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アフガニスタンの女の子たちのために、図書館を設立!スタンフォード大学院生、サジア ・ダーウィッシュさんにインタビュー

こんにちは!Lean In Tokyoのりさこです!

「教育」と「ガールズエンパワメント」をキーワードに、教育界のプロフェッショナルの方々への、インタビュー記事を掲載していきます🙌

今回は、アフガニスタンの女の子たちのために、Baale Parwaz Library(バーレ・パーワズ・ライブラリー)という図書館を立ち上げた、サジア・ダーウィッシュさんにお話をお伺いしました!

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サジア・ダーウィッシュさん
Baale Parwaz Library設立者

アフガニスタン・カブール出身。14歳で奨学金を受け、ボーディングスクール進学のため渡米。高校卒業後、Mount Holyoke大学で国際関係学を学ぶ。大学在学中、Baale Parwaz Libraryをカブールで設立。2020年秋から、スタンフォード大学教育大学院修士課程に進学。2021年秋から、カリフォルニア大学バークレー校公衆衛生大学院修士課程に進学予定。

アフガニスタンの女の子たちが一歩踏み出せるよう、図書館を立ち上げる

りさこ:サジアとは本来、今年の秋から同級生として、スタンフォード大学教育大学院で一緒に学ぶ予定でした。残念ながら、新型コロナウイルスの影響で私の留学時期が一年延期になってしまいましたが、こうやって連絡を取ることができて、嬉しいです!

まず、サジアご自身について、簡単に教えてもらえますか?どのような社会課題を解決しようとされているのですか?

サジア:私は、アフガニスタン・カブールで生まれ育ちました。そして10代でアメリカに単身留学し、Mount Holyoke大学を卒業しました。アメリカで高等教育を受けましたが、いつかアフガニスタンに戻って、母国の課題を解決したいと思っていました。

アフガニスタンでは、貧困や教育格差など、まだたくさんの社会課題が残っています。その中でも、私は女性として、アフガニスタンに住む女の子たちのために何かしたいと考えていました。

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りさこ:女の子たちをサポートするにあたり、なぜ他のアプローチではなく、図書館の設立を選ばれたのですか?

サジア:それは、まず私が解決したかった課題が、識字率の低さだったからです。国連のデータによると、アフガニスタン全土の12%の女性しか、読み書きができないと報告されています。アフガニスタンでは今も続く紛争の影響で、文字を読む文化が失われてしまいました。特に子供向けの本を出版する企業は、ほとんどありません。また、多くの本は異なる地方の言葉で書かれており、子どもたちは文字を読むことができないのです。

子どもの頃、父が本を買ってくれるといって本屋に行きましたが、児童書はありませんでした。これは、10年前の話です。その頃に比べると良い変化もありますが、まだまだ子どもたちが読める本、そして読める場所が少ないのが現状です。大人数の家族で一緒に住むアフガニスタンでは、女の子たちは家事の手伝いをしたり、姉妹や兄弟と部屋を共有するため、家での読書や勉強はとても難しいのです

ただ本を集めるだけでなく、彼女たちが本について話し合ったり、学んだりすることができるスペースを作りたいと思い、図書館のアイディアに至りました。

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りさこ:児童書を出版する企業が国内では少ない中、どのようにたくさんの本を集めたのですか?

サジア:数が限られているのですが、国内のいくつかの教育団体が、アフガニスタンの童話や児童書を出版しているため、彼らから本を寄付してもらいました。さらにアメリカの学校の先生たちに相談し、文字が少ない絵本を集めました。

これらの絵本は英語で書かれているのですが、子どもたちは文字が読めなくても、絵を見てストーリーを理解することができます。育った国や文化が異なるため、同じ絵本を読んでもアフガニスタンの子どもたちとアメリカの子どもたちの間で、違った捉え方をする様子がとても興味深かったです!

レジリエンスで、逆境を乗り越える

りさこ:一人での立ち上げは難しかったのではないでしょうか?

サジア:はい、立ち上げ当時はとても苦労しました。2016年の夏、まだ大学生だった頃にこのプロジェクトを立ち上げました。

図書館の設立には、政府の許可が必要だったため、アフガニスタンに帰国後はすぐに文部科学省に向かいました。ですが、最初は誰も私の話をきいてくれませんでした。男性主導の政府では、女性たちの苦しみを理解してくれる人が少なかったのです。また、私がアフガニスタンではなく、アメリカで高等教育を受けたこともあって、信頼してもらえませんでした。

政府の許可を得るまで、結局3ヶ月もかかりました。その間、何度も省庁に通いました。やっと許可を得られた後も、課題は山積みでした。今度は、女の子達がこの図書館に通えるよう、保護者たちを説得しなければなりませんでした。

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りさこ:伝統的な価値観が残る社会では、特に革新的なアイディアを実現することが難しかったのではないでしょうか。政府から許可を得た後の課題を、どのように乗り越えたのですか?

サジア:文部科学省と交渉を続けていた時、この図書館がどれほどたくさんの人々の生活をよりよくするか、ストーリーを伝え続けました。そしてある日、彼らはやっと「やってみたら?」と言ったのです。

保護者や地域の人との交渉も、同様でした。どんなに時間がかかっても、彼らを説得するために私自身の話、そしてアフガニスタンに住む女の子や女性たちの話を伝え続けました。

今ではたくさんのスタッフが、私たちの図書館の運営を手伝ってくれています。もう私が現場にいなくても、それぞれのスタッフが地域のために、自ら行動を起こしています。新型コロナウイルスの感染が拡大してからも、スタッフのアイディアでオンラインクラスを開講しました。

りさこ:素晴らしいですね!どのようなインパクトを実感していますか?

