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フィットネスとパントマイム

先週突然の発熱で久しぶりにダウン。滅多に体調不良にならないし日頃から体調管理を徹底しているのに熱を出すなんて情けない限り。
コロナやインフルエンザが再びはやっているので2回検査をしたがどちらも陰性でただの風邪という診断。しかし熱が下がったと思ったら今度は喉が痛みだし咳も出る始末。そして最終的に声が出なくなってしまった。
声を使う仕事なので、これでは仕事にならない。仕方なく、声が戻るまでお休みをいただくことに。
体は元気なのに動けない、声が出せない。
イライラするし、仕事ができないことの焦りも生じて心も折れそうになる。
フリーランスは仕事できない=収入が止まるなのでこういう休みは生活に直結する。休みが長引けば長引くほど、焦りは増えるばかり。
しかし、焦ってもどうにもならないしこれでは今度はメンタルがやられて体調もますます悪化するだけなので悪循環。
なので、考えを変えることにした。

これはきっと神様が「このまま働き続けたら大怪我するから休みなさい」と警告を出してくれたのだろう。

久しぶりの違和感

ここ数ヶ月、自分の体か?と疑いたくなるほど今まで経験したことない箇所で痛みを感じていた。
たとえば膝。今まで膝の曲げ伸ばしで痛さを感じることなどなかったのに、深く膝を曲げると激しく痛むようになった。軟骨がすり減るにはまだ早くないか!?
そして腰や背中。寝たら治っていたくらいなのに、寝て起きても痛みが取れてないことが続いた。
定期的にメンテナンスでお世話になっている整骨院では毎回体のチェックをしてもらいながら「この状態でよく怪我しないね」と言われる。幸い、バレエをやっていたおかげで関節の可動域がそこそこ広かったり筋肉も人より少し柔らかいのでなんとか怪我を免れているのかもしれない。あとは体格が小さく軽いのでジャンプしても負担がそこまでかからずに済んでいるのかもしれない。しかしそれはあくまでもラッキーなだけで、いつ怪我してもおかしくない状態だからね、と先生に言われた。

大怪我したらそれこそ何ヶ月も仕事から離れなくてはいけなくなってしまう。
そうなる前に神様が強制的に休ませてくれたのかもしれないと思うと、この時間を無駄にしてはいけないと思う。

この療養期間中、色々なことを考えた。
たとえばこのまま声が戻らなかったとして、どうすれば声に頼らないでもしっかりお客様に楽しんでいただけるレッスンを提供できるか。今まで自分は声に頼りすぎていた、今こそそのレッスン姿勢を見直し、新しい自分のレッスンスタイルを創り上げるいいチャンスなのかもしれない。

ヒントはバレエにある

思えば、自分のベースはバレエだ。
そしてバレエといえば、言葉を発さないことが大きな特徴ではないか。

バレエは台詞はないし、物語を進行するナレーターがいるわけでもない。登場人物たちの身振り手振り、いわゆるパントマイムという技法を踊りの振り付けの中に組み込んで物語を進めていく。

たとえば自分の頭上に手の平を垂直に立てるのは「かんむり」を表すため「王」や「王妃」などを指す。
有名なところだと、「白鳥の湖」で主役の白鳥・オデットが自分の胸元に手を当ててから頭上に手のひらを立てることで「私は姫なのです」と王子に自己紹介をするシーンがある。

また両手の拳を握り、両手を自分のおへその前あたりでクロスする仕草は「死」っを意味する。
よく見かけるのは「眠れるの森の美女」で魔女・カラボスがオーロラ姫の生誕祝いに呼ばれなかったことに腹を立てて「この姫は16歳になったら毒によって死ぬだろう」と呪いをかける時に、赤ん坊のオーロラ姫を指してからこのポーズをすることでセリフを担っている。

セリフなしでバレエの3時間ほどもある物語をしっかり観客に伝えられるのだから、言葉を発しなくても伝える術は工夫すれば必ず見つかるはずだ。
フィットネスのクラスはせいぜいが長くて1時間。しかも物語なんて複雑なものを伝えるわけではなく、動きを音楽に合わせてお客さんがスムーズに理解して動けるように誘導していくだけなのだから、バレエダンサーたちがやっているパントマイムの苦労と比べたら少しは簡単なはずだ。

