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#611 「社会福祉法人A事件」千葉地裁

2024年4月17日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第611号で取り上げた労働判例を紹介します。


■ 【社会福祉法人A(以下、A法人)事件・千葉地裁判決】(2023年6月9日)

▽ <主な争点>
夜勤時間帯の割増賃金算定の基礎単価など

1.事件の概要は?

本件は、A法人の従業員として勤務していたXが同法人に対し、労働基準法37条の割増賃金請求に基づき、(1)2019年2月から2020年11月までの夜勤時間帯の就労に係る未払割増賃金合計312万9684円、ならびに遅延損害金の支払を求め、(2)労働基準法114条所定の付加金312万9684円およびこれに対する遅延損害金の支払を求めたもの。

2.前提事実および事件の経過は?

<A法人およびXについて>

★ A法人は、社会福祉法の定めにより設立された社会福祉法人であり、千葉県内において、複数の福祉サービス事業所を運営している。

★ Xは、2002年7月にA法人との間で期間の定めのない雇用契約を締結した者である。


<A法人のグループホーム、Xの勤務形態等について>

[A法人のグループホームについて]
★ Xは2019年2月当時、A法人が運営するグループホームB(入居者5人)、同C(同5人)、同D(同7人)同E(同7人)において、入居者の支援を行っていた。

★ 上記各施設のいずれにおいても、基本的に生活支援員は1名で業務を担当し、午後9時から翌朝6時までの夜勤時間帯は生活支援員が1人だけで勤務していた。

[夜勤時間帯におけるXの勤務形態等について]
★ Xの勤務形態は、基本的に就労するグループホームで午後3時から9時まで勤務して、そのまま同ホームに宿泊し、翌日午前6時から10時まで再び勤務するというものであった。

★ 夜勤時間帯に行われた業務の内容等については、その夜に勤務した生活支援員が翌朝の勤務終了時に所定の「夜間支援記録」に記載することとされていた。

★ A法人はXに対し、基本給24万4250円のほか1日当たり6000円の夜勤手当等を支払っていた(2019年2月時点)。


<Xによる未払賃金の請求等について>

▼ Xは2021年2月19日付の内容証明郵便により、A法人に対して、夜勤時間帯の就労に係る未払割増賃金を請求する催告をした。

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