マガジンのカバー画像

15th-逆さまの悪魔-

24
非常に苦しい中学時代を終え、高校に入学した琴音は新しい生活を楽しもうとしたが、思うようにいかない日々の中で食べる意欲を失ってしまい、摂食障害に陥る。 —これは自分を奪われた少女た…
運営しているクリエイター

記事一覧

第二十四話「麻理恵の近況」長編小説「15th-逆さまの悪魔-」

 琴音は少しだけよそゆきの格好をして、母に連れられ、麻理恵と麻理恵の両親が住んでいる、藤…

文野麗
3週間前
3

第二十三話「学校でも問題になる」長編小説「15th-逆さまの悪魔-」

 どうしてこのつらいときに限ってネムは私の傍にいてくれないのだろう。琴音は夜中にベッドの…

文野麗
4週間前
2

第二十二話「麻理恵事件その後(中学校の思い出)」長編小説「15th-逆さまの悪魔-」

 中学二年のとき、麻理恵の家出騒ぎと破局、人工中絶手術に琴音は多大なるショックを受けた。…

文野麗
4週間前
2

第二十一話「周囲からの孤立」長編小説「15th-逆さまの悪魔-」

 歌羽は不機嫌そうに、唇をすぼめて琴音と目を合わせずにくぐもった声で言った。 「でも琴音…

文野麗
1か月前
2

第二十話「過去の顛末」長編小説「15th-逆さまの悪魔-」

 過呼吸の発作は治まったが、摂食障害のせいで危ない状態に陥ったのは間違いないので、琴音は…

文野麗
1か月前
1

第十九話「発作再び」長編小説「15th-逆さまの悪魔-」

 夏休みは終わり、学校に行く日々が戻ってきた。あっという間に一ヶ月が過ぎ、十月の文化祭が…

文野麗
1か月前
5

第十八話「舞台に私の席はない(中学校の思い出)」長編小説「15th-逆さまの悪魔-」

 中学時代、琴音は顧問を激怒させたあのとき以来、部活で一度も本番の舞台に出してもらえなかった。身体が回復して十分に演奏できるようになっても一向に認められなかった。表向きは、琴音が本番中に過呼吸の発作を起こすことを危惧して、ということになっていたが、実際には顧問から琴音への懲罰であることを、琴音本人だけでなく部内の誰もが知っていた。  夏から秋にかけて数回あるコンクールのときは、出番の少し前に部員たちが舞台裏に入ると、琴音は一校分ガラリと空いた座席に一人だけ残され、やがて光を

第十七話「理解されない気持ち」長編小説「15th-逆さまの悪魔-」

 旅行から帰ってきて一週間ほど経つと精神科の定期通院の日がやってきた。琴音はこの頃険悪な…

文野麗
1か月前
1

第十六話「楽しめない旅」長編小説「15th-逆さまの悪魔-」

 夜中、両親が二人とも眠りにつくのを琴音は密かに待っていた。ずっと寝たふりをしていた。父…

文野麗
1か月前
2

第十五話「会話は波にさらわれるように」長編小説「15th-逆さまの悪魔-」

 琴音の学校は夏休みに入った。歌羽とはときどきメッセージのやりとりをしていたが、他のクラ…

文野麗
1か月前
1

第十四話「ネムと遊ぶ」長編小説「15th-逆さまの悪魔-」

 約束の十分前に着くように電車に乗ったが、目的地に近づいたところで ――今着いたよ―― …

文野麗
1か月前
2

第十三話「心は上昇、身体は下降」長編小説「15th-逆さまの悪魔-」

 以来歌羽は本当に態度を改めた。以前のような意地悪を言わなくなった。琴音はかなり安堵した…

文野麗
1か月前
1

第十二話「受験妨害(中学校の思い出)」長編小説「15th-逆さまの悪魔-」

 琴音が中学生だった頃、受験期のことである。公立高校の前期入試で琴音は第一志望の学校に落…

文野麗
1か月前
1

第十一話「顧問を激怒させたこと(中学校の思い出)」長編小説「15th-逆さまの悪魔-」

 琴音は中学時代、吹奏楽部に入っていた。担当楽器はトランペットだった。同じパートで同学年の生徒はただ一人、豊子という女子だった。豊子は部活顧問の一番のお気に入りで、いつも特別扱いされていた。部活の顧問以外にも、あらゆる先生や先輩に常に可愛がられてお気に入りにされる、そんな生徒だった。琴音は顧問からも先輩からも豊子との扱いに当たり前のように差をつけられていた。後輩たちも全面的に豊子の味方で、琴音のことを馬鹿にしており、彼らには嫌がらせを繰り返された。豊子本人からは苛烈ないじめを