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桜患い


桜を見上げると思う

あの日の
最後のぬくもりを

生きるのが下手な私と
臆病なきみ

出会ってしまった場所は
変わり果ててしまったけど
墓標のように在り続ける

桜を見上げると思う

あの日
時間は止まったままなのだと

きみが胸につけた疵は
今でも疼き
忘れることを許さない

そして
それは
私が望んだことなのだ

あの日
舞い散る桜とともに去ったきみ

追いかけなかったのは
その姿が綺麗だったからかもしれない

私は
ことばを失いつつあります

けど
紡ぐことばが無くとも
きみへの想いは絶えることはありません

桜が咲く

私の想いを弔うために

今宵も
朱鷺色の世界に
私を誘っておくれ

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