見出し画像

#385 「ファニメディック事件」東京地裁

2015年5月6日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第385号で取り上げた労働判例を紹介します。

■ 【ファニメディック(以下、F社)事件・東京地裁判決】(2013年7月23日)

▽ <主な争点>
獣医師に対する試用期間中の解雇、時間外労働に対する割増賃金等の請求など

1.事件の概要は?

本件は、平成23年5月10日からF社で獣医師として稼働していたXが、同年11月9日付でなされた解雇(試用期間満了をもって雇用契約を終了する旨の意思表示)について、解雇理由とされる事実自体が存在せず社会通念上相当性を欠いている等と主張して、同社に対し、(1)雇用契約上の地位確認、(2)本件解雇後の同年11月から本判決確定まで毎月末日かぎり30万2000円の賃金等の支払い、(3)勤務時間中の時間外労働に対する割増賃金等の支払い、(4)上記(3)に対する付加金の支払い、(5)不当な解雇、解雇直前の時期になされたF社代表者等の言動により精神疾患に罹患したとして、不法行為に基づき、慰謝料300万円等の支払いを求めたもの。

2.前提事実および事件の経過は?

<F社およびXについて>

★ F社は、動物の診療施設の経営、ペット専用ホテルの経営等を目的とする会社であり、ファミリー動物病院流山本院、同新松戸分院、アニファ動物病院柏院等の4病院を有している。

★ Xは、平成23年5月10日、F社に入社した獣医師である。Xは入社当初、流山本院において勤務していたが、6月6日からは新松戸分院にも週2日程度勤務するようになり、8月1日以降は新松戸分院に週2日、柏院に週3日の割合で勤務した。

--------------------------------------------------------------------------

<本件解雇について>

▼ F社は23年11月4日、Xに対し、試用期間満了予告通知書を交付して同月9日の試用期間満了をもって雇用契約を終了する旨の意思表示をし(以下「本件解雇」という)、その後、24日分の平均賃金相当額である24万6857円を解雇予告手当として支払った。

--------------------------------------------------------------------------

<F社の就業規則、賃金規程の定めについて>

★ F社の就業規則には、以下のような規定がある。

第6条(試用期間)
新たに採用した者について採用の日から6ヵ月の試用期間を設ける。ただし、本人との協議により、試用期間を短縮することがある。

4.次の号の一に該当し、試用期間中もしくは試用期間満了時に本採用することが不適当と認められた者については、本採用を拒否し、第43条の手続にしたがって解雇する。ただし、採用後14暦日を経過していない場合は、解雇予告手当の支払いは行わずに解雇する。
(2)上司の指示に従わない、同僚との協調性が乏しい、誠実に勤務する姿勢が乏しい等の勤務態度が不良の場合
(3)必要な教育を施したものの会社が求める能力に足りず、改善の見込みが薄い場合
(7)会社の事業に従業員として採用することがふさわしくないと認められる場合

★ F社の賃金規程(23年4月改定後)には、以下のような規定がある。

第11条(基本給の決定)
基本給は、従業員の能力、経験、技能、職務内容および勤務成績などを総合的に勘案して各人ごとに決定する。
2.獣医師の基本給は、各人別に算定される能力基本給および年功給により構成されるものとし、以下の式により算出される金額を75時間分の時間外労働手当相当額および30時間分の深夜労働手当相当額として含むものとする。
  75時間分の時間外労働手当相当額=(能力基本給+年功給)×34.5%
  30時間分の深夜労働手当相当額=(能力基本給+年功給)×3.0%

5.その月の時間外労働手当、法定休日労働手当および深夜労働手当の合計額が前各号の時間外労働手当相当額を超える場合には、会社はその超過分について支払う。

3.獣医師Xの主な言い分は?

ここから先は

2,384字
この記事のみ ¥ 100

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?