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#210 「独立行政法人 国際観光振興機構事件」東京地裁(再掲)

2008年6月18日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第210号で取り上げた労働判例を紹介します。

■ 【独立行政法人 国際観光振興機構(以下、K法人)事件・東京地裁判決】(2007年5月17日)

▽ <主な争点>
直属の上司以外の者が修正した海外職員の人事評価に基づきなされた降格の効力

1.事件の概要は?

本件は、在職中にK法人がXを降格し、その給与を減給したことが人事権を濫用したもので違法無効であるとして、労働契約による賃金請求権に基づき、本件降格等前の等級号俸を前提とした場合に支給されるべきであった給与額と実支給額との差額、雇用保険法所定の失業等給付に係る不法行為による損害賠償請求等の各支払いを同法人に対し、求めたもの。

2.前提事実および事件の経過は?

<K法人およびXについて>

★ K法人は、海外のおける観光宣伝、外国人観光旅行に対する観光案内、その他外国人観光旅行の来訪の促進に必要な業務を効率的に行うことにより、国際観光の振興を図ることを目的とする独立行政法人であり、その前身は平成15年10月に解散した国の特殊法人である国際観光振興会(以下「振興会」という)である。同法人は、本部の他にソウル、北京、バンコク、ロンドン、ニューヨークなどに海外観光宣伝事務所を置いている。

★ Xは、平成3年10月、振興会に職員として採用され、12年8月、バンコク海外観光宣伝事務所へ異動となり、独立行政法人化により、K法人の職員となった。その後、16年4月、本部海外市場開拓部に異動となったが、同年9月、K法人を退職した。

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<本件人事制度および海外事務所評価制度等について>

▼ K法人は16年4月から、毎年度に職員の人事評価を行い、かつ、その結果を職員の給与額等に反映させるという新たな人事制度(以下「本件人事制度」という)を導入・実施した。

★ 本件人事制度において、職員は所定の基準・実施要領にしたがい、等級(能力)基準および職階(職務)基準に応じて設定された基準項目に点数をつけ、その点数合計である評価点を算出し、その計算の過程および評価の理由を簡略に「人事評価書」に記して、直属上司に提出し、直属の上司およびその組織管理上の上級管理者は同評価書を基礎に、順次評価を加え、職員が所属する部門の最高責任者がとりまとめて、同部門を担当する理事に提出することになっている。

★ 担当理事は職員の最終評価を記した一式書類を作成して、管理部長に提出し、管理部長に提出された職員の人事評価関係の書類は、全職員を対象とする評価一覧表に整理され、同表が役員会に付議されて、正式な決定へと至ることになっている。

★ 海外事務所の所属職員に関する人事評価方法は上記といくつか異なる点があり、とりわけ、個々の職員の人事評価とは別途に実施される海外事務所の業務実績および成果の評価である海外事務所評価制度が設けられている。

★ 海外事務所につき、一定のルール・基準により、チェック項目ごとに点数化し、平均化して算出された海外事務所評価を一定の係数に置き換え、これに海外職員の評価点に乗じたものをもって、当該職員の最終的な評価点としている。

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<本件降格等に至った経緯およびXの給与等について>

▼ 16年度人事評価におけるXの評価は、海外職員としてバンコク事務所に勤務していた15年10月から16年3月までを評価対象期間(以下「本件評価対象期間」という)とするものであったが、Xは誤って海外職員用の基準等でなく、本部職員用の基準等に基づいて評価をし、その旨の人事評価書を作成・提出した。

▼ バンコク事務所所長であり、本件評価対象期間中のXの上司であったA所長も上記過誤に気づかないまま、処理を進めたところ、本部管理部長であるBは、16年6月、上記の過誤に気づいたため、同部長はXおよびA所長に対し、改めた人事評価書を作成・提出するよう連絡した。

▼ A所長からXについての人事評価書が提出されたが、この際、添付されているはずのX本人作成の人事評価書が添付されていなかったため、B部長はXに直接、本人が作成した人事評価書を提出するよう求めたところ、Xは同部長に直接、人事評価書を提出した。

▼ 上記の経緯により、Xから人事評価書を受領したB部長はXの人事評価を修正し(以下「本件修正」という)、その評価を29点(X自己評価点38点、A所長35点)とした。上記29点にバンコク事務所の事務所評価に基づいた係数0.6を乗じた修正が加えられ、最終的なXの評価点は17.4点となり、基準により評価ランク「E」(本俸分約2割相当の降格レベル)となった(以下「本件評定」という)。

▼ そこで、K法人は本件人事制度に基づき、同年4月に遡って、Xの等級を4等級から5等級へ、かつ、その号俸を13号俸(旧号俸)から18号俸(新号俸)へ降格、減給した(以下「本件降格等」という)。

▼ Xの同年4月分から6月分までの3ヵ月間の給与は、旧等級号俸により支給されていたが、本件降格等によりXの本俸は、同年4月に遡及して、月額35万4600円から6万4300円減少し、月額29万0300円となった。

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