#373 「オリエンタルモーター事件」長野地裁松本支部(再掲)
2014年11月12日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第373号で取り上げた労働判例を紹介します。
■ 【オリエンタルモーター(以下、O社)事件・長野地裁松本支部判決】(2013年5月24日)
▽ <主な争点>
時間外労働の未払賃金請求など
1.事件の概要は?
本件は、Xが雇用主であったO社に対し、(1)在職中の法内残業賃金、時間外勤務手当、深夜勤務手当およびこれに対する遅延損害金の支払い、(2)労働基準法(労基法)37条に基づく割増賃金と同額の付加金およびこれに対する遅延損害金の支払い、(3)O社がXから法律上の原因なく金銭の支払を受けたことに基づく不当利得返還請求およびこれに対する遅延損害金の支払い、(4)XがO社従業員らからパワーハラスメント(パワハラ)を受けたことに基づく使用者責任に基づく損害賠償請求およびこれに対する遅延損害金の支払いをそれぞれ求めたもの。
2.前提事実および事件の経過は?
<O社およびXについて>
★ O社は、昭和25年に設立されたモーター等の製造・販売を目的とする会社であり、2000名以上の従業員を雇用している。
★ Xは、平成22年4月にO社に入社したが、23年3月をもって同社を退職した者である。なお、Xの在職当時、O社の大阪支社営業部営業課所属のAがXのチューターであった。
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<Xが退職に至った経緯、勤務状況等について>
▼ Xは入社後、本社での実習を経て22年5月1日付で大阪支社営業部営業課に配属になり、同年6月14日から8月12日まで高松事業所で生産実習に従事し、同月17日から再び大阪支社で勤務するようになった。しかるに、Xは23年1月5日から出勤しなくなり、そのまま同年3月31日にO社を退職した。
★ Xは上記実習中、毎日日報を作成することが義務づけられていた。日報には当日の実習等で学習したことを記載することとされていたが、会社の業務に直接関わるものではなく、提出期限については特に定められていなかった。
★ Aら先輩従業員は日報をなるべく当日中に提出するようXに指導しており、そのために日報の作成が終業時間後や翌日の始業時間前に行われ、Xは会社に居残ったり、早く出勤したりすることがあった。
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<O社における就業時間の定め、入退場時刻の記録等について>
★ O社の大阪支社では就業規則により、始業時刻は9時、終業時刻は17時35分、休憩時間は12時から50分間と定められ、所定労働時間は7時間45分であった。また、施設管理のため、会社構内への入退場の際には必ず自己のICカードにより入退場時刻を記録することとされていた。
★ O社は従業員に対し、終業時刻後に会社の設備を使って資格取得のための勉強その他の自己啓発活動をすることを認めていたが、その場合は活動を終えて会社構内から退出する際、ICカードにより退場時刻を記録することとされていた。なお、高松事業所においても、大阪支社と同じく、会社構内への入退場の際にはICカードにより入退場時刻を記録することとされていた。
★ 所定労働時間外勤務または休日勤務については、課長以上の管理職が受命者に対して残業を指示し、指示内容や指示時刻等を記載した指示書に署名する方法により管理運用することとされていた。
3.元社員Xの主な言い分は?
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