漫画『のらくら組』、漫画『ミスターX』、アンナ・カリーナの歌、映画『道化ピエロ』

  漫画『のらくら組』

 フランスでは、1908年(明治41年)4月9日号で毎週木曜発売のフランス語の漫画誌『大満足(L'Épatant)』(Publications Offenstadt)が創刊された。同誌は1939年(昭和14年)8月24日号まで発行された。
 同誌の第9号(1908年6月4日号)から、ルイ・フルトン(Louis Forton、 1879年3月14日~1934年2月15日)が考案した三人の小悪党、鼻の尖ったクロキニョル(Croquignol)、片目に眼帯を掛けたフィロシャール(Filochard)、あごひげのリブルダング(Ribouldingue)の悪漢物語の漫画『のらくら組』Les Pieds nickelésが連載され、フルトンの死後は別の漫画家が描き継いだ。
 フランス語の「ピエ・ニクレ(pieds nickelés)」は19世紀末の俗語で「勤労意欲が長続きしない連中」の意味だ。
 1917年(大正6年)6月2日、フルトン画の漫画『のらくら組』に基づく、エクレール社 (Éclair)制作、エミル・コル(Émile Cohl、1857年1月4日~ 1938年1月20日)監督の漫画映画『のらくら組の冒険』Les aventures des pieds nickelésの第1話(125m)が公開された。
 続いて、同年7月1日に第2話(120m)、同年11月26日に第3話、1918年(大正7年)1月19日に第4話、同年3月16日に第5話(125m)が公開された。
 第1話と第5話の結末は現存しない。
 「のらくら組」は私立探偵ズィグイヨ(Zigouillot)に追われる。台詞は紙印刷の漫画同様、画面内の吹き出しの中に文字で記されている。漫画映画ならではの物理法則や人間の身体構造に反した超現実的な物の形の瞬時の変化や移動が描かれる。

 1948年(昭和23年)6月23日には、マルセル・アブルケル(Marcel Aboulker、1905年1月1日~1952年9月7日)監督の長篇映画『のらくら組の冒険』 Les Aventures des Pieds-Nickelés(95分)が公開された。
 クロキニョル役はレリス(Rellys、1905年12月12日~1991年7月20日)、フロシャール役はロベール・デリ(Robert Dhéry、1921年4月27日~2004年12月3日)、リブルダング役はモリス・バケ(Maurice Baquet、1911年5月26日~2005年7月8日)、私立探偵シェルロック・ココ(Sherlock Coco)役はフレッドゥ・パスクワーリ(1898年10月31日~1991年6月12日)が演じた。
 1950年(昭和25年)3月8日には続篇のアブルケル監督『のらくら組の宝物』Le Trésor des Pieds-Nickelés(96分)が公開された。

 1964年(昭和39年)9月30日、ジャン・クロードゥ・シャンボン(Jean-Claude Chambon)監督『のらくら組』Les pieds nickelés(81分)が公開された。
 フィロシャール役はシャルル・デネール(Charles Denner、1926年5月29日~1995年9月10日)、リブルダング役はミシェル・ギャラブリュ(Michel Galabru、1922年10月27日~2016年1月4日)、クロキニョル役はジャン・ロシュフォール(Jean Rochefort、1930年4月29日~2017年10月9日)、ルヌワール警視(Le commissaire Lenoir)役はフランスィス・ブランシュ(Francis Blanche、1921年7月20日~1974年7月6日)が演じた。

  漫画『ミスターX』

  イターリアの出版社チェルヴィーニア出版(Edizioni Cervinia)は1964年(昭和39年)10月から1968年(昭和43年)2月まで月刊の犯罪漫画(fumetti)『ミスターX』Mister-Xをポケット判128頁のモノクロ印刷で53冊刊行した。
 「X」は方程式の未知数を表す記号だが、「ミスターX」は謎の男性を意味する。主人公「ミスターX」は、弱者を助けるために盗みをおこなう赤(後に青)タイツの覆面の紳士泥棒が主人公だ。彼は盗みのたびに、犯行の主を示すため、現場に名刺を遺す。
 アンドゥレ・ル(André Roux)という若い刑事がラレード巡査部長(sergente Laredo)と共にミスターXを逮捕しようとする。ミスターXにはアジア人の女友だちティミ・ラン(Timy Lang)がいる。
 「ミスターX」の考案者はチェーザレ・メロンチェッリ(Cesare Melloncelli、1941年9月19日~)で最初の4話の脚本を執筆した。その後、アルフレード・サーイオ(Alfredo Saio、1939年8月14日~)とアンドゥレイナ・レペット(Andreina Repetto、1928年4月29日~)の夫妻が脚本を書いた。
 絵は主にジャンカルロ・テネンティ(Giancarlo Tenenti、1934年8月22日~)が描き、表紙絵はテネンティピオヴァーノ(Piovano)が描いた。 
 1964年(昭和39年)10月発行の第1巻は「死神との会合」Appuntamento con la morteだった。

「ミスターX」イタリア版・第1巻

 『ミスターX』のフランス語版は、ヴァンティヤール(Ventillard)から1965年(昭和40年)5月発行の第1巻「死神との会合」Rendez-vous avec la mort以後、同年10月発行の第6巻「死神の宗派」 La Secte de la mort まで6冊が刊行された。 

 漫画『ミスターX』に基づくイターリアとエスパニアの合作映画『ミスターX』Mister X(90分)は1967年(昭和42年)5月13日にイターリアで公開されたが、イターリア公開版は検閲に引っかからないよう暴力場面を削除した短縮版だった。ピエーロ・ヴィヴァレーッリ(Piero Vivarelli、1927年2月26日~ 2010年9月7日)がマリー・ドナルドゥ(Murray Donald)の変名で監督した。
    ミスターXは、ノーマン・クラーク(Norman Clark)名義でピエル・パオロ・カッポーニ(Pier Paolo Capponi、1938年2月15日~2018年2月15日)が演じ、ティミガイヤ・ジェルマーニ(Gaia Germani、1942年8月30日~)が演じた。
    音楽はマヌエル・パラダ(Manuel Parada、1902年5月19日~1980年12月26日)だ。

  映画『女は女』と「アンジェラの歌」

ここから先は

23,963字 / 16画像

¥ 1,200

期間限定 PayPay支払いすると抽選でお得に!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?