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[世界史探究] 新教科書⑴ -5冊見たこと-

 いま高校では,新学習指導要領に対応した新しい教育課程への改編が進行中です。

 この改編は令和4年度入学生(現1年生)から始まっていて,この4月からの新年度に2年生までの新課程への切り替えが完了します。

 そしてそれに伴い,この春,新学習指導要領に則った各科目の新しい教科書が出揃います

 個人的に,新科目「世界史探究」の主要教科書を閲覧していますので,気づいたことなどを,何回かに分けて記したいと思います。


高校「地理歴史科」の枠組み大改編

 まず,新課程における地理歴史科の枠組み改編について,かいつまんで記します。

 地理歴史科は,従来,世界史A・B日本史A・B地理A・Bの6科目で構成されていました。このうち世界史が必修(A・Bから1科目選択)で,残りの日本史A・B,地理A・Bから最低1科目を選択履修する方式でした。

 それが,現1年生からは,1・2年のうちに歴史総合地理総合の2科目を履修(必修)し,2・3年で世界史探究日本史探究地理探究の探究3科目からいずれか1科目を選択履修する方式に変わります。

 但しこれは,学習指導要領に定められた最低限の履修方式で,いわゆる「進学校」では,探究科目の複数選択を含めたカリキュラムが組まれるものと思われます。

 教科書については,歴史総合・地理総合の教科書は昨年発行済み。
 残りの探究3科目の新教科書が,この4月,2年生用として初お目見えすることになります。


3段階の「教科書」

 私が閲覧した(まだ発行前の)教科書は「展示本」と通称されるもので,地域の教科書展示会等で,誰でも閲覧することができます。 

 文部科学省の検定済教科書(教科用図書)の場合,実際に使用される本を含め,次の3つの段階の本が存在します。

  • 白表紙本:教科書会社が教科書検定に申請するため文科省に提出する本。表紙は白いまま何も印刷されていないが,本文は完全に印刷されている(一般非公開)。

  • 教科書見本(展示本):検定に合格したあと作成される見本本で,表紙も印刷されている。採択の検討や教科書展示会用として,教育委員会や国立・私立の学校,高校,教科書センターなどに一定部数が配布される。

  • 供給本:見本段階で残った誤記等を訂正して本番印刷した本。新学期に生徒や教員に供給される完成本。

 検定では,白表紙本に対する検定意見が文科省から教科書会社に通知され,その意見を反映した訂正表のやりとりを経て検定の合否が決まります。そのため,白表紙本から展示本の間では記述の変更がかなりあります。

 1980年代以降の「歴史教科書問題」を契機として,近年,教科書検定に関する情報管理が非常に厳格になりました。白表紙本の外部流出が明らかになった教科書は,検定停止になることさえあります。

 対して,検定合格後の展示本については,教育委員会の施設や公立図書館等に設置される教科書センターで,毎年夏に開催される教科書展示会にて一般公開されます。
 展示会終了後はそのまま図書館の蔵書となる場合もあり,展示本の貸し出しが可能な図書館もあります。


「世界史探究」教科書概観

 私が閲覧したのは下記の5冊。昨年の夏頃から某公立図書館で数回に分けて借り出し,けっこうじっくり見ました。

  • 詳説世界史」山川出版社

  • 新世界史」山川出版社

  • 世界史探究」東京書籍

  • 世界史探究」実教出版

  • 新詳 世界史探究」帝国書院

 今回発行される世界史探究の教科書は全部で7種あります。
 上記以外に山川出版社発行のもう1冊と,これまで世界史Bを出していなかった第一学習社が頑張って出してきた1冊がありますが… 「大人の事情」で割愛しました。

 令和4年度に履修が始まった「歴史総合」は,世界史と日本史の近現代だけを切り出して統合した科目で,従来の世界史A・日本史Aとは全く異なる新科目でした。

 今回の「世界史探究」は,教科書を実際に閲覧した印象からも,ほぼ世界史Bの後継科目と見なして差し支えはないでしょう。

 但し,その目標とするところは,(タテマエではあっても)世界史Bとは大きな差異があって,そう単純ではありません。

 新学習指導要領では,これまで歴史事項の「把握」と「理解」に終始していた学力観から…

  • まず自分で「問い」をたて,

  • 課題を追求したり解決したりする活動を通して,

  • 資料を読み解く力や思考力・判断力・表現力を身につけ,深く理解する。

という学習観に大きく舵を切りました(注:筆者の解釈)。

 かつて「高大接続改革」の中でクローズアップされた,いわゆる「アクティブラーニング」のち「主体的・対話的で深い学び」路線を,教科書によって熱量の差はありますが,それなりに踏んでいる印象です。

 取りあえず,今回はこのへんにして,次回以降,具体的な内容について述べたいと思います。

▼続きは下記の記事にて

 



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