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#171 「消費者金融会社(セクハラ等)事件」京都地裁(再掲)

2007年1月31日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第171号で取り上げた労働判例を紹介します。

■ 【消費者金融会社(セクハラ等)事件・京都地裁判決】(2006年4月27日)

▽ <主な争点>
上司によるセクハラ行為/パワーハラスメント

1.事件の概要は?

本件は、Y社の従業員X(女性)が上司であったZからセクシュアル・ハラスメント(セクハラ)を受け、それに抗議したところ、報復を受け、退職を強要されたとして、Zに対して不法行為に基づいて損害賠償を請求するとともに、Y社に対して、民法715条の使用者責任に基づいて損害賠償を請求し、また、Y社にセクハラの被害を訴え、適切な調査・対応を求めたにもかかわらず、それを軽視・放置し、かえってこれをもみ消す形でしか対応しなかったとして、Y社の債務不履行または不法行為に基づいて損害賠償の支払いと未払賃金の支払いを求めたもの。

2.前提事実および事件の経過は?

<Y社、XおよびZについて>

★ Y社は、消費者金融を目的とする会社である。

★ Xは昭和40年生まれの女性で、平成14年6月、公共職業安定所を通じて、Y社に応募し、同年8月、「時給1,020円、主たる職務は電話による債権回収」という約定で採用された。

★ Zは16年2月、Y社のコンタクトセンター西日本(以下「コンタクトセンター」という)のカウンセリング九州地区(以下「九州地区」という)課長として配属され、17年4月に福岡県のK支店に定期異動するまではその地位にあった。

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<Y社における食事会、Xに対する勤務評価等について>

▼ Xは16年2月、九州地区に配属となったが、Xを含めて同地区に配属された者は約200名程度がおり、大多数の者は個別のパーテーションで区切られたブースに座り、電話による債権回収を行っていた。

▼ 九州地区では定期的に食事会が開催されていたところ、同年6月および11月、Z、Xを含む20数名の者が出席して居酒屋で食事会が開かれ、その際、Zが割り込むようにしてXの隣に座ることがあった。

★ 食事会は強制的とまでは言えなかったが、係長などから是非出席するように言われたりしていたこともあって、やむを得ない事由でもないかぎり、その所属員は出席していた。

▼ Y社では16年4月以降、新人事制度を採用したところ、Xに対する同年4月から9月までの勤務評価について、Zは成果行動評価および業務スキルに一部問題があるとして、従前よりも低い評価を行った。

▼ Xは勤務評価が下がったことについて、Zに説明を求めたところ、Zは理由として「Xが所定の休憩時間よりも長くとっていたこと、1時間にかける電話の本数が多すぎ、実質的な接触がなされていないこと」を挙げたが、Xは納得しなかった。

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<Xの休業から内容証明郵便送付に至った経緯等>

▼ Xは同年12月以降、急激に体調を悪化させ、同月6日、心療内科・神経科を標榜する医院で、不眠・神経過敏・抑うつ気分、食欲不振などを症状とする「心因反応」との診断を受け、自宅療養が必要とされた。

▼ Xは同月10日、Y社に電話をかけ、人事課長であるAと話をしたが、その際、Zから威圧的な口調で話をされ、退職を迫られるような圧力を受けた旨、またZのパワーハラスメントにより心身症となり、休業を余儀なくされた旨、そして退職手続に関する話などをした。

▼ Y社は上記電話でのやりとりを踏まえて、Xに対して退職届のサンプルとともに未記入の退職届を送付した。その後、XからY社の人事課社会保険担当に対し、診断書が送付され、傷病手当金の問い合わせおよび請求書の送付依頼があった。

▼ Y社は同月27日頃、先に送付した退職届が返送されてこなかったため、Xに対し、「休・退職の件に関してのご連絡の依頼について」と題する書面などを送付したところ、Xの父親から「退職の意思は全くなく、現在電話で話せる状態ではありません」と記載された手紙がY社に送付された。

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