レッスンをどう動きで伝えるか

バレエのパントマイムと大きく異なる点で個人的に一番困るなぁと感じるのがバレエのパントマイムは見る側がパントマイムの意味をある程度理解できるようないわば共通認識があるのに対してレッスンで使う身振り手振りお客様の理解度がゼロから始まるという点だ。
バレエのパントマイムは上記でも述べたように動きが広く認識されているためバレエを数回見た経験のある観客であればある程度パントマイムを理解することができる。「あ、頭の上に手を立てているから王様を表しているんだな」とか「手をクロスにしているから死を意味している」というとこが分かればその登場人物が意図している内容がある程度は分かるというもの。

しかしフィットネスのレッスンでは決まった身振り手振りはなく、それぞれのインストラクターが各自のレッスンでお客様にとって分かりやすいだろうと思われる身振り手振りをオリジナルで作り上げている。もちろん共通する動きもあると思う。たとえば「あと2回繰り返す」ということを伝えたければ指を2本立ててお客さんに見せるのが一般的な方法だろう。あと何回この動きを繰り返すのか、というのは比較的言葉を発さなくても伝えやすいものだ。
特に難しいのは次の動きを説明する時と、その動きの効果を伝える時だ。次の動きはまだ音楽を聞きながら逆算し、お客様が「せーの」で入りやすいタイミングで見せられればお客様に伝えることができるだろうが、動きの効果が厄介だ。
「膝をまっすぐにして」というのをどう身振りで伝えるか。
「腰を落とし、腹筋に力を入れて」はどうやって見せたらお客様が一発で理解されるか。
こればかりは言葉を使っての伝え方でさえインストラクターによって十人十色なのだから、それが言葉を発さないともなれば伝え方は千差万別だ。伝え方がたくさんあるということは、それだけ受け取り方も沢山あるということ。自分の伝え方が全てのお客様にちゃんと伝わるという可能性は極めて低いとも言える。
全てのお客様に100%伝えるのは難しいとしても、せめて70%以上のお客様には伝わるような伝え方を見つけなければいけない、と強く思う。

道が見えれば、いつかは

声がまだ全く戻らない中、この療養期間としていただいた1週間はとにかく声を使わないで伝えるレッスンを模索する毎日だった。
「これだ!」と思える身振り手振りのキューイング(動きの伝え方)はまだ見つかった自信はないが、これからも模索し続けて極めていきたいという考えが強まったのはこの療養期間のおかげだ。

実際フィットネスの世界でも、ZUMBAというダンス系のプログラムでは実際に声によるキューイングは禁止というルールの中でインストラクターがレッスンをしている。ZUMBAのインストラクターは言葉を発さずに多くの参加者の方々をしっかりと動きを導いているのだから、脱帽ものだ。
私はZUMBAはそこまで詳しくはないので確かではないが、もしかしたらZUMBAはそもそも口頭のキューイングをしないという前提で作られたプログラムなので、それこそバレエにおけるパントマイムのように全てのインストラクターの中で共通の動きのキューイングがあるのかもしれない。ある程度そのように共通認識をルール化することで、お客様が混乱せずにレッスンに参加できるようになっている可能性はある。
しかしそのような共通ルールがそもそもないプログラムはインストラクターのオリジナルになるので、いかにお客様がわかりやすく動けるような身振り手振りのキューイングができるかはまさにインストラクターの腕の見せどころなのかもしれない。

ZUMBA以外でのプログラムでも言葉を発さないキューイングでお客様を満足させられる分かりやすいレッスンを展開することができれば、いずれは耳が聞こえないお客様や言葉を聞き取って理解するのに困難を抱えているお客様も安心してスタジオプログラムに参加できるようになるのではないかと思う。
もしかしたら些細なことかもしれないが、でもこれが少しでもスタジオプログラムに参加される人の人口増加に繋がってくれたら・・・とフィットネス世界の未来がちょっと楽しみになってくる自分がいた。

さぁ、これを書き上げたらまた模索する時間にしようか。

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