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#592 「ダイワクリエイト事件」東京地裁

2023年7月19日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第592号で取り上げた労働判例を紹介します。


■ 【ダイワクリエイト(以下、D社)事件・東京地裁判決】(2022年3月23日)

▽ <主な争点>
無断欠勤等を理由とした解雇など

1.事件の概要は?

本件は、D社との間で雇用契約を締結して労務を提供していたXが同社に対し、次の各請求をするもの。

[主位的請求]
Xが、D社は2020年6月25日付でXを解雇し(以下「6月解雇」という)、以後のXによる労務提供の受領を拒絶したため、Xは同月26日以降に同社に対して労務を提供することができなかったのであるから、XはD社に対する同日以降の賃金支払請求権を失わない(民法536条2項)上、同日以降の無断欠勤等を理由として同社がXに対して同年7月22日付でした解雇は無効であるなどと主張して、D社に対してする次の各請求

1.雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認
2.雇用契約に基づく次の各金員の支払請求
(1)2020年7月分の未払賃金29万0904円、同年8月分の未払賃金40万円および同年5月分から7月分までの未払交通費5万円ならびにこれらに対する遅延損害金
(2)2020年9月から本判決確定の日まで、毎月末日かぎり賃金月額40万円およびこれらに対する遅延損害金
3.不正行為に基づく損害賠償50万円(慰謝料)およびこれに対する遅延損害金の支払請求

[上記2の請求(未払交通費に係る請求を除く)についての予備的請求]
Xが、仮にXのD社に対する2020年6月26日以降の賃金支払請求が認められないとしても、同社のした6月解雇は違法なものであって不法行為に当たり、これによってXが雇用機会を失う等の損害を被ったと主張して、D社に対してする、不法行為に基づく損害賠償120万円(賃金月額40万円の3ヵ月分に相当する額)およびこれに対する遅延損害金の支払請求

2.前提事実および事件の経過は?

<D社およびXについて>

★ D社は、ファクトリー・オートメーションシステムの企画、製造、販売、設置工事および保守管理ならびにコンピュータおよび端末装置の販売、設置工事および保守管理等を目的とする会社である。

★ Xは、2020年3月、D社との間で期間の定めのない雇用契約(試用期間:2020年3月2日から4月30日まで。基本給月額:30万円)を締結し、正社員として勤務している者である。なお、試用期間経過後の基本給月額については争いがある。


<6月解雇、本件解雇に至った経緯等について>

▼ 同年6月25日、XとAの間で口論を伴うトラブル(以下「本件トラブル」という)が生じ、「目障りなので帰ってください」、「この会社でしてもらう仕事はない」、「お前とは仕事ができないからやめろ」等のAの発言を受け、Xは当日退社し、翌26日以降、D社からの出勤要請にもかかわらず出勤しなくなった。

▼ Xは7月17日、D社に対し、代理人弁護士Bを通じ、同社がXを6月25日に解雇したところ(6月解雇)、当該解雇は無効であることなどを記載した書面を送付し、当該書面は同日D社に到達した。

▼ D社は7月22日付の「2020年7月17日付通知書に対する返答」と題する書面をB弁護士に対して送付し、同書面はその頃到達した。同社は上記書面により、Xに対し、6月26日以降正当な理由なく欠勤していることを理由として、同年8月28日をもってXを解雇する旨の意思表示をした(以下「本件解雇」という)。

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