴」はなかったのだ

無尽蔵に注ぐ光が

再三、諦めろと諭してくる

穴を探すのは無駄骨だと

うるせえよ!

窓を閉ざした──

しかしなぜだか
 漲ってくるようだ

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過去詩ふたつ「樹」

過去詩ふたつ「樹」

『木々と君のコラール』より

「過ぎる樹の」

夕闇を照らす ガス灯の
こはく色したゆらめきに
うっとり ひたった帰り道

こころは ふるえてざわめいた
あたまの声は ひっそりとして

目覚めればそこは 白い 朝
夕べのわたし どこいった?
キライだ 太陽は正しすぎる

明るみに出る 気怠いからだ
照らされるのは 道しるべだけ

樹のよこを とおりすぎるたび
まぶたに緑が重なるよ
──絵画が うす

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即興詩みっつ〈あやまち〉

即興詩みっつ〈あやまち〉

(2023/4/2)

耳朶が欲した孤独の代わりに

飴色をした交響曲が

雑多な人を連れてくる

地団駄を堪えた少年

堪えられなくなった老人

緊迫する分水嶺で

行くか戻るかの

オーボエの音階に

蟲惑された私は蛇だ

己の尻尾に噛み付いたら

身を迷宮に変えるだろうか

そして灰を舐めながら

直線の生を閉じるのだろう



(2023/3/23)

こんな夜更けに

夜を吸い込んだ者

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