#622 「国・京都上労基署長事件」京都地裁
2024年10月2日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第622号で取り上げた労働判例を紹介します。
■ 【国・京都上労基署長(以下、K労基署長)事件・京都地裁判決】(2023年11月14日)
▽ <主な争点>
うつ病発症が業務上の事由ではないとして、療養補償給付および休業補償給付をいずれも支給しないとした処分の取消など
1.事件の概要は?
XはA社(出版社)に勤務していたところ、(1)長時間労働、(2)2週間以上の連続勤務、(3)配置転換および退職の強要、(4)その他の同社代表者夫妻のパワーハラスメント行為といった業務上の事由により、2015年4月頃、うつ病を発症したとして、K労基署長に対して労働者災害補償保険法(労災保険法)13条および14条に基づき、(1)2016年1月14日から4月11日までの療養補償給付、(2)2017年1月9日から2018年7月13日までの休業補償給付を請求したが、同労基署長は2020年1月28日付で当該各請求に対していずれも不支給決定を行った(本件各処分)。
本件は、Xが本件各処分が違法であるとして、その取消しを求める事案である。
2.前提事実および事件の経過は?
<A社およびXについて>
★ A社は、京都市内において出版、編集等の事業を行っている会社である。
★ Xは、2014年5月よりA社で印刷物の編集と写真撮影等の業務に就労していた者である。
<Xの疾病、退職に至った経緯等について>
▼ A社は2015年4月中旬に能力が編集業務を任せるには足りず、以降改善の見込みも乏しいと判断し、Xを総務に配置転換した。総務の仕事は雑用が中心の閑職であった。また、異動により編集手当約5万円が支払われなくなったため、総務に異動後の給与は月額15万円台にまで減少した。
▼ Xは異動後の同年4月下旬頃より、心身の不調が常態化し、ICD-10(国際疾病分類)の診断ガイドラインにおける「F32 うつ病エピソード」を発病した(以下「本件疾病」という)。
▼ Xは本件疾病発病後も勤務を続けていたが、A社は2015年12月9日付でXに対し、2016年1月9日をもって解雇する旨の解雇予告通知書を交付した(以下「本件解雇」という)。
▼ Xは2016年11月、A社を被告として、労働契約上の地位確認および賃金支払等を求める訴訟を提起した。
▼ 両者は2018年7月13日、上記訴訟において和解し、本件解雇を無効とした上で、同日付でXがA社を退職する内容の合意をした。
<療養補償給付および休業補償給付の請求等について>
▼ Xは2018年12月、K労基署長に対し、A社での業務に起因して本件疾病を発病したとして、労災保険法に基づく療養補償給付および本件解雇後の期間に係る休業補償給付の請求をした。
▼ K労基署長は2020年1月28日、本件疾病の発病は業務上の事由によるものとは認められないとして、療養補償給付および休業補償給付をいずれも支給しない旨の処分(以下「本件各処分」という)をした。
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