第十六話「楽しめない旅」長編小説「15th-逆さまの悪魔-」
夜中、両親が二人とも眠りにつくのを琴音は密かに待っていた。ずっと寝たふりをしていた。父と母の寝息が寝入った後のものと思しき穏やかな音になるのを確認して、そっとベッドから抜け出た。
忍び足でバスルームへ入った。光で両親が起きてしまわないよう、電気をつけたらすぐドアを閉めた。
バーベキューでお腹いっぱい食べてしまった分を、どうにかしなくてはならない。消化する前に吐き戻す必要がある。
琴音は少しためらったが、右手を口の中につっこんだ。自分の手は温かくて苦い。思い切って