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#188 「東光パッケージ事件」大阪地裁

2007年8月1日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第188号で取り上げた労働判例を紹介します。

■ 【東光パッケージ(以下、T社)事件・大阪地裁判決】(2006年7月27日)

▽ <主な争点>
結婚を契機とする退職勧奨と慰謝料等

1.事件の概要は?

本件は、T社の従業員であるXおよびYの結婚を契機として、同社がなした両名への退職勧奨および解雇通告に対し、それを不服として争い、休職していた期間にかかる未払い賞与・未払い給与、および退職勧奨による心理的圧迫が原因のうつ病ないし適応障害への罹患に対する慰謝料、さらに謝罪文の掲示を求めたもの。

2.前提事実および事件の経過は?

<T社、XおよびYについて>

★ T社は、各種印刷等を目的とする会社であり、従業員40名ほどの規模を有する。

★ X(男性)は、京都の会社でデザイナーとして働いていたが、T社からの勧誘を受け、平成11年8月に同社に入社した。

★ Y(女性)は、Xの推薦を受け、Xより一足先の同年7月、T社にデザイナーとして入社した。

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<第1次退職勧奨および第2次退職勧奨に至った経緯>

▼ 入社当初の約2年間は、Xらと同僚従業員との間にトラブルはなく、またT社からの評価も特に悪いものではなかったが、13年6月頃、Xらと営業社員Bとの間で、仕事内容について意見が対立し、BがY作成の試作品を投げつけるという事件が起きた。

▼ その後、C営業部次長が間に入り、Bは謝罪するなどしたが、ギクシャクした関係が続き、Bは次第に社外にデザインを発注するようになった。14年2月以降、Bから社内デザイン室への発注はなくなり、Xらと周囲の同僚従業員との関係も悪化していった。そうした状況の中、XとYは15年6月に結婚している。

▼ Xらは結婚について、同年2月、C次長らに報告していたが、翌3月、T社は業績悪化を理由として、Yに対し、退職勧奨をした(以下「第1次退職勧奨」という)。

▼ Yはこれに応じず、T社はYに対する定期昇給の不実施、パートタイム勤務への交代要求等を行った。この間の16年4月、Yはクリニックでの診察の結果、抑うつ状態と診断された。

▼ 同年5月、T社はXらが所属するデザイン室を閉鎖するとともに、Xらに対し退職勧奨した(以下「第2次退職勧奨」という)。

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<ユニオン加入から本件解雇までの経緯>

▼ Xらは同月、管理職ユニオン・関西(以下「ユニオン」という)に加入し、T社に対し、団体交渉を申し入れた。ユニオンの提案により、同年7月から自宅待機することとなり、T社はXらを無給の休職扱いとした。

▼ 同年6月、ユニオンとT社との交渉が行われ、ユニオン側がXらの退職を前提とした金銭解決の方針を打ち出したことに対し、Xらは方針の違いを理由に、同年9月、ユニオンを脱退した。

▼ 同月、T社はXらに対し、書面により同月25日をもって解雇する旨通知し
(以下「本件解雇」という)、Xに解雇予告手当34万5200円、退職金50万0400円、Yに解雇予告手当23万5400円、退職金43万1340円を一方的に振り込んだ。

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<本件解雇から本訴提起までの経緯>

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