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コロナ禍と自閉症スペクトラム:ロックダウンのステージ4に突入して

ノートをご覧になって頂きありがとうございます。

ロックダウンが今までで一番厳しいステージ4に突入した、オーストラリア第2の都市メルボルン。今日はざわつく日々の中で感じたことを記します。

◆ステージ4のニューノーマル

ステージ4の定義は各国で違いますが、メルボルンでは、5km以上と夜間の外出禁止。人と会うこと禁止。買い物は5㎞以内、一世帯一名のみ一日一回まで。スーパーと薬局など、必要最低限の物資を提供するお店以外すべて閉まります。もちろん、レクリエーション系施設もオールシャットダウン。公園の遊具で遊ぶのも禁止。

ビジネスは、医療系や金融系など限られたエセンシャルなものを除き、通勤不可、リモートで行えなければビジネス自体をストップしなければなりません。更なる補償で経済は大打撃を受けるだろうけれど、医療崩壊を防ぎロックダウンを長期化させないための短期的な厳しい措置とのことです。

娘に直接関わる規制は、幼稚園が閉まること。療育はかねてからほとんどリモートでしたが、対面で続いていた、グループ療育と作業療法は特例となるのかどうか、この辺はまだ、不明です。

◆4歳の娘(自閉症スペクトラム)の反応

Covid-19のパンデミックの中で、自閉症スペクトラムの当事者への影響は、様々あるようです。

定着した生活のルーティーンが崩れてしまうことに不安を覚える特徴があるので、中では、ロックダウンによる生活変化に対応できず、他者からの孤立に耐えられず、自殺してしまった19歳のイギリス人女性のニュースも記憶に新しいです。多大なストレスを感じている当事者の人々が、多くいることと拝察します。

娘の場合には、まだ、生活ルーティーンの存在自体が曖昧で、コロナに対する知識もありません。その中で、唯一彼女に起こっていることは、

社交の場が極端に減った。
お友達とも会わない。
親戚とも会わない。
幼稚園もない。
外を歩いてもほとんど人に会わない。

自分が安らぐ親のそばに常にいられて、
外に出なくてもよく、
人に会わなくても良い、というこの状態。

娘にとってはとても心落ち着く環境で、穏やかに過ごしています。心理士さんも、社交に極度の不安を感じるASDの子供たちにとっては、ソーシャルディスタンスは居心地がよさそうだと話していました。

◆いくつかの成長・療育は振り出しに

しかし、長引く休みは、再び社交の場に出る不安を増幅させます。

2週間のお休みでも、幼稚園に行きたがらなくなり、慣れるまで時間がかかった経験があります。ようやく、慣れて、楽しく過ごしているという報告を受けた矢先のステージ4。今回は、6週間プラス春休みもあります。

恐らく療育に携わる多くの親御さんが、様々な専門家のアドバイスのもと、なるべく本人の不安を軽減しながら「社会」の仕組みの中で過ごしていけるよう、糸を手繰り寄せるように療育プランを立て、細かな積み重ねで、一つの成功体験を導けるようにサポートしてきたと思います。

娘にとっても、母親の付き添い通園をやめて「一人で幼稚園で過ごす」というミッションは、数多くの助けと、娘の頑張りの積み重ねによって達成されましたが、それは、急に幼稚園に放り出すのではなく、一つ一つ、娘の性格や特性を鑑みながら作った、順を追った療育の計画に基づくものでした。

これが振り出しに戻ってしまうとしたら、大きなことです。

◆それでもレジリアンスを培うチャンスと捉えたい

娘の心理士さんは言います。
「変化はいいことだから。」

娘にとっては、ロックダウンの後、「社会」の場に再び出ていく変化は、相当困難な経験かもしれません。けれども、彼女だけの繭の中で、一生を終えられるわけではありません。いつかは親とも離れなくてはならないし、それが学校であってもなくても、何かしらの「社会」の中で生きていかなければならない。そして社会は変化に満ちています。

それならば、彼女にとって変化に慣れる練習というのは、

物事の変化にしなやかに対応する能力、すなわち「レジリアンス」を養うチャンス

なのです。それは、子供だけでなく、親にとってもそうです。

そう思うと、このステージ4という厳しいロックダウン。ロックダウンの最中、娘には束の間の休みを、折角なので穏やかに楽しく過ごせる機会にし、ロックダウンの解除後には、レジリアンスを培うチャンスとして、社会生活への段階的な順応に取り組もう、と淡々と受けとめられました。

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