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#153 「ケイズ事件」大阪地裁

2006年9月20日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第153号で取り上げた労働判例を紹介します。

■ 【ケイズ(以下、K社)事件・大阪地裁判決】(2004年3月11日)

▽ <主な争点>
試用期間中の解雇が不法行為に当たるか否か

1.事件の概要は?

本件は、(1)配偶者が同業他社に勤務していたこと、(2)会社の求める習熟度に達していないことを理由として、試用期間中に解雇(以下「本件解雇」という)された労働者Xが、解雇は正当な理由なく行われたもので不法行為にあたるとして、K社に対し、慰謝料等の支払いを求めたもの。

2.前提事実および事件の経過は?

<K社およびXについて>

★ K社は帽子等の製造販売を業とする会社であり、平成15年1月頃、求人を募集した。求人票によれば、仕事の内容は「工場内での婦人帽子の簡単な縫製、未経験者可」であった。

★ X(女性)は9年から13年まで、帽子の製造会社に勤務し、帽子の企画・営業の仕事に従事していたことがあり、10年には同社に勤務していた男性と結婚した。なお、Xは帽子の縫製の仕事に従事した経験はなかった。

★ X(女性)は15年2月、K社に縫製工として、「試用期間3ヵ月、賃金は時給800円」との約定で採用された(以下「本件雇用契約」という)。採用面接の際、Xは帽子の縫製の仕事に従事したことがないことについては話したが、配偶者の職業については質問されなかったため、これを話さなかった。

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<本件解雇までの経緯等について>

▼ K社において縫製の仕事に従事するようになったXは同僚に対し、配偶者がK社の同業他社に勤務しているという話をしたことがあった。その話をXの上司であるAが聞いて、K社の縫製の技術・ノウハウが他社に漏れるのではないかとの懸念を抱き、取締役のBに対し、これを話した。

▼ B取締役およびK社の代表者であるCは、Xから配偶者がK社の同業他社に勤務していることを聞き、縫製の技術・ノウハウが他社に漏れるのではないかと懸念を抱いたC代表はそのような懸念から従業員間で動揺が起こる可能性があること、Xの習熟度が悪いという話を聞いていたことなどから、Xを解雇することを決め、Xに対し、同年3月10日、解雇の意思表示をした(以下「本件解雇」という)。

★ 本件解雇の理由は、(1)Xの配偶者が同業他社に勤務しているため、従業員間でK社のノウハウの維持管理が困難になる可能性があるとの意見があり、職場内で動揺が起こり、職場全体のモラルの低下をきたす恐れがあること(以下「本件解雇の理由(1)」という)、(2)XがK社の定める習熟度に達していないこと(以下「本件解雇の理由(2)」という)であった。

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