『行動経済学が最強の学問である』要約(相良奈美香)認知の不合理をビジネスに役立てる方法
行動経済学という学問について、どう思いますか?
この記事では、相良奈美香さんの書籍「行動経済学が最強の学問である」を取り上げます。
著者は、日本人として数少ない行動経済学の博士課程取得者であり、行動経済学コンサルティング会社の代表です。
まず、“行動経済学とは何なのか?”を解説すると、経済学と心理学の融合により生まれたもので、人間の非合理な意思決定のメカニズムを解明する学問。
行動経済学により、なぜ人はそう行動してしまうのかを理解することができ、対策も講じることができます。
いま、世界の名だたるトップ企業で行動経済学を学んだ人材の争奪戦が繰り広げられており、たった一人の人材獲得のために何千万円もの資金が動いているそうです。
行動経済学にはたくさんの理論、例えば、ナッジ理論、システム1,2、プロスペクト理論、サンクコスト効果、確証バイアス、選択アーキテクチャーなどの非常に多くの理論があります。
しかし、行動経済学は新しい学問であるため、これまで体系化されてきませんでした。
本書は、行動経済学の主要理論を始めて体系化したもので、ビジネスや実生活において非常に役立つとてもおすすめの本です。この記事で、その概略を押さえ、気になる方はさらに本書を手に取って、深堀りしてみてください!
1. なぜ行動経済学が最強なのか?
いま世界のビジネスエリートは、行動経済学を学んでいます。それは、人間の行動を理解することこそがビジネスの肝になるとしているからです。
BtoB企業であれ、BtoC企業であれ、企業の顧客は紛れもなく人間であり、上司や同僚取引先も人間。言うまでもなく、経済とは人間の行動の連続で成り立つため、行動経済学は非常に有用です。
行動経済学が有用であるのは、なぜ人はそう行動するのかがわかるという点。ただ単に、ある人がAをしてBをしなかったという過去の行動履歴だけでは、対策を出すのは難しいですが、なぜBはしないのかが分かれば、どうすればBをしてもらえるかが導き出せます。
なぜ人はそう行動するのかということも、直感や主観ではなく、実験で証明された人のセオリーとして理論化したのが行動経済学です。これにより、何千万何億もの人々を一気に動かした事例が世界各国であることが、行動経済学が最強の学問と言われる所以です。
こちらの図は本書からの引用です。
Google、Amazon、Netflixなどの世界の名だたる企業がこぞって行動経済学を取り入れ始めており、多くの企業が行動経済学チームを設け始めています。世界の企業が行動経済学に注目しています。
2. 行動経済学の本質
行動経済学の本質は、非合理な意思決定のメカニズムです。そして、非合理な意思決定をしてしまう3つの主な要因は、認知のクセ、状況、感情です。
たくさん理論はあるけれど、この3つのうちのどれかに帰結すると、著者は体系化して説明しています。本書ではこれを分かりやすい図で示しています。図は本書からの引用です。
そもそも、従来の行動経済学は人間の行動を理解する理論の集まりでした。
体系化されておらず、混沌と理論を羅列するだけで、分野やカテゴリー分けがされておらず、それぞれの理論をただ断片的に丸暗記するしかありませんでした。
しかし、本書は新しい学び方を提案しています。
行動経済学の本質を明らかにし、その本質を理解するための3つのカテゴリーを設け、それぞれの理論を分類することで、体系化したのです。
これにより、個別バラバラの理論ではなく、本質を掴むことができるようになりました。
3. 認知のクセについて
ここからは、非合理な意思決定をしてしまう“3つの主な要因”それぞれについて解説していきます。
認知のクセ
認知のクセとは、脳の情報の処理の仕方のこと。これがあることで、私たちは情報を歪めて処理してしまい、それが非合理な意思決定につながっています。
脳の情報の処理の仕方は一つではなく複数あり、例えばシステム1, システム2です。
これらは、ものすごくざっくり言ってしまうと直感と論理です。素早く情報を把握し判断する直感がシステム1、情報分析した上で把握しゆっくり判断する論理がシステム2です。
私たちにはこの両方があり、場面場面で使い分けています。システム1, システム2は、認知のクセの最も基本となるものです。
ではなぜ、このシステム1, システム2があることが、判断のゆがみにつながるのでしょうか?
有名な研究に、チョコレートケーキとフルーツサラダの実験というものがあります。
この実験では、被験者を2グループに分け、記憶力の研究ですと聞かせた上でグループAには2桁の数字を、グループBには7桁の数字を記憶してもらいました。
そして、実験の途中実験中ですが。お礼に軽食を用意していますと伝え、チョコレートケーキとフルーツサラダを出します。
その結果、2桁の数字を覚えたグループAはフルーツサラダを選ぶ人が多く、7桁を覚えたグループBはチョコレートケーキを選ぶ人が多くいました。
一体なぜ、グループAの方がより健康なフルーツサラダという合理的な選択を取れたのでしょうか?
2桁の数字を覚えたグループAの人たちは、問題が簡単だったために考える余裕があり、じっくり考えるシステム2を働かせられました。
一方で、7桁の暗記という重い深くかかっていて思考に余裕がないグループBの人たちは、システム1で瞬間的に判断せざるを得ませんでした。
その結果、よりカロリーの高いチョコレートケーキという非合理な選択をしてしまったのです。ただし、一概にシステム2がよくシステム1が悪いということではありません。
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