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自作詩

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ナルが書いた自作の詩のようなものたちです。読んでいただけたら成仏できます。
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記事一覧

夜空に泡々

曹達に浮かんでは消える星々 次の星が消えたなら それから何度見送ったのか この店にはふたりきり 夜空の奥にきみが見える わたしより本が大事みたい こっち見てよ、話したいの また星が浮かんで消えた しゅわしゅわと消える星たちが この想いまで連れて行きそうで 今日言わなきゃ、その何度目かの今日に そ知らぬ顔ではじける曹達 曖昧なまま夏が終わりそう 蝉時雨と祭り囃子、壁に向日葵の刺繍 降り出しそうな夕立の前に 次の星がはじけて消えたなら ふたりの恋を、今はじめたいよ はじけ

乱反射

空色の瓶ラムネを 晴天に引き合わせる 乱反射する陽光が きみの笑顔に触れる 何年経っても夏は暑いまま ふたりは離れずにいるね 少しだけ微睡んできた恋心 それでも一緒がいい 登り坂、駆け上がる アオハルなんて言葉じゃ足りない ふたりが一緒にいるならば それだけが全ての日々 空色の瓶ラムネ 晴天に引き合わされて 乱反射した陽光と きみの笑顔に触れた どんな夏も冬も一緒にいよう 季節の果ての愛があるはず 少し微睡んできた恋心 それでも、ずっと一緒 空色の瓶ラムネ 心の温度を

月に麦酒

欠けていく月を ぼくたちは見ていた 少し昔、泣いているきみの隣 きみは大好きな彼に さよならを告げられていた 葡萄味のサイダーを飲んで 「大好きだったんだ」って笑う それがあんまり哀しいから ぼくが守るって言ったんだ パッチワークのシャツに 海風が残るくらい ぼくたちはそこにいたね、覚えてる? あれからの色んなことは 言葉にしたら泡になりそうで 言わないよ、だけど ふたりこうして今も 苦い麦酒を飲みながら 満ちていく月を見ている きっと、それがすべて パッチワークのシ

泡を繕う

夏らしいことしたいね きみがそんなことを言うから わたしは泡を繕いはじめる サイダーの涼しさを 手の中でかたちにする 暑さを増していくばかりの夏に もういや!って言うよりも わたしたちは涼しいのよって 手の中の泡に触れる 一瞬の花火、サイダーの泡、蝉時雨 カメラよりもポップに残せたらいいと思わない? 喉を涼しくする、サイダーは通り雨 駆け抜けて、夏になる 夏らしいことしたいね ふたりエアコンの効いた部屋 私は泡を繕いはじめる サイダーの涼しさも ふたり生きていくこれからも

コースター

曹達水の向こう側 笑ったきみの名残 海風にすべてを奪われて わたしの心は空っぽになる ハンドメイドのコースター、雫で濡れて いつまでここにいたら きみは迎えに来るのでしょうか 曹達水、反射光、泡 笑ったきみの残滓 海風にのってミントの香り わたしの心は透明になる ハンドメイドのコースター、影がのびる いつまでここにいれば きみは探しに来るのでしょうか たくさんの列車が行く、このリアスの景色 きみは馬鹿みたいにはしゃいでた 待たせるのは嫌いって、そう言ったじゃない いつだっ

ましろ

白い部屋、西日、あなたの手 託されたおもいはわからないまま あれから幾度かの夜と朝 ぼくは世界に存在するだけ 薬品、焼香、読経、夜更け 喪服、抱擁、夢枕、夕焼け 真言、線香、挫折、朝焼け 接吻、病棟、喧騒、「」 あなたがいたことさえ幻だったとして ぼくがいることの確証はどこにもない 世界にあるはずのあの名残を ぼくは探している、探している ぎゃていぎゃていはらぎゃていはらそうぎゃていぼぢそわか おんあぼきゃべいろしゃのうまかぼだらまにはんどまじんばらはらばりたやうん

わかば

若葉の風かおるこの街で ぼくたちは夢を探した、冒険家になって はるか遠くからでも見えた希望 拠り所にした、あの山 一度きり、出会ったエル・ドラド 待ち合わせた交差点、赤信号、走り出す 月明かりの下で語った祈りと傷 数字の羅列になった、かなしいこと わからないことばかりでも、できないことばかりでも いとしいと言えたあの年月に、その日々に ぼくは帰れない、帰れない、帰れない、帰りたい (緊急地震速報 強い揺れに備えてください) (緊急地震速報 強い揺れに備えてください) (

