成瀬巳喜男作 『女が階段を上るとき』
日本映画界のレジェンド・成瀬巳喜男監督。この監督は物語の背景となる街や空間をアンカーで立体的に打ち込んでいくのがうまく、その中で人物をぐるぐる動かしながら、同時に場の不変と人の変化を対比させるように描く。(という印象を持つ)
本作は、銀座で雇われママをする主人公の女性(未亡人)の悲喜こもごもを描いたもの。店の売上や客の入りに神経を使いながら、上客からの誘惑と亡き夫への未練に悩まされつつ街を泳いでいく。
毎日、店(二階)の階段を上るときに感じる主人公の憂鬱な姿が冒頭とラストに挟まれる。主人公を演じるのは高峰秀子。可愛いさもさることながら、表情のメリハリが細かく、その変化を追うだけで内面の様々な動きを汲み取れる。まるで映画のなかに映画があるような、情報密度の高い女優。
ラストは中々に凛とした立居振舞いであり、「銀座の女」を見せてくれるが、個人的には「不器用な女」にもみえた。
昔の日本映画好きだなあ。成瀬巳喜男監督は他にも『めし』も好き。高峰秀子出演作では『浮雲』も好き。
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