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#7 ランゲルハンス島の午後

私の住んでいる町の最寄駅には、そこから自由に本を借りて良いという本棚がある。私はヘビーユーザーというわけではないのだけれど、たまに覗くと、あれ?こんな本あったっけ?増えてる?となるので、きっと誰かがこっそり本を入れてくれているのだろう。

電車が来るまで少し時間があったから、村上春樹、置いてないかなぁと、ちょっとした思いつきで探していたところ、村上春樹のエッセイが三冊。一番薄くて、絵が素敵な「ランゲルハンス島の午後」を手に取った。ハワイあたりの島の優雅なゆっくりとした時間を感じられる、魅力的なタイトル、こんな天気のいい日曜日の午後にぴったりだ、と思った。

ランゲルハンス島を知らなかったから。

きっと最後のページは南国の島への憧れや旅の思い出締めくくられるのだろう、と思いながら、今日1日で読み終わるように、と早めのスピードで読んでいった(エッセイ一つずつに素敵な絵がついているのだけれど、それをじっくり楽しむ時間はなかった、ので、今度また読み返したいと思う)

ときめいたり、少し笑えたり、憧れたり、とても素敵なエッセイ集だと思った。きらきらしてた。旅先でレコードを買うことを書いたお話があって、いいな、と思った。旅先でその土地のお土産じゃなくて、そこで出会ったものを買うって、いい。なんだかうまく言い表せないけれど。今度の旅行では、古本屋さんに行って本を買う、とかしてみようかな。

そんなことを考えている間に、あと一つというタイミングで、「次は〇〇」と、私の最寄駅の名が聞こえた。私はその一つをランゲルハンス島の空気を感じながら読もうとしたら、びっくり。春に少年が忘れ物を家へ取りに帰る話だったのだ。村上春樹は、ランゲルハンス島を知らない人が勘違いするのを意図してタイトルをつけたかどうかはわからないけれど、結果的にその勘違いで生まれる笑いが、このエッセイたちのまとめ役のようになっている気がした。また村上春樹のエッセイ、読んでみよう。

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