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#487 「シュプリンガー・ジャパン事件」東京地裁

2019年5月22日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第487号で取り上げた労働判例を紹介します。

■ 【シュプリンガー・ジャパン(以下、S社)事件・東京地裁判決】(2017年7月3日)

▽ <主な争点>
育児休業取得後の解雇、均等法と育児・介護休業法の規定との関係など

1.事件の概要は?

本件は、Xが産前産後休暇および育児休業を取得した後にS社から解雇されたことに対し、男女雇用機会均等法9条3項および育児・介護休業法10条に違反し無効であるなどと主張して、同社に対し、地位確認、賃金の請求をするとともに退職強要、解雇の実施が不法行為に該当するとして損害賠償を求めたもの。

2.前提事実および事件の経過は?

<S社およびXについて>

★ S社は、英文の学術専門書籍、専門誌の出版および販売等を行う会社であり、ドイツに所在する法人がその親会社となっている。

★ Xは、平成18年10月にS社に入社し、学術論文等の電子投稿査読システムの技術的なサポートを提供する業務に従事していた者である。

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<Xの育児休業、本件解雇に至った経緯等について>

▼ Xは22年9月から産前産後休暇に入り、同年10月31日に第一子を出産した後、育児休業を取得し、23年7月から職場復帰した。

▼ Xは26年4月、S社に産前産後休暇・育児休業の取得を申請して、同年8月から産前産後休暇に入り、9月2日に第二子を出産した後、育児休業を取得した。

▼ 27年3月、XがS社に対し、上記育児休業後の職場復帰の時期等についての調整を申し入れたところ、同社の担当者らは従前の部署に復帰するのは難しく、復帰を希望するのであれば、インドの子会社に転籍するか、収入が大幅に下がる総務部のコンシェルジュ職に移るしかないなどと説明して、Xに対して退職を勧奨し、同年4月分以降の給与は支払われたものの、その就労を認めない状態が続いた。

▼ XはS社のした退職勧奨や自宅待機の措置が男女雇用機会均等法(均等法)や育児・介護休業法(育休法)の禁ずる出産・育児休業を理由とする不利益取扱いに当たるとして、東京労働局雇用均等室に援助を求め、育休法52条の5による調停の申請を行い、原職や原職に相当する職に復職させることを求めた。

▼ 紛争調整委員会は27年10月、Xの申立てに沿った調停案受諾勧告書を提示したが、S社がその受託を拒否したため、調停は打ち切られた。

▼ S社はXに対し、27年11月27日付の書面により、同月30日かぎりで解雇する旨を通知した(以下「本件解雇」という)。

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<均等法9条3項、育休法10条の定め等について>

★ 均等法9条(婚姻、妊娠、出産等を理由とする不利益取扱いの禁止等)3項
 事業主は、その雇用する女性労働者が妊娠したこと、出産したこと、労働基準法65条1項の規定による休業を請求し、又は同項若しくは同条2項の規定による休業をしたことその他の妊娠又は出産に関する事由であって厚生労働省令で定めるものを理由として、当該女性労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。

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