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#70 「長栄運送事件」神戸地裁

2005年1月12日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第70号で取り上げた労働判例を紹介します。


■ 【長栄運送(以下、C社)事件・神戸地裁決定】(1995年6月26日)

▽ <主な争点>
非常時(震災)における無断欠勤等を理由とする懲戒解雇

1.事件の概要は?

本件は、C社の従業員であるHらが会社の車に知り合いを同乗させたこと、阪神・淡路大震災による配置転換に応じなかったことや無断欠勤などを理由としてなされた懲戒解雇の効力が争われたもの。

2.前提事実および事件の経過は?

<C社およびHらについて>

★ C社は、自動車運送取扱事業、貨物自動車運送事業、倉庫業その他を営む会社で、本社の他に3つの営業所を有し、従業員はアルバイト等を含め、約30名である。

★ Hらが、C社に入社した年月、平成7年当時の地位・職種は次の通りである。

 H・・・昭和57年5月 営業課長  Y・・・平成元年10月 業務課長
 N・・・昭和56年1月 運転手   M・・・昭和49年11月 運転手

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<HとYが解雇されるまでの経緯等について>

▼ C社は平成7年1月17日の阪神・淡路大震災により本社建物が倒壊したが、営業所、倉庫、車両等に支障がなく、業務を継続していた。しかし、従業員の多くが被災し、自宅の後片付けや交通事情の悪化のため、すぐには出勤できず、同年2月初めにようやく従業員が出揃うようになった。

▼ C社の代表者Iは同年2月12日に従業員全員を招集し、「1月17日以降出勤しなかった者は欠勤として扱うこと」、「震災による売上の減少が続くので、給料の20%をカットする」旨を告げたが、賃金カットについて具体的な説明をしなかった。

▼ Hら4名はいずれも6年4月に結成されたC社労働組合の組合員であったが、7年2月、一旦組合を解散して、全日本運輸一般労働組合(以下「運輸一般」という)に加入し、同組合神戸支部C社分会(以下「分会」という)を結成した。

▼ 分会とC社との間で行われた団体交渉の席上で、I代表から会社再建案が提示され、「震災後の交通渋滞や受注の減少により、トラック部門の業績が悪化しているのでトラック運転手全員を解雇し、アルバイトとして再採用する」、「倉庫部門は残す」、「Hほか1名の営業職は倉庫部門の作業職に配転する」等の案が示された。

▼ 同年3月13日に行われた団体交渉の席で、I代表は「会社の業績が悪化しているときに(会社の営業、運営上の機密に接する立場にある)課長が上部団体に属する組合に加入することは認められない」などとして、HとYの両名を同月15日付で解雇する旨通告した。

★ Hは6年3月、社有車で営業活動中にタクシーを拾おうとしている知り合いの女性を見かけ、病院に急ぐ様子であったので、同乗させて病院まで送ったことがある。

★ C社の就業規則には「許可なく職務以外の目的で会社の車両を使用しないこと」、「勤務時間中みだりに職場を離れないこと」、「職場の風紀秩序を乱さないこと」という規定がある。

★ HとYの両名は6年6月に課長になったが、就任後も特に職務の内容に変化はなく、会社の機密を扱うなどの人事権もなかった。

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<NとMの解雇等について>

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