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マスク総説

私は勤める会社でコロナ対策担当をしています。

コロナ禍当初、社内でのマスク着用ガイドラインを決めるにあたり色々と調べたのですが、不明点(『これ、エアロゾル対策に効果無いんじゃね?』)は解消出来ませんでした。

それ以来、『効果の高いマスクはどのようなものか?』『そもそも、なぜ効果があるとされているのか?』『デメリットは?』等を調べてきました。

そして、ようやく最近になって一定の理解に達したと判断しますので、今回の記事でまとめようと思います。ほぼこれまでの記事のリンク集です。

なお、論拠は論文が多いですが、私見を含みます。


◆概説

不織布マスクは漏れが大きいが飛沫排出を抑制する効果は高い。
飛沫排出を減らすことは結果的にエアロゾル生成量を減らすことになる。

マスクで自らを保護したい場合N95を推奨する。

不織布マスク着用による健康被害は通常利用において大きく懸念されるほどのものは無い。ただしN95の場合は注意が必要である。


1.マスクについて

マスクの一般的なメカニズムについては以下の記事を参照のこと。


2.マスクの定義

本記事中で言及するマスクの定義は以下とする。
(布やウレタンマスク等は対象外)

不織布マスク:PFE99%程度の一般的な不織布マスク
(KF94,KN95,FFP2も含む)

N95マスク:N95またはDS2マスク
(強い着圧およびノーズパッド(鼻脇を塞ぐスポンジ)が付与されたKF94,KN95,FFP2を含む)


3.不織布マスクの効果

・不織布マスクの目的は他者を守る事にある。
(自らの感染を想定しマスクを着ける。)

・中学校の教室内での実験で、空間中のエアロゾルを70%程度減らしたことが確認されている。[3-1]

・コロナ過において多数の疾患の報告数を減少させた実績には、マスク着用も寄与していると考える。[3-2]

・高い漏れ率にも関わらず効果を示す理由は、吐き出し直後の飛沫径が大きい為である。(飛沫は吐き出された後、一瞬で水分が蒸発し飛沫核(エアロゾル)化する。)

飛沫吐き出し後、瞬時(飛沫がエアロゾル化する前)にマスクに衝突・付着させることでエアロゾル生成量を減らしていると推測する。ノーマスクの場合、高さ160cmから生じた粒径80μm以下の飛沫は落下までにエアロゾル化する。[3-3]

・前方へ排出するエアロゾルの割合を減らす。短時間での会話の際にリスク軽減が見込めるものと考える。

◇◇◇

[3-1]

[3-2]

[3-3]


4.不織布マスクによる保護

・不織布マスクによる自らの保護はあまり期待出来ない。

フィルター性能は問題無いが、漏れ率が概ね80%を超えていると推測され、濾過機能がたいして働いていない。[4-1]

・不織布マスクの高い漏れ率は、イヤーループ(耳掛け)であることと、ノーズパッドがついていないことが大きな原因である。[4-2]

◇◇◇

[4-1]

[4-2]


5.N95マスクについて

・N95マスクは適切に着用した場合、自らを保護する。

感染リスクの高い医療従事者でサンプル数が少ないながらも効果が認められており、一般利用において高い効果が見込めるものだと考える。[5-1]

・N95マスクの選定で重要なのは漏れ率と吸気抵抗である。
適切なものを選べば日常利用は可能と考える。[5-2]

◇◇◇

[5-1]

[5-2]


6.マスク着用のデメリット

・不織布マスク着用による健康被害等のデメリットは高いレベルのエビデンスが示されていない。ただしそれは『ノーマスクと同様の行動・運動で健康被害を生じない』ということを意味しない。今後の研究に期待したい。

・食品加工業、製造業等により長年使用されてきた実績を考慮し、そのような運用を前提に有意な健康被害を生じさせないという推測は可能と考える。

・N95マスクの場合、有意な健康被害(頭痛、集中力の低下等)が確認されている。吸気抵抗の低いものを使用したうえで、運用に注意が必要である。

◇◇◇


7.課題

・日本国内において、マスク着用の効果、疑問、不安への説明が十分に行われておらず、説得力を持たない。

・マスクの運用は、想定する疾患のリスクと流行状況、環境リスク、デメリット等を勘案して行うものであるが、柔軟に行われていない。

・新製品の不織布マスクは着用者のリスク低減(漏れ率の低減)を目指したものがほとんどなく、高い漏れ率についても周知されていない。


8.注意点

・リンク記事中による引用情報は重複している場合がある。

・リンク記事は1年以上前に書いたものを含むため、最新の認識とのズレ(矛盾)が生じている可能性がある。


◆おわりに

記事の内容について誤りの指摘や批評を歓迎します。
ただし、引用記事や論文(少なくともAbstract)には目を通したうえで、同等以上の論拠でお願いします。

◇◇◇

以上、『コロナ禍当初にこのような記事があったら助かったのに!』という内容をまとめました。

この記事が誰かの役に立つことを願います。

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