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ラトビア神道のお守りを考えてみた。

こんにちは。元御守デザイナーのりいなです。

2020年6月21日は夏至の日です。
さらに今年は日蝕と重なって372年ぶりの夏至の日食というとても珍しい日になります。日本でも部分日食が見られるようなので楽しみです。

さて、夏至というと普段はあまり注目されないイメージですが
今年は映画ミッドサマーの影響もあり【夏至祭】が注目されています。

夏至(げし、英: summer solstice)は、二十四節気の第10。北半球ではこの日が一年のうちで最も昼(日の出から日没まで)の時間が長い。
~Wikipedia~
夏至祭(げしさい、げしまつり)は、夏至またはその近くに行われるお祭りで、ヨーロッパのキリスト教国で夏至近くの聖ヨハネの日に関連した祭りがよく知られているが、世界的にはこれに関連した祭り、これとは別の祭りがいろいろと行われている。
~Wikipedia~

日本の夏至

日本の夏至祭で有名なものは、三重県伊勢市の二見興玉神社の夫婦岩(めおといわ)で行われるお祭りでしょうか。伊勢の神宮にはアマテラス大神という太陽神が祀られています。二見興玉神社は神宮へ参拝する前に浄める場所で、夏至の日には夫婦岩の真ん中から朝日が昇る、太陽を感じ入る場所です。(今年は神職のみの縮小開催です)


また、ご存知の方もいらっしゃると思いますが
6月30日には半年の穢れを祓い清める【夏越の祓】があります。

夏至(6/21)から半夏生(夏至から11日目からの5日間、7/2~)までの期間は田植えの期間で、梅雨時期ですのでカビ・雑菌が繁殖しやすい時期になります。
そして小暑や大暑と、暑く体を壊しやすい時期でもあります。


つまり、病気になりやすい時期とも言えます。
その為、無病息災を祈念した祭事が行われます。


◆夏至:茅の輪設置(夏越準備)
◆6月末:夏越の祓
 半年分の疲れ(穢れ)や病の元を祓い
 残り半年の健康や厄除けを祈願し茅の輪くぐりをする
◆半夏生:田植え完了
◆7月7日:七夕
◆7月15日:作物の豊作や水害や疫病をおさえる水神様をお招きする


年神様を迎えるにあたって年末に大掃除をするように、
水神様を迎えるにあたって半年の穢れを祓うという事です。
昨今は7月上旬の参拝を【夏詣】と呼んでいたりもします。

日本の夏至について長くなりましたが、
半年分の厄を落とす期間の始まりの日と言えるんじゃないでしょうか。

今年は疫病が流行ったので、近所の神社の茅の輪をくぐりたいと思います。


ラトビアの夏至

ひょんなことから、ヨーロッパのバルト三国の一つであるラトビア共和国に
自然信仰のラトビア神道というものがある事を知りました。
バルト神話をベースにしたラトビア神話の神々を祀っている神社があります。

ルアクステネ神社(Lokstenes_svētnīca)

ラトビア神道では神様を表す図形が日本の古典文様のようであったり、
神社(神殿?)の建築が日本の神社のようであったりと

日本の神道に近いものを感じ興味を持って調べてみる事にしました。



<ラトビア神道とは>

・天空神が魂を、地母神が肉体を、運命神が寿命を与え、人間が生まれる

・死後、肉体は地母神へ、魂は八百万の神の一部となって天空神へ、
 肉体と魂の繋ぎが祖霊として守護霊になる

・神酒は蜂蜜麦酒

・太陽崇拝が基本で太陽神は女神

・太陽を8等分にする考えから、立春・春分・立夏・夏至・立秋・秋分・立冬・冬至にそれぞれ祭事がある

・もっとも重要なお祭りは夏至祭

・ひとりひとりに守り神がいる

・主要な神様は約20柱




神話の概要は読めても、物語の詳細まではわからないなりに
どことなくギリシャ神話や北欧神話の雰囲気を感じ、地理的にも近いのでどこか文化的な影響や共通点があるのかな?


