見出し画像

ラトビア狭軌鉄道Bānītī

ソ連崩壊後、EUに加盟し西側世界への傾斜を強めるラトビアでは様々なインフラが西側標準のものへの置き換えが進む。しかしそんなラトビアにも旧ソ連時代に建設されたまま、観光鉄道という形ながらいまだ現役の狭軌鉄道が存在する。
ソ連の残り香を求め、そんなラトビアの狭軌鉄道Bānītīを訪ねた。
(訪問日:2023年2月27日)

この鉄道はラトビア東部の都市グルベネGulbeneとアルークスネAlūksnes間33㎞を結ぶ。かつてはアルークスネから先、エストニアとラトビアの国境の街ヴァルカまで伸びていたが戦争や経営不振によって縮小を重ね、現在の形に落ち着いている。

2月末のラトビアは寒い上に天気も悪いことが常であるが、天気予報と今後の予定を見比べながらもっとも晴れそうな日を選んで、ラトビアの首都・リガを早朝7時に出発する都市間バスに乗った。

2月のバルト三国の朝は遅い

リガからBānītīの終点となるアルークスネまではバスでおおよそ4時間かかる。旧ソ連時代を思うと隔世の感のある高規格道路を二階建ての大型バスが走る。
近年のラトビアは急速に鉄道網を縮小させ、その代わりに道路網の整備に力を入れているが、都市間バスでも通学や通勤と思わしき地元民が次々と乗り降りしていくの見ると、公共交通機関としての利便性は道路を走るバスの方がはるかに大きいのだなと感じる。

アルークスネには11時ごろについた。バスターミナルの時刻表を見るに、リガまでは1日4~6本ほどのバスが運行しているようだ。リガから日帰りでこの鉄道に乗ることは可能ではあるが、なかなかせわしない旅程になりそうだ。

まずはバスターミナルから歩いて20分ほどかかるアルークスネの駅に行って、時刻と運行情報を確認する。(ここまで来て運休であったら泣く…)
公式サイトでは毎日運行していると書いてあるが、こういう鉄道はたまにサイレント運休していたりするのだ。

駅に行くと作業員の方が除雪していたので、ひとまず運行はしていそうで安心した。アルークスネは小さな田舎町ではあるが、スーパーも食堂もあるので食事には困らない。筆者はバスターミナルの向かいにあるスタローバヤで昼食をとった。

記事の最後に公式サイトのリンクを貼っているので最新情報はそちらで確認してほしいが、この鉄道はグルベネを起点に日に2往復の運転を行っている。訪問時点での時刻は↓のとおり

グルベネ  ⇔  アルークスネ
1300   →  1425
1645   ←  1525
1800   →  1925 (平日+日曜日)
1830   →  1955 (土曜日)
2115   ←  1955 (平日+日曜日)
2130   ←  2010 (土曜日)

料金は片道5€、往復で9€である。

昼食をとった後、アルークスネ1425着の列車の走行写真を狙う。駅から2㎞ほど南に下ったところに開けた築堤を走る場所があったのでそこで列車を待ち構える。

電線はフォトショ先生に頼めばいいかと思いながら…
面倒でまだ消していない…

駅に戻るとすでに機回しは終わっており、発車準備が整った状態でホームに据え付けてあったので、周りをぐるぐる回りながら写真を撮る。

駅には併設のカフェと資料館があるが、訪問日には閉館中であった。観光鉄道だけあって、平日午後の列車に乗ったのは筆者一人だけであった。機関車一両に客車一両そして客が一人というのはどう考えても持続可能な鉄道ではなさそうな気もするが、そんなことを気にしていても始まらない。

車内は快適
走行中もドアは開いたまま

乗車してしまえばただの快適な車内である。車掌も機関車の方に乗ってしまい、客車内は筆者ただ一人である。

列車は雪原を走る

途中駅は北海道の仮乗降場を思わせる簡易的な木のホームがあるだけで、ついでに客がいないと通過していく。結局グルベネまで他に客はいなかった。

1645頃、列車は定刻通りグルベネ駅に到着した。列車は筆者を降ろすとそさくさと車庫に引き上げて行ってしまった。
このグルベネ駅にはリガからの国鉄線が接続しているが、旅客列車の運行は週末のみで、この日は運行していなかった。

分かりにくいが、上から二段目の1~7の数字が曜日を示す。リガ発の列車がグルベネに来るのは金・土・日曜日のみで、リガ行きの列車が出るの土・日曜日のみである。リガ行きのバスは1日5∼8本が運行しているので、Bānītīがグルベネに到着後1735発あるいは1808発に乗ると、当日深夜にリガまで戻ることができる。

筆者はグルベネ市内にあるホテル・グルベネ(シングル一泊30€)に宿泊した。ホテルに荷物を置いた後、もう一度駅に戻ってきて二往復目の列車の出発を見送る。2月のラトビアでは夕方6時はもうすでに薄暗い。

筆者は翌朝のバスでリガに戻るためにグルベネを離れた。
この鉄道は観光鉄道とはうたってはいるものの、車掌にはいっさい英語が通じず、身振り手振りでチケットを買うしかない程度にはローカルな観光地である。
施設を見るに経営状態はそこまで悪くはなさそうなので、すぐに廃止されるということはなさそうである。読者の皆様もラトビアに行く機会があればぜひ訪れてみてほしい。頑張ればリガから日帰りも可能である。

ではでは皆様もよき旅ライフを

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?