サジア: 図書館を'Baale Parwaz’=はばたく羽根、という名前にした理由は、女の子たちがなりたい自分自身になることをサポートするために、必要な情報やリソースを提供するためでした。

そして今、毎日500名以上の女の子たちがこの図書館を訪れます。彼女たちの要望に合わせて、私たちスタッフも読書クラブや護身術、STEM、保健教育、そしてアートなど、様々なクラスを設けています。少しずつですが、地域に住む女の子たちや女性たちが、なりたい自分自身になるためのサポートができていると感じています。

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ジェンダーステレオタイプが、女の子たちの声を抑圧する

りさこ:女の子たちの識字率向上のための活動が、彼女たちの人生をよりエンパワーする活動になっていったのですね!他に、どのようなジェンダーの課題に、女性たちは対峙しているのでしょうか?

サジア:元々想定していなかったことですが、その通りですね!識字率の格差以外にも、彼女たちは日々様々なジェンダーステレオタイプに、抑圧されています。特に、女性の健康に関する偏見が多いですね。

例えば、私たちの文化では、生理に関する偏見がとても強いです。生理はタブーとされ、女性たちは父親や兄弟を含めた男性から、隠さなければなりません。さらに生理は穢れているとみなされ、生理中の女性は他者と同じ空間で祈ることも禁止されています。また、このような偏見から、多くの女の子たちは生理痛を我慢し、家族や近所の人から、生理であることを隠そうとします。彼女たちにとって、生理は恥ずかしいものなのです。

ですから私たちの図書館では、女の子たちに生理の衛生的な処理の方法や、タブーではないということを伝えるワークショップを行なっています。

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もう一つの大きな問題は、児童婚です。とても悲しいことですが、アフガニスタンではいまだに児童婚が行われています。最近読んだ研究データによると、アフガニスタンの9割の親が、娘が高等学校もしくは中学校を卒業したタイミングで、結婚するべきだと信じているそうです。

女の子が高等学校に通っていたとしても、保護者によって退学させられ、結婚させられ、妊娠をしてしまうことも多くあります。最悪なケースでは、彼女たちは夫から家庭内暴力を受けることもあります。妻となった彼女たちは、家庭内で声をあげることが許されていないのです。

私たちは図書館の活動を通じて、未成年で結婚することが女の子たちにとってどれほど悪影響か、保護者に訴えています。また、女の子たちも図書館のスタッフのことを、カウンセラーのように相談をしてくれます。ですが実際は私を含め、スタッフには誰一人プロのカウンセラーがいないのが現状です。

今後大学院では、私自身が教育と公衆衛生に関する専門的な知見を得て、彼女たちを守ることができるようになりたいと思います。

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りさこ:日本でも、ジェンダーステレオタイプは今も蔓延しています。アフガニスタンとはまた異なる形ですが、生理を含め、女性の体や健康について公共の場で話すことは、あまり好まれていません。

サジア:アフガニスタンと比べて、ジェンダーの課題に関して日本はとても進んでいると思っていました!ですが、ジェンダーステレオタイプはどんな国や地域でも、様々な形で残っていますよね。

アフガニスタンでは女性の健康に関するデータがとても少ないので、修士課程ではこれらのデータを集め、分析していきたいと考えています。

オーナーシップを与えることが、エンパワメントにつながる

りさこ:今では多くのスタッフが図書館で働いていると、先ほど教えてくれましたね。課題が山積みだったスタートから、どのように多くの人を巻き込めたのでしょうか?

サジア:女の子たちにオーナーシップを与え、彼女たちが「私たちはこのコミュニティに所属している、その権利がある」と自信を持って言えるようにすることが、鍵だと思います。

私は多様な人々と協働し、変革を起こすことを信じているので、地域の女の子たちが多様なアイディアを発信することを、心から応援しています。人々が「変化を起こしたい」と思っていることに耳を傾け、そして「どのように変えたいの?」と問いかけることが大切です。

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りさこ:サジアがこれまで取り組んできた図書館の取り組みは、女の子たちに、彼女たち自身の人生のオーナーシップを与える活動ですね。彼女たちの人生は常に男性たちにコントロールされていたと思うので、オーナーシップは本当に重要です。

サジア:そうなのです。そして図書館に通う女の子たちは、一度自分たちの声に周りの人々が耳を傾ければ、アイディアとレジリエンスでなんでもできる!という自信を得ることができています。

実際に、彼女たちはスタッフに対して自ら図書館をより良くする提案をしてくれるようになりました。私たちはただ、どのようにサポートできるか相談し、あとは彼女たちが自らの手で行動を起こしているのです!最初は失敗することもありますが、彼女たちは失敗から学んでいるのです。

最初は生徒の一人だった女の子が、今ではスタッフマネージャーとして、図書館で働いています。彼女は新しいプロジェクトにも着手しています。お互いに耳を傾け、行動を起こすために支え合うことを大切にしているため、多くの女の子たちが自分たちのコミュニティに将来恩返しをしたいと考えています。

彼女たちをこれからもサポートするために、前述の通り研究を通じて、女の子たちにとってより良い学びの環境を作っていきたいと思います。

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りさこ:これからの活動も、楽しみにしています!そして来年カリフォルニアで会うときは、必ず一緒にプロジェクトに取り組みましょう!貴重なお話を、ありがとうございました!

次回のインタビューもお楽しみに!

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