#537 「D社事件」東京地裁(再掲)
2021年5月12日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第537号で取り上げた労働判例を紹介します。
■ 【D社事件・東京地裁判決】(2020年3月23日)
▽ <主な争点>
妊娠中の退職が実質的には会社による解雇に当たるかなど
1.事件の概要は?
本件は、Xが平成29年4月からD社において業務に従事していたところ、妊娠中の30年4月末日をもって退職したことについて、(1)D社は時短勤務を希望していたXに対し、月220時間の勤務時間を守ることができないのであれば正社員としての雇用を継続することができない旨を伝え、退職を決断せざるを得なくさせたのであり、実質的に解雇したものということができ、当該解雇は雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(男女雇用機会均等法)第9条第4項により無効かつ違法であるなどと主張して、同社に対し、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認や、解雇の後に生ずるバックペイとしての月額給与および遅延損害金の支払を求めるとともに、不法行為に基づく損害賠償請求として、慰謝料および弁護士費用相当額の損害金の合計110万円ならびに遅延損害金の支払を求めるほか、(2)D社は労働基準法所定の割増賃金を支払っていないなどと主張して、同社に対し、労働基準法にしたがった29年4月から30年3月までの割増賃金合計157万2444円および遅延損害金や、当該割増賃金に係る労働基準法第114条所定の付加金および遅延損害金の各支払を求めたもの。
2.前提事実および事件の経過は?
<D社およびX等について>
★ D社は、飲食店の運営等を目的とする会社である。同社はクライアントであるA社の従業員用のカフェ兼レストランB店や同店から徒歩5分程度の場所にあるC店等を運営している。なお、D社は労働基準法第36条に基づく労使協定(三六協定)を締結していない。
★ Xは、平成29年4月、D社との間で試用期間を3ヵ月とする期間の定めのない労働契約を締結し、B店において主にホールスタッフとして就労した者である。
★ Eは、D社の従業員であり、B店の店長を務める者である。Fは、D社の親会社の外食事業部長を務めるとともに、D社の執行役員を務める者である。
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<Xの退職に至った経緯等について>
★ Xは当初遅番を担当することが多く、午前11時前後に出勤し、午後11時頃に退勤することが多かったが、自身の希望により、29年8月下旬から朝番の担当となり、朝のカフェ営業とランチ営業の責任者として開店業務を担当するようになった。
▼ Xは30年3月に妊娠2ヵ月であることが判明したところ、D社はXに対し、今後の勤務シフトについて、勤務場所を作業負担がより軽いC店に変更し、勤務時間を午後0時から7時30分まで(うち休憩時間を1時間とし、Xの体調次第では連絡すれば人員が足りている午後3時までは出勤しなくてよい)とすることを提案した(以下「本件提案」という)。
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