我は韋駄天

思いのままに笑え 願いのままに走れ 我は韋駄天、駆け抜ける神 我は韋駄天、此岸を駆ける きみが泣くのなら風になる きみが笑うなら歌になる きみが怒るなら刃になろう 思いのまま、願いのまま ただ祈るきみのためだけに 誰よりも速い、風であろう 我は韋駄天、荒野を駆けて 我は韋駄天、俗世を駆けて 祈り、泣いたきみのため ただ一陣の風になろう ただ一陣の風であろう 走る、走る、奔る、奔る 駆ける、駆ける、駆ける、駆ける きみを泣かせた俗世の悪を ただ風となりて吹き飛ばさん

泥濘に三日月

ねえ、わたしたち ぬかるみの底にいるみたいね あきらめた夢はがらくた あの日の空はモノクロ 触れ合うゆびさきの、熱 それだけで息ができた日々 今ふたり、くちびるを重ねる 消えないでということばの代わりに ぬかるみの底 がらくたばかりの景色 でもあなたがいてくれた ほら見上げれば三日月 蓮華さえ咲かずとも ぬかるみの底 モノクロになる希望 でもあなたがいてくれる ねえ見上げたら三日月 いつか満ちてしまうもの 触れ合うゆびさきの、熱 それだけで息をしてた日々 今ふたり、く

星月夜

月明かりのない夜に ひとり唄うさみしさを知るきみ 孤独と呼ぶには少し美しすぎる そのせつなさよ きみが紡いできた幾多のことばが きみが繋いできた数多のおもいが その行く先を照らす無数の星となるまで 月のない夜も、日の昇らぬ朝も ぼくがそばにいる きみのことばでしか伝わらない心があって きみのおもいでしか変えられない世界がある 祈り、愛することをやめない きみだけが知っている、あの星月夜 きみがいるから笑えるんだ 知っていたでしょう? きみが紡ぐ幾千のことば きみが繋ぐ幾

ハイビスカス

散文に咲いたニライカナイ 泥濘に浸るオボツカグラ 畦道に腰掛けるサルタビコ 通り雨と二十三夜大神 (ありのまま、あるがまま) (ありのまま、あるがまま) されるがままに生きてしまいました ぼくはあなたにはなれなかった クエビコの肩に留まる烏 その両目に咲くハイビスカス 立ち入り禁止の岐の神 マジムンになったあの三毛猫 (ありのまま、あるがまま) (ありのまま、あるがまま) されるがままに生きてしまいまして それでも祈りだけは辞めまいと 心なぞもはや此処にあらず どうか

ことば

蓮華色、きみのまぶたに 脆そうな雪が触れる ねずみ色、重い空 見上げてふたり笑った さよならって言葉がきらいで ぼくたちはいつも「またね」って言う その小さな、淡い祈りが どうかいつまでも続きますように 終わりばかり詠ってはいけないね かなしい結末を引き寄せそうで ぼくたちは言葉に怯えている だからせめて希望を詠う 蓮華色、きみのまぶた はかなげな雪が降りる ねずみ色、暗い空 明日もふたり一緒に さよならを嫌っても いつか離れる日は来るのでしょう お別れはいつもくるし

ブーゲンビリア

あなたの肩越しのブーゲンビリア 海風と喧騒、5時のチャイム 駅前の行列、頭の上にカラスアゲハ 古本屋のミステリ小説 結末は黒く塗りつぶされていて ふたり、大笑い あなたの頬に触れた日 風鈴と線香花火、8時のバラエティ 静寂と鼓動、てのひらの汗 駅前から響くレゲエミュージック なんだか気が抜けてしまって ふたり、キスをした ぼくがいないと寂しい?って訊く そんなの当たり前じゃない、ずっとそばにいて 甘い時間にブーゲンビリア いまはたったひとり いまはわたしひとり 寂しいっ

北極星

まどろんでいる世界を一撫でして ぼくは今日旅に出る かなしみはぼくを引き止めない いとしさのある彼の地を目指して 夜を歩く、月を睨む 夜を歩く、星と唄う 夜を生きたから朝があるのだ 明けない夜があったとしても いつか昇る太陽を願う それをやめてはいけないと 北極星を目指すのならば ぼくたちはきっとめぐりあう かなしみはぼくを引き止めない かなしみはぼくを変えられない 夜を歩く、夜を歩く 夜を歩く、ひとり唄う かなしみはぼくを変えられない いとしさだけを信じて歩む まどろん