プロの嘘つき屋さん
彼の職業はプロの嘘つき屋だ。
この人を騙して欲しいという依頼を請け負っている。
例えば、ライバル会社の社長を騙して売り上げを落とさせたり、恨みがある相手を騙して不幸のどん底に貶めたり、はたまた好きな女性を騙して自分のことを好きにさせろとかそんな依頼もある。
だが、彼はどんな仕事も難なくやり遂げてきた。
彼の手にかかればどんな人も騙されてしまうのだ。
ある日こんな依頼が来た。
扉を開けて、訪ねてきたのはまだ小学生くらいの小さな男の子だった。
「ある人を騙して欲しいんです」
そう言った男の子はひどく悲しそうな目をしていた。
詳しい話を聞いてみるとこういうことらしい。
その男の子には3つ離れた病弱の姉がいて、その姉が医者にあと1年しか生きれないと、余命宣告をされた。
それを聞いた姉はひどく落ち込んでしまい、ご飯もまともに喉を通らないほどひどく衰弱してしまっている。
だから、姉に君はあと一年で死んだりしないという嘘をついて欲しい。
そういうことだった。
「いつもの元気で優しかったお姉ちゃんに戻って欲しい」
男の子はそれをいうと同時に目からポロポロと涙を流し始めた。
「僕はプロの嘘つき屋だからね。必ずどんな人も騙してみせるよ」
彼は男の子の頭を撫でながら、そう言うと、さっそく仕事の準備に取り掛かった。
ー三年後ー
今でも元気よく兄弟仲良く暮らしているそうだ。
実は人間、気持ち次第で案外どうにでもなれるのかもしれない。
彼はそんなことを思いながら、今日も嘘をつき続けるのだ。
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