こうして調べていると
魂と命って別物の解釈なんだな。とか 死んだあとに魂が八百万の神の一部になるのは日本と似た解釈だな。とか 蜂蜜麦酒ってどんな味だろ、祭事の時に飲むのかな。とか 太陽神が女性の所は少ないから嬉しいな。とか 立春や立夏などは日本だと節句にあたるから祭事があるのは一緒だな。とか 日本だと重要なのはお正月だなぁ。とか 氏神さまが守護神に該当するのかな。とか 20柱ってどんな神様なんだろう。とか


考え出したら楽しくなっていき、『ちょっと御守のデザイン考えてみようかな』と調子に乗りました。

Twitterで考えてみようかなとつぶやくと、楽しみにしています!(意訳)とコメントいただいたので考えました。

ラトビア神道のお守りを考えてみた

ラトビア神道には前記の通りに、神様が図案化されています。
例えば日本でいうと、雷は稲妻。水は流水。梅は丸が5つ。といったような感じで太陽はこれ、月はこれ、雷はこれ、豊作はこれ、とそれぞれを表す文様があります。

その文様はラトビアではミトンなどのテキスタイルで使われているそうです。

画像2

この画像の中にも沢山の神様の文様があります。
複数の文様をミックスし、連続した文様として使われるので素敵なテキスタイルでオシャレですよね。

ラトビア神道では、白地に赤が聖なる色になります。
白が男性、赤が女性。子孫繁栄を願うのはどの国でも同じですね。

文様が示す神様と、その神様が守護するものを調べデザインを考えていきました。

白地に赤これを基本形にしつつ、日本のお守りだと願い事別に色のイメージがおおよそ決まっているので、その色のパターンも考えます。

①デザインベース

ラトビア1

今回は一般的な御守の形でテンプレートを作りました。
御守袋を縛る飾り紐は【叶う結】と呼ばれる縁起のよいものが使われます。
表面には社紋の代わりにラトビア神道の象徴のマークを。
裏面には神社の名前を入れます。
一つはシンプルに(表)マーク、(裏)ラトビア語で名前。
一つは(表)マーク+願い事(ラトビア語)+御守、(裏)日本語で名前。
この2種類で作りました。

ラトビア2

ちなみに、御守がなにか知らない人向けの説明書きです。



②太陽神

ラトビア3

太陽神サウレの御守です。
サウレは生命、豊穣、温暖および健康の女神です。特に恵まれない境遇の人の守護神でもあります。
太陽を示す柄は8菊にも見える図案です。太陽を八等分にする=図案も8つの花びらでカワイイです。
御守の中でも特に願い事を書かない、基本中の基本である身を守る御守を意識したデザインにしました。白ベースは神聖なイメージもあり好きです。


夏至祭がサウレのお祭りで、花輪を被って焚火を囲い歌って踊り一年の感謝を捧げます。面白いのは未婚の女性が花輪投げをして婚期を占う事です。
ちょうど時期なので、夏至祭バージョンの御守もデザインしました。

ラトビア.夏至守

ちょっと柄が細かい・・・。イラストacさんから素材を頂きました。

表の葉っぱは、シダの葉です。夏至祭の日にの夜に咲く【シダの赤い花を摘んだカップルは幸せな結婚生活を送れる】という云われがあります。
ただし、シダに赤い花は咲かないそうで、真夜中のデート推奨の言い伝えなんだそうです。

裏は花輪です。この日にかぶった花冠を翌年の焚火で燃やすと、一年分の厄払いになるそうです。

縁結びと厄除の御守ですね。


③月の神

ラトビア4

月の神メーネスの御守です。
メーネスはサウレの夫です。ラトビアの伝説では浮気性のメーネスを怒ったサウレによって刺されています。
これにより欠けるようになって月の満ち欠けが始まりました。
リトアニア神話では娘と浮気してたりもします・・・。

月の文様は三日月のような、亀甲紋の一辺が消えているような図案です。
月の神は戦士守護の神で、男性の守護神のようです。

戦士の守護=武運長久=勝守

亀甲文様っぽい使い方で、白ベースに薄い黄色のデザインと
夜空をイメージしつつ、勝守といえばの黒ベースのデザインです。


④明星神

ラトビア5

明星神アウセクリスの御守です。
3番目にポピュラーな神でありつつ、雑貨などを見ると一番人気っぽい神様で、女神と書かれていたり、サウレの娘が許嫁と書かれていたり。性別迷子でした。
夜の闇を退け、新しい朝の訪れを伝える明けの明星は、光で悪いものから身を守る力があるとされ、悪魔除けのシンボルマークでもある八芒星の図案です。

