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#600 「阪神電気鉄道事件」大阪地裁(再掲)

2023年11月15日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第600号で取り上げた労働判例を紹介します。


■ 【阪神電気鉄道(以下、H社)事件・大阪地裁判決】(2022年12月15日)

▽ <主な争点>
年次有給休暇の時季変更権行使など

1.事件の概要は?

鉄道事業を営むH社に雇用されて車掌として勤務していたXは、2018年9月19日につき年次有給休暇の時季指定をしたところ、同社により時季変更権を行使されたが出勤せず、翌20日に欠勤を理由とする注意指導を受け、1日分の賃金9714円を減給された。

本件は、Xが上記時季変更が違法であると主張して、H社に対し、(1)雇用契約に基づき、減給された賃金9714円およびこれに対する遅延損害金、(2)労働基準法114条に基づき、上記賃金と同額の付加金およびこれに対する遅延損害金、(3)不法行為に基づき、違法な時季変更権の行使を前提とする注意指導による慰謝料およびこれに対する遅延損害金の各支払を求めたもの。

2.前提事実および事件の経過は?

<H社およびXについて>

★ H社は、鉄道事業等を主たる目的とする会社であり、従業員数は2018年9月末時点で1282名、うち同社都市交通事業本部運輸部A列車所の在籍人数は211名(車掌は90名)であった。

★ Xは、1998年4月、H社との間で雇用契約を締結し、駅係員として勤務を開始した者である。その後、2006年8月から車掌に職種変更となり、都市交通事業本部A列車所に所属して車掌業務に従事している。


<H社における勤務割の実情等について>

★ H社において、車掌を含む乗務員の勤務割(シフト区分)は、乗務循環表(縦13行、横5列に乗務系統が記載された一覧表)によるものとされている。同表によれば、乗務員は週5日勤務した後、2日の公休日を経て次の乗務系統に移行し、13週で一巡して元の乗務系統に戻ることとなる。

★ H社は乗務循環表に基づき、乗務員の出勤時刻および終業時刻等を記載した勤務実施表を作成し、これを勤務日の4日前に発表している。


<本件時季指定と本件時季変更等について>

▼ Xは2018年8月19日、H社に対し、同年9月19日につき年次有給休暇(年休)の時季指定(以下「本件時季指定」という)をしたが、9月15日、同社により時季変更権を行使された(以下「本件時季変更」という)。

★ 9月19日につき年休の時季指定をした車掌は9名いたが、申請順に7名までしか年休を取得できず、申請が8番目および9番目(X)の車掌は年休を取得できなかった。

▼ Xは9月19日には出勤せず、翌20日に出勤したところ、A列車所の副所長、首席助役および助役から、前日の無断欠勤を理由として注意指導を受けた(以下「本件注意指導」という)。

▼ H社は、Xが上記日時に欠勤したことを理由に、10月支給の給与から1日分の本給9714円を減給した。

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