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#430 「宮城交通事件」東京地裁

2017年2月8日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第430号で取り上げた労働判例を紹介します。

■ 【宮城交通(以下、M社)事件・東京地裁判決】(2015年9月8日)

▽ <主な争点>
欠勤、有給休暇取得による賃金控除規定の効力など

1.事件の概要は?

本件は、M社においてタクシー運転手として稼働しているAらが賃金控除に関する規定が公序良俗に反し、違法無効であると主張して、同社に対し、それぞれ控除された賃金等の支払を求めたもの。

2.前提事実および事件の経過は?

<M社、AおよびBについて>

★ M社は、一般乗用旅客自動車運送事業(タクシー業等)を目的とする会社である。

★ Aは平成21年9月、Bは23年1月にそれぞれM社に正社員として入社し、タクシー運転手として稼働している者である。

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<AらとM社との間の労働契約、乗務員賃金規則等について>

★ AらとM社との間の労働契約の主な内容は以下のとおりである。

ア 基本給
乗務員賃金規則では、基本給について次のとおり定められている。なお、「月間所定運収」とは、タクシー運転手一人当たりの月間売上高の合計額をいう。
(1)月間所定運収が42万円以上の者には月額13万5000円を支給する。
(2)月間所定運収が29万2000円以上の者には月額4万0800円を支給する。
(3)月間所定運収が29万2000円未満の者には基本給を支給しない。

イ 歩合給
乗務員賃金規則では、基本給のほかに歩合給を支給することとされ、次のとおり定められている。
(1)月間所定運収が42万円以上の場合
   (月間所定運収-月間基礎控除額42万円)×61%=歩合給
(2)月間所定運収が29万2000円以上42万円未満の場合
   (月間所定運収-月間基礎控除額29万2000円)×61%=歩合給
(3)

ウ 最低保障給
乗務員賃金規則では、最低保障給として「過去3ヵ月の支給合計÷過去3ヵ月の総労働時間数×60%×当月労働時間単価」を支給する旨定められている。

エ 有給手当
乗務員賃金規則では、年次有給休暇(年休)に対する手当(以下「有給手当」という)として「健保日額×取得日数」を支給する旨定められている。

オ 賃金控除
乗務員賃金規則では、欠勤し、または年休を取得した場合、賃金が以下のとおり控除される旨の規定がある(以下、この規定を「本件賃金控除規定」といい、欠勤による賃金控除を「欠勤控除」、年休取得による賃金控除を「有給控除」という)。
  控除額=基本給÷月間所定勤務日数×(欠勤日数+年休取得日数)

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<Aらが受けた賃金控除について>

★ Aらは次のとおり、賃金控除を受けた。

ア 運転手A
  [24年8月] 2万2500円(有給控除)
  [24年9月]   3400円(欠勤控除)
  [25年2月]   8500円(有給控除6,800円、欠勤控除1,700円)
  [25年3月] 1万1250円(有給控除)
  [25年11月] 1万1250円(有給控除)
    合 計   5万6900円

イ 運転手B
  [24年1月] 2万2500円(有給控除)
  [25年1月] 1万1250円(有給控除)
  [25年3月] 2万2500円(欠勤控除)
  [25年7月] 1万6875円(有給控除11,250円、欠勤控除5,625円)
    合 計   7万3125円

3.タクシー運転手Aらの主な言い分は?

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