趣味が増えると言葉が増える

 日々好奇心の赴くままに生きていく。

 YouTubeでよく見る好きなことで生きていくを自分に当てはめてもじるとこうなります。

 そしてこの好奇心には制限を設けていません。

 知った上で自分には合わないなとか、自分はしないなとか思うことはあっても、知ろうとすることはやめないようにしています。

 理由としては知れば知るほど世界の解像度が上がり、理解できることが増える面白さがあるからです。

 その中でも最も楽しいのは、その界隈に身を置く人同士にしか通じないようなやり取りが、理解できるようになった瞬間です。

 趣味の世界を思い浮かべてみてください。

 その趣味をやっている人同士でないと伝わらない言葉ややりとりはないでしょうか。

 自分の例で言うと、先日見かけたカードゲームの話で使われていた「横入れ」であるとか、「カットをお願いしたらシャッフルされて困った」などの言い回しは、何となくの想像はできても何をすることなのかは良くわかりませんでした。

 将棋用語は昨今のブームで浸透してきたような気もしますが、興味のない人にとっては戦術解説など何の話をしているのかよくわからないでしょう。

 高校時代、軽音楽部の友人たちが、楽器の設定や演奏についてのやりとりを聴いていた時も、アンプ、チューナー、シールドなどが何を指すのかよくわからず、これが知れたらもっと楽しいのだろうなぁなどと思っていたものです。

 「わからない」言葉がわかった瞬間、今まで見えていなかったものが見えてきます。

 この瞬間の爽快感というのか、モヤが晴れてスッキリする感覚は、身に覚えがある方も多いのではないでしょうか。

 好奇心の赴くまま知ろうとしていると、この瞬間に多く立ち会えます。

 知りたくなかった新事実なるものに遭遇してしまうこともあるものの、知らなかったことが知れて、見えていなかったものが見える興奮は、何とも味わい深いものでしょう。

 語学を学ぶのは、海外の人が何を言っているのか知るためです。

 知らない時はどんな内容の会話をしているのかわからなくても、言葉を知れば、意識の疎通も可能になりますし、海外の思考も知れます。

 同じことが、母語を共通する相手にも可能なのが「趣味」です。

 趣味の中で使われる用語を知ることで、今までよくわからなかった会話の内容がわかるようになり、面白そうだと思えば自分もその世界に身を置くことができます。

 こうすると知り合いも増えますし、知り合いが増えると言うことは情報源が増え、困った時に頼りにできる人も増えるかもしれないということです。

 人は一人でも生きられますが、他者に頼ることでよりできることが増えます。

 死ぬしかないと一人では思えるところも、誰かがいればそれ以外の選択肢も取り得るのです。

 他人の好奇心を意識的にせよ無意識的にせよ潰しにかかるような行動をとってしまう人をたまに見かけますが、これは人と関わり先へ生きる道を閉ざすきっかけになっているのではないかと思います。

 使える言葉や知識が増えると当然選択肢が増えます。

 選択肢が増えれば生きる道も増えます。

 この選択肢を増やすことに対して障害物がある人もいますが、それを支えるのも知識と好奇心が手助けしてくれるはずです。

 話を趣味に戻すと、趣味に関する語彙が増えると単純に使える話題も増えます。

 ネットの一部界隈では「会話デッキ」なる言葉があって、人と話をする時に使う話題の持ち合わせのことを指します。

 会話の話題数種類を用意することを、カードゲームのカード数十枚をひと組にしたデッキにたとえたものです。

 この会話デッキは少なすぎると会話が続きませんし、デッキ内に会話相手との共通カードがないと会話が成立しません。

 「天気の話」しか持っていないと会話が続かない。自分が持っている「弓道の話」は相手が持っていないと盛り上がらない。と言うような感じです。

 デッキ内にある「話題」を出し合って戦うイメージなのですが、この会話デッキを強力なものにするには話題が大切です。

 その話題を増やす手段の一つが趣味で、趣味に対して広く浅くアンテナを張っていると、会話デッキも人知れず強化されていきます。

 好奇心の赴くままものを尋ね、知った結果自分には合わないと言う判断をすることもあるでしょう。

 自分には合わないことと、その物事を知っていることは別に片方しか成立しないことはありません。 

 知っていると言うことだけで、会話の幅は広がりますし、聞いていてもよく分からない会話というのは無くなります。

 人がしんどくなるのは世界が狭くなってしまった時です。

 見えているものが狭まってしまうと、思考もどうしてもマイナスになっていきます。

 心を豊かに広く保つためにも、好奇心の火は消さないようにしていきたいものです。

 それではまた。

 

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