悪魔除けなので災難除の御守

八芒星に色を付けて、縦横に繋げていくとギンガムチェックのようにカワイイ柄になりました。よく見たら八芒星。
別パターンとしては、夜明けの空に白く光った星が輝くデザインです。


⑤雷神

ラトビア6

雷神ベルクナスの御守です。
見て思った事は「まじ卍」。死語でしょうか…
卍が斜めに傾いているものはナチスドイツを連想する人が多そうですが
伝統文様なので勿論こちらが先です。
雷が割れている姿を示す図案になります。

ベルクナスは鍛冶の神でもあります。鍛冶で火花が散るからでしょうか?
雷神はどこの国でも恐ろしい神のようで、同じバルト神話のくくりであるリトアニア神話では、メーネス(月)が浮気をした時にサウレに代わってベルクナスが体を切り裂いて罰したそうです。
罰を与える強い神が厄除の神になる点は日本の天神様と一緒ですね。

これはそのまま厄除守です。

卍を並べていったら日本の文様じゃないかと思うようなデザインができました。
白ベースは卍が良く見えるようにシンプルにデザイン。
もう一つは、厄除といえば日本だと魔除けの意味がある赤をベースにしました。

⑥馬屋神

ラトビア7

馬屋神ウーシンシュの御守です。
一番難しかったです…
ウーシンシュは春と告げる神であり、春=豊穣+繁殖のシンボルでもあり、馬と蜜蜂の守護者でもあります。
特に馬がシンボルで生殖活動の意味が込められており、男性器を示しているようです。また、馬は移動の足ですので、旅路の守護です。

旅路=交通安全・旅行安全・道中安全の御守

ウーシンシュの図案はEが背中合わせになった部分だけを使うこともあります。
安全を意味する緑を使い、
一つは市松文様をイメージしたもの。
もう一つは立枠文様をイメージしたもの。
どちらも日本の伝統文様とのミックスでデザインしました。

⑦豊穣神

ラトビア8


最後、豊穣神ユミスの御守です。
ユミスは穀物を表し、穂が垂れたような図案で二股の植物を表しているそうです。穀物庫の屋根や、夏至祭の焚火周りの支柱などにこの図案が使われていました。
穀物だけでなく、花やキノコ、リンゴも含まれたようです。
他にも面白いのが、民間信仰としてはユミスは穀物畑の妖精と書かれていたり、黄身が二つある二黄卵を示して不妊治療加護という話もありました。

豊穣はそのまま五穀豊穣の御守

ただ、五穀豊穣の御守ってあまり見かけないですね。
五穀豊穣と大漁祈願が合わさって、商売繁盛に合併されています。
最近はそれに加え、自営業以外の人も加わって仕事守に進化してます笑

さて、五穀豊穣なので穀物が実った藁の色をイメージしてみました。
ユミスの図案を斜めに繋げていくと面白い菱文様ができたのが一つ。
複雑化したユミスの図案を菱の中に入れたものが一つです。


さいごに

ラトビア神道が面白いなーと思ってはじめた『デザインしてみた』ですが改めて日本の伝統文様の細かな形や意味を調べたり、願い事と色を考えたり、何よりラトビア神道を調べるのが本当に楽しかったです。

遠い国の土着の信仰と日本の長ーーーく続く自然信仰の共通点が多いという事は、
例え気候が違って生活様式が違っても、人間が自然に感じる畏敬の念は近しいと言えるのではないでしょうか?

調べていく中で、ラトビア神道の中で大切な夏至の日が近づいている事に気づきラトビア神道の紹介の意味も込めてこのnoteをまとめました。

ギリギリ間に合ってよかったです。


もしも作った中で好きなデザインがあれば教えてもらえると嬉しいです。
やる気マックスになります笑

私は明星神の左側、ギンガムチェック風が気に入ってます。
が、作りにくそうな柄だなぁと反省。


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