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#306 「Xファイナンス事件」東京地裁(再掲)

2012年3月7日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第306号で取り上げた労働判例を紹介します。

■ 【Xファイナンス(以下、X社)事件・東京地裁判決】(2011年1月18日)

▽ <主な争点>
セクシュアルハラスメントを理由とする譴責処分等

1.事件の概要は?

本件は、X社の従業員であるYが、同社がYに対してした、セクシュアルハラスメントを理由とする譴責処分は無効であるとして同処分の無効を求めるとともに、X社に対し、社内メールによる謝罪広告および慰謝料等の支払いを求めたもの。

2.前提事実および事件の経過は?

<X社およびYについて>

★ X社は、電気機械器具等の割賦販売、信用保証、割賦購入斡旋および賃貸借等を業とする会社である。同社の100パーセント子会社であるZ社は、東京都世田谷区に事業所を有し、同事業所においてX社が取り扱うリース資産の管理を行っている。

★ Yは、昭和56年6月にX社に入社し、平成20年2月、世田谷事業所内のリース資産グループに異動となり、以後現在に至るまで、同グループの主任として勤務している者である。

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<本件譴責処分に至った経緯等について>

▼ 20年7月、Yは向かい側の席に配置されていた女性社員Aが、Yが担当する業務についてミスを犯したことから、周囲にも聞こえるような大声を出し、強い口調で注意をしたところ、Aは耐えられずに泣き出し、トイレに逃げ込んだ後、その日はそのまま半休を取得して早退した。

▼ 同月、Aが隣席の女性従業員と、妊娠中のAの体調などについて雑談をしていたところ、Yはその会話に割り込み、Aに対し「腹ぼて」、「胸が大きくなった」などという発言(以下「本件発言」という)をした。Aは本件発言により性的な不快感を覚えたが、言い返すこともできず、その場は笑ってやり過ごした。

▼ 21年3月、AからX社の人事担当部署に対し、上記出来事を記載したファクシミリが送信された。

▼ Yは同月、X社から、同年4月より同社の首都圏支社に異動させるという人事異動(以下「本件異動」という)の内示を受けたが、その後、X社から本件異動の内示は取り消すことになった旨の連絡を受けた。

▼ Yは同年4月、人事教育部長のBから、本件異動に関しYがX社の首都圏支社長に相談した事実の有無およびその内容、Yが20年7月頃、同僚の女性職員に対してセクシュアルハラスメントに該当するような発言をした事実の有無等について、事情聴取を受けた。

▼ 上記事情聴取において、B部長はYが同僚の女性職員に対し、本件発言をしたかどうかを尋ねたところ、Yは「記憶にありません」と答えた。なお、当該女性職員が誰であるのかは明らかにされなかった。

▼ Yは上記事情聴取をされたことに納得がいかなかったことから、B部長に面談を申し入れ、同月、X社の本社において、同部長らと面談した。Yは本件発言をめぐる処理がどのようになるのかを質問したところ、本件に関する調査報告書を同社の人事委員会に提出し、同委員会がXに対する処分を決定するとの回答であった。

▼ 同年6月、Yは人事担当役員のCらと面談し、譴責処分(以下「本件譴責処分」という)となったことを告げられた。同月、Yに対し、本件譴責処分の処分理由が記載された書面が交付されたが、同書面には処分理由として「昨年夏、Z社事務所内において同僚女性職員に対し発言された内容は、セクシュアルハラスメントに該当するものであり、看過することはできない。当社の就業規則、行動基準に違反する行為であり、懲戒事項に該当すると言わざるを得ない。よって、就業規則第4条、第99条13号、第100条14号により、譴責に処する。今後はこの反省の上に立ち、一層業務に精励されるよう期待する。」と記載されていた。

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<X社の就業規則について>

★ X社の就業規則には、以下の各規定がある。

(一般的義務)
第4条
 社員は上長の指示命令に従い、法律ならびに会社の諸規則を守り、職場秩序を維持するとともに、互いに協力して業務能率の向上に務め、その職責を遂行しなければならない。

(減給または譴責)
第99条
 次の各号の一に該当するときは、減給に処する。ただし、情状により譴責にとどめることがある。
(中略)
13 就業規則およびこれに基づく諸規程に違反したとき。

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