見出し画像

夫の発達障害【日常の困りごと②新情報の受け取り拒否】

衛生観念に続いてとても困るのは、夫には新情報がとてつもなく伝わりづらいということ。
彼の脳は、新情報を拒否しがちだ。

前述のパンの賞味期限や手洗いについてもそうだけど、
「夫の中にない情報」を届けるには、同じことを何百回もひたすら繰り返し伝える必要がある。
それは、草の生い茂る山中に何年もかけてけもの道をつくるのに似ている。
それくらい険しい。

また、日常的な習慣についてならそんな風に繰り返すことができるけれど、その場その場での「情報をキャッチする」→「行動する」の流れが悪いので、家でも外でも頻繁にトラブルがある。

たとえば、
我が家には常備しているアイスがある。
赤いパッケージの袋入りで、冷凍庫を開けると視界の3分の1ほどを占めるくらいの大きさ。
たまたま店頭にない時期があってしばらく在庫を切らしていたとき、出先で同じものを見つけた私は何も言わず2袋補充しておいた。
それから10日ほど経って、彼は、いつもの店から同じように2袋買ってきた。(その間アイスは減らず、ずっと冷凍庫の中にあった)
そして冷凍庫を開けて、「あれ、あったんだ」と言う。

彼は、毎朝冷凍庫を開ける。昼も開ける。
それなのに、自分が「アイス」と意識する瞬間まで、毎日見ている場所に堂々と鎮座するアイスが見えない。
ほんとうはそこにあるものが、彼にとっては存在しない。
彼の意識に上るその瞬間まで。

またあるときは、
「あの店新しくなったね」
と通り掛けに指さす私に、「そうだね」と頷きながら、彼も私の指す方向を視線で辿った。
てっきりそれで情報の共有ができたと思っていたのに、半年後、彼はその事実を初めて見つけたかのように、
「あれ、何かあそこ新しくなってない?」
と言う。

いや、その話は半年前にしたじゃないか。そしてそれから今日までの間、何度もそこを通ってきたじゃないか。

彼には彼のタイミングでしか、情報が入らない。
そして、会話上は届いているかのような受け答えがあるから、私には情報が共有できたのかどうか判断する術がない。

別にアイスもリニューアルした店舗もどうでもいいのだけれど、彼に新規の情報を伝えるのはそれくらい困難なのだ、ということ。

また、思い込みによるものなのか、
たとえば、目の前にある店の看板をまったく無視して、
「ここが○○かあ」と全然違う名前を言ったこともある。
???????
彼が一体何を言っているのかさっぱり分からなくて、私は言葉に詰まるくらい動揺した。
だって、彼の背丈の倍はあるような大きな看板が、横にも、正面にも、でかでかと掲げられているのに。

え、あれが目に入らないの?
○○って何のこと?

正直、彼の思考が分からな過ぎて、このときも怖いと思った。

よくよく聞いてみると、その直前に彼は○○という店名をスマホで見たのだという。
つまり、目の前の現実が、彼の頭の中にあるものにとって代わられているらしかった。

私には、全然理解できない現象だった。

「現実を見てよ」
これは、この頃の私が彼によく言っていた言葉だ。

これらのハプニングと同じ現象が、当然日々の生活でも次々に起こる。
「町内会の○○が~~で」
「ここはもう拭いたよ(だからあなたは拭かなくていいよ)」
「タオルはここにしまって」
「●日は仕事で遅くなるから娘と家にいて」
とか、一緒に暮らしていれば共有しなければ困るような情報は山ほどある。

「うん」とか「わかった」とは返事があったとしても、
それが彼には届いていないことがしょちゅうある。

え、わかったって言ったじゃん…

このストレスを、想像いただけるだろうか。

せめて1日に1個なら、まだ我慢できると思う。
でも、私と同じ立場にある方にはお分かりいただけると思うけれど、毎日、何個もこういうことが立て続けに起こる。

そして、さらに厄介なことに、うちの場合それに困っているのは私ただ1人なのだ。
彼にとってはそうやって情報が漏れている状態が当たり前だから、とくに「トラブっている」という認識はない。

いつだって「またやらかしたか」と思うのは私ばかりだ。
だから当然、約束をすっぽかしても、そのことで私が予定の変更を余儀なくされても、彼からは「ごめん」なんてあるはずもない。

この頃はまだ夫を「夫」として思っていたかったから、
気持ちのもっていきようがなくて、私は彼を「ひどい」と思ったし、
とにかく混乱した。
そして、情報も気持ちも共有できない彼に、どんどん嫌悪感を募らせていった。

(すっかり、とまではいかなくても、今はようやくそういうことは大体諦められたと思う)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?