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fizzy concrete

大学での講義を終え早めの昼食をとる。なにか明日のディスカッションに使える目新しいテーマはないものかと、お気に入りのフィッシュアンドチップスをつまみながらTVの電源をつける。

「しゅわしゅわコンクリートを全国設置いたします」

ニッポンの環境大臣とやらがおおまじめにそう言った。また馬鹿げた政策か?次から次へ国民も災難なものだな、と面白半分で聞いていると、どうやら地球温暖化対策として、道路を色とりどりの泡立つ地面にしていくつもりらしい。気温が高くなると地面はシュワシュワと溶け出し液体になる。液体化は地面からの反射熱を防ぎ気温の上昇を防ぐ。なるほど、よく考えられているじゃないか。
さらに先に試験導入されたハラジュクやオモテサンドウでは「映える」と話題で、環境問題だけでなく観光地の盛り上げにも一役買っているという。チャイルディッシュなKawaii文化はつねづね嫌気がさしていたものだが、この施策に関しては期待できそうだ。

(1ヶ月後)

ニッポンから移住者が爆増、原因は地球温暖化対策にあり。講義前のコンビニで衝撃的なタイトルが目に入る。一体なにがダメだったんだ。完璧に思えたあの政策が!大急ぎでニュースペーパーをレジに運ぶ。
「ニッポンジンのカナヅチ人口は10人に1人。泡立つ地面は一度溶けると戻らない。平均気温は下がったものの水路と化した地面へのインフラ整備が追いつかず、ニッポンは泳げるもののみが暮らしていける水の都となった。」



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