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夫の発達障害【日常の困りごと⑥心と頭と体の不一致】

夫とのコミュニケーションを困難にしている要因の1つに、彼の心と頭と身体表現の不一致が挙げられる。

これは、彼ととことん向き合っていた時期に時間を掛けてヒアリングする中で得た感覚なので、
もしも彼自身の言葉で表せる日がきたら、実際は違う現象なのかも知れない。

でも概ね彼の言い分とも符号するので、そう的外れでもないだろうと思う。

どういうことか、というと。
たとえば、彼はよく、パニックを起こして暴言を吐く。
妊娠中も、
「おお、妊婦さまさまだなあ。奴隷扱いしやがって」
と言われたし、
「お前はバカか? 頭おかしいんか?」
という類のことは日頃からよく言われる。

そして、こうしたことが起こるときのパターンは決まっていて、それは、私が彼の「ミス」を指摘したときだ。
「自分に非があることを認められない」特性により、彼はこちらを貶めようと必死になるわけだ。

日頃の彼と、このパニック時の態度の変わりように、
理解が追い付かなかった頃の私は狼狽え、混乱し、ほとんど錯乱していた。
だって、ほんとうに180度人が変わってしまうのだから。

ここまでの記事で書いてきたように、彼は割と率先して買い物や家事を引き受けようとする。
だが、私からするとかなり無駄が多かったり、不衛生だったり、不適切だったりすることが多い。
こと娘のことに関連する事柄は、私も指摘せざるを得ない場合があり、
そうなると途端に、
「俺が全部やってやってる!」
「俺は奴隷だ!」
「馬鹿にするのもいい加減にしろ!」
と豹変する。

はじめの頃はもうまったく意味が分からなくて、
「え? いつも自分からするって言うよね?」
「そんなこと言うならしなくていいよ?」
としか返せなかった。

そもそも「やってやってる」って、何だ。
(この言い方には今でも全然納得していない。
家族として何か自分にできることを担当するのは当然だろうと私は思う。
仮にも、夫がしていることは全体のほんの一部のに過ぎないのだし)

私自身は、家のことも子どものことも、夫のことも、義実家のことも、
「やってあげてる」という感覚はない。
別に頼まれたわけではないし、自分がそれをやらないと気持ちが悪いからするだけのこと。

一方で、夫に「してもらってる」という気持ちはもちろんある。
だから、いくらキレたからといって、
「全部やってやってる」って、何事? と腹が立つ。
お互いにしてもらってることはあるよね。

でも、そんなことを言ったって通じないし、解決にもならない。
なぜならたぶん、ほんとうの彼の気持ちは別のところにあるからだ。

その証拠に、私は毎回毎回、
「じゃあ、やらなくていい」と言うのに、
「いや、それは別にいい。俺がやる」
と、彼は結局、自分の役割として手放さない。

基本的に彼は、「人の役に立ちたい」という想いが強い。
いつも根底にはその気持ちがあると思う。

だけど、それがうまく達成できない(=私が喜ばない)ことで、
「俺だってこんなに頑張ってるじゃないか!」
「俺を認めてくれよ!」
「俺を見てくれ!」
という気持ちが溢れて、でもそれを素直に言うにはプライドが高すぎて、パニックに陥っているように見える。

その結果、目一杯相手を貶めて優位に立つことで(実際はより下位になるとは知らず)
心の安定を取り戻そうとしている。

脳では、「まずい」と理解はしていると思う。
けれど、こういうとき感情のコントロールが効かないので抑えられず、
表現としてあまりに酷いことをしたり言ったりしてしまう。

心と体がバラバラだ、というのは極端なところではこういうことだ。

これはたとえば、
私が人気店のパンを食べたいと言ったとして、
「じゃあ、俺が並んで買ってくるよ」
と言いながら、当日すっぽかしてしまうのも同じ構造ではないかと思っている。

彼の気持ちとしては、私を喜ばせたい、というのがたしかにある。
けれども脳内では、
「妻が【5分で売り切れることがある】って言ってたな」
という情報がうまく処理されない。
「自分から並ぶっていったよな」も忘れ去られる。

となると彼の体は当然、開店に合わせた時間の通りには動かない。

その結果、私からの連絡でようやく「これから行く」となり、閉店した店を確認して戻ってくるだけの無駄足になる。

これを傍から見ると、じゃあなぜ自分から「並んで買ってくるよ」って言ったの? という疑問が湧くし、
自分で言ったことを守れないなんて、不誠実な奴だな、と評価が下がるだけだと思う。

私たちの多くは、行動の起点としてまず「何かしらの心の動き」があり、
それ故、他者のふるまいに関しても「特定の気持ちの表れ」であると認識する。

けれど、彼に対してはこの一貫性が適用されない。
彼の場合は、気持ちは気持ち、行動は行動、さらに考えていることはまた別。みたいなことが、度々起こっているらしいから。

大抵の人からすると、自分から言い出した約束をすっぽかす彼の気持ちに、まさか「相手を喜ばせたい」が隠れているとは、容易に信じがたいのではないかと思う。

でもたぶん、彼、あるんだよなあ。「役に立ちたい」が。
それも病的なほどに。

そしてそこには、彼の自己不審や劣等感が潜んでいると、私は踏んでいる。

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