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夫の発達障害【日常の困りごと⑨ケアができない】

夫は、自他ともに身体的・精神的ケアができない。
これは、ほんとうに生死に関わることなのでとても重要な課題だ。

どういうことかというと、
たとえば今、我が家の娘は初の手足口病を経験しており、体のいたるところに発疹があって痛々しく見える。一昨日は発熱もした。
さすがに夫も、ひどくなってきたときにこの発疹には気が付いたようだった。
けれど、それで彼の行動がいつもと変わるかというと、そうではない。
「何か発疹がでているな」
以上、終わり。

まして発熱にいたっては、目に見えない現象だから気が付かない。

分かるだろうか、この不自然さが。
多くの親は、娘の体に異常を認めれば、すぐさま調べて想定される病名や対処すべき事柄について情報を得ようとするだろう。
まして現代は、手元にいつだってスマホがある。

けれど夫には、それができない。
半年ほど前、娘が胃腸炎になったときも、
私が毎日細心の注意を払って受診のタイミングを見計らっているのに対し、
彼は5日目にして、
「最近うんちたくさん出るねー」
と暢気に言っていた。
このときは異常を感じもしていないみたいだった。

これはもう、ほんとうに仕方がないのだと思う。
彼は、自分自身に対してもそうだから。

彼がコロナに罹患したときも、「何か悪いもの食ったかな」と思っていたのだという。
だから、具合が悪いことも私は知らなかったし、
私や娘に移されてはじめて発覚した。
どうせ彼から感染するのだろうと諦めてはいたから、やれやれ、という感じだ。

ふつうの感覚では信じられないけれど、
とにかく身体的に現れる症状に「気が付かない」らしい。
彼自身の感覚としてとても鈍いのだから、まして他者の苦痛や異常を認めるなんてこと、かなり難しいのだと思う。

結婚してすぐの頃、その日生理中で貧血気味だった私は、
彼にそのことを伝えて共有した。
けれどどうしても購入しなければならない家電があり、仕方なく量販店に見にいくことにした。

しかし、無理が祟った私は、品定めしている最中にめまいがして、その場にうずくまったまましばらく動けなくなってしまった。

ところが、すぐ傍に立っている彼は微動だにしない。

私の状況を察知した店員の方があわてて駆け寄って、
「大丈夫ですか。あそこの椅子まで歩けますか」
と言って、声をかけてくださった。
そこでようやく彼は、おや、と思ったらしい。

後で訊くと、「どれにしようか考えていると思った」と言っていた。
私は唖然とした。

こんな風だから妊娠中はそれこそ心底困ったし、それでよくもめた。
出産準備のための買い出しに行った先で、私が「しんどい」と訴えたとき、
「そうか」と答えたはずの彼は、
今買わなくても困らないはずのプレイマットの前で、20分もずっと何か考え事をしていた。
その間私は座ることもできずに、ぼーっとする頭で遠目に眺めていた。
泣きたかった。

彼の思考の中に、私の「しんどい」が入らないので、悪化した結果低血圧や貧血で意識が飛んだこともある。


けれどもこれが、「寒い」になると、彼はなぜかすぐに分かってくれる。
たぶん、「寒い」は、彼自身が知覚できる感覚だからだと思う。


おそらく彼は、私がいつか部屋で死んでいても、しばらくは気が付かないと思う。
「よく寝ているな」と思うんじゃないだろうか。
冗談ではなく、よかれと思って毛布を掛けたりするかもしれない。

血を流していたり、嘔吐していたり、とにかく目に見える物質的な変化があれば分かると思う。
でも衰弱死なら、たぶんほぼ確実に気が付いてもらえない気がする。

身体的なケアが壊滅的なので、当然見えない部分の問題である精神的なケアなど話にもならない。

ちなみに彼はよく、「娘をみておくから出かけてきてもいいよ」と言う。
でも私は、ほんとうによっぽどのことがなければそんなことできない。

もし娘がやけどをしたら?
もし嘔吐や窒息をしたら?
アレルギー反応が出たら?

彼がそれに即座に気が付いて、適切な対処ができるとは到底思えない。
まあこれは障害云々関係なく、世の中の男性の比重として多いみたいだけれど。

一緒に暮らしている人間に、自分の命を預けられない心細さ。
子どもの命に関しては、片方にのみ圧し掛かる責任の重さ。

私はいつも「そうなったらそうなったで仕方がない」と自分に言い聞かせることで心の負担を減らすしかない。
だって、彼といると、車の運転にしろ日常的な事故にしろ、「万が一」の確率が何もせずとも高いのだ。

「おまえは心配しすぎ。真面目だからな」
と彼はよくいうけれど、いいえ、決してそうは思えない。


余談になるが、彼は飛行機に乗る距離の現住地まで転勤してきたとき、
引越し先となる新居を決めていなかったという。
到着してから不動産屋に行って事情を話し、スタッフの方が慌てて対処してくださった結果、1か月ほどモデルルームに暮らしたという。

そんな心臓に毛が生えている人からすれば、私はさぞ心配性に見えるだろう。

私のストレスや不安は、絶対に彼に届くことはない。

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