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#299 「N社事件」東京地裁(再掲)

2011年11月30日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第299号で取り上げた労働判例を紹介します。

■ 【N社事件・東京地裁判決】(2011年2月25日)

▽ <主な争点>
休職期間満了によりなされた退職扱い等

1.事件の概要は?

本件は、疾病による休職命令(以下「本件休職命令」という)を受けて、その休職期間満了により退職したものと扱われたXが、N社が就労可能なXに対し、本件休職命令を発令して退職扱いしたのは違法であると主張して、雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認および未払賃金等の支払いをN社に対し求めた。また、Xは直属の上司であったCが違法行為を重ねたと主張して、N社およびCに対し、不法行為に基づき、連帯して、割増賃金相当損害(686万9141円)、慰謝料(200万円)等の支払いを求めたもの。

2.前提事実および事件の経過は?

<N社、XおよびCについて>

★ N社は、物流事業全般を営む会社であり、立川市にA事業所(以下「本件事業所」という)、江東区にB事業所を設置している。

★ X(昭和39年生)は、平成元年4月、N社に入社し、13年3月、本件事業所営業係長に任ぜられた。

★ Cは、本件事業所長を務めており、13年3月以来、Xの直属の上司であった。

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<N社の就業規則について>

64条(休職)
会社は、社員が次の各号の一に該当するときは、休職を命ずる。ただし、1号の場合は情状により、休職を命じないことがある。
 負傷または疾病のため、欠勤1ヵ年を経過しても、なお休務療養を必要とするとき

68条(復職)1項
会社は、64条1号の規定のより休職を命ぜられた社員が休職期間中に休務療養の必要がなくなったときは、復職を命ずる。

70条(退職)1項
会社は、社員が次の各号の一に該当するときは、退職とする。
 64条1号の規定による休職期間が満了したとき

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<本件退職扱いに至った経緯等について>

▼ N社は本件事業所の業績が下がったために、事務系の人員配置を見直すことにし、XをB事業所へ異動させることを決めた。Xは17年6月29日、B事業所への異動の内示を受けたが(以下「本件異動内示」という)、これに強い拒否反応を示した。Xは同月30日、急性口蓋垂炎による呼吸困難で倒れ、救急搬送されて治療を受け、同年7月4日以降就労しなかった。

▼ Xは同年9月、主治医であるD医師から「ストレス反応性不安障害 頭書の疾患により、17年7月5日より通院加療中であるが、現在もなお不安症状、自律神経失調症状が認められる。今後なお約3ヵ月間の休養加療を要する」という診断を受けて、N社に対し、ストレス反応性不安障害で欠勤する届出をした。

▼ D医師は19年1月、Xについて、「ストレス反応性不安障害 頭書の疾患により、通院加療中である。症状は改善し、就労は可能と思われるが、可能であればストレスの少ない職場への復帰が望ましい。なお今後6ヵ月程度の通院加療が必要と思われる」という診断書を作成してXに交付した。

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