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#9 『70歳の正解』やいかに? 還暦の先に見えてくる70代、80代


■和田秀樹氏の著書、ベストセラーTOP10に6冊ランクイン


街がオレンジ色に染まる10月末、めでたく還暦を迎え60代の仲間入り。
「ようこそ60代へ、お楽しみはこれからだ!」「いつまでも好奇心満載で!」「これからのチャレンジを応援するよ!」などなど、暖かいメッセージをいただきました。還暦の記念は、3度のメシより好きなラグビーを観に新国立競技場へ。ラグビー王国ニュージーランドのオールブラックスを相手に、日本代表は最後まで激闘。31対38で惜しくも敗れはしましたが、闘い続ける姿に無限のエネルギーをもらいました。集まった観衆はなんと6万5188人!新国立競技場の最多観客数を塗り替え、2023年のワールドカップフランス大会への期待も自ずと高まってきます。


日本×オールブラックス 新国立競技場には6万5188人が来場!



還暦を迎えるにあたって1冊の本を読みました。大ベストセラー『80歳の壁』(幻冬舎)を書いた和田秀樹氏の『70歳の正解』(幻冬舎)です。ある時、85歳の母が「『80歳の壁』の和田さんの本が6冊も!」と差し出した新聞記事をみると、新書のベストセラー上位10冊に和田氏の著書がなんと6冊もランクインしていたのです。和田氏は1960年生まれの精神科医で、老年医学の専門家として長年にわたって現場で高齢者をみてきました。2022年3月に出版した『80歳の壁』が大ベストセラーとなり、一躍時の人に。ちなみに、現在書店に並ぶ『80歳の壁』の帯には「50万部!」「壁を超えたら、人生で一番幸せな20年が待っています!」と書かれています。

その新聞記事を眺めながら、最初は第10位の『60歳からはやりたい放題』(扶桑社)に惹かれましたが、すでに“やりたい放題”でいこう!と決めているので、第5位の『70歳の正解』をチョイス。書店で手にとってみると、帯に書かれた「老いを遅らせる生き方決定版」「70歳でやめていいこと、しておくこと」「大ベストセラー『80歳の壁』と一緒に読む本」「6万部突破」といったコピーが目に飛び込んできます。3年後の2025年には団塊世代が後期高齢者になることを考えると、70代の生き方や暮らし方にフォーカスがあたるのもなんとなくうなずけます。



■好奇心!行動目標!働き続ける!など、生き方の指針を再確認


『70歳の正解』を和田氏が出版したのは、「脳」と「体」の健康を守り、80歳の壁を超えるためには、60代から70代の生き方が極めて重要であることを伝えよう!と思ったのがきっかけだそうです。全体は次の7つの章から構成され、各章のテーマに沿って80歳から最後の20年を輝かせるための方法がこと細かに書かれています。

〇第1章 長寿とアンチエイジングの正解
〇第2章 衰えない脳の正解
〇第3章 ストレスとうつに負けない正解
〇第4章 家族円満の正解
〇第5章 お金に困らない正解
〇第6章 死ぬまで勉強の正解
〇終章  60歳から始める正解


『70歳の正解』和田秀樹著(幻冬舎新書)



 読み進めながら、実に多くの「なるほど」がありましたが、中でも頭に強烈に残った3つをご紹介します。1つ目は「第2章 衰えない脳の正解」から『幼児のように「どうして?」と問えば、前頭葉は働き続ける』です。前頭葉は、思考力や判断力を司る大脳の1部ですが、実は「使っているようで使っていない」のがこの前頭葉。特に平穏無事な暮らしを送る人にはその傾向が強くみられ、同じような毎日が続くと、前頭葉を使う機会はほとんどなくなってしまうとか。前頭葉の錆びつきを防ぐには、世の中に起きていることに「なぜ?」という疑問を抱いて、観察力や推理力を働かせることが最も効果的。また、「想定外の出来事」も大きな刺激になることから、和田氏は「起業を志す」など、思い切ったチャレンジをすすめています。平穏無事よりも刺激にあふれた毎日を送る方が、前頭葉は元気に働いてくれそうです。 

2つ目は、「第6章 死ぬまで勉強の正解」から『遺書を書くまえに「したいことリスト」を書く』です。和田氏も還暦を迎えて、向こう20年間にしたいことを書き出してみたそうで、私もこれはすぐに着手しようと思いました。あれもしたい、これもしたいという思いはあるものの、可視化したことはなく、何となく漠然としています。仕事や趣味、遊びに関しても「目標」を立てて、ある程度の期限や締め切りをはっきりさせると、モチベーションもより高まりそうな気がします。 

3つ目は、「終章60歳 から始める正解」から『残り30年の時間を有意義に生きるために働こう』です。和田氏は若い頃は、60代になったら大学教授など、いくつかの役職を辞して、仕事のペースを落とそうと考えていたそうです。ただ、いざ還暦を迎えてみると「まだ人生のサイズを縮めるときではない」「できるところまで、突っ走ろう!」と気持ちが変わったそうです。 1日24時間から、睡眠、食事、入浴などの生活時間を差し引くと、1日10時間程度の「自由時間」が残り、これが1年で3650時間、60歳から20年間で、約7万3000時間の自由時間があると算出されます。この途方もない時間を有意義に過ごす方法は、「勉強する」と「働く」だと和田氏は断言。ただ、この場合の「働く」は、「パートタイムで働く」「家事をする」「ボランティアをする」など、様々な“働き方”を含むと書き添えられているので、一気に選択肢が広がる気がします。会社を辞めて7カ月、具体的な“働き方”を探すべく、再始動へのエンジンがようやくかかりそうです。

 

■プールで出会う70代80代のアクティブマダムは、『70歳の正解』を体現 


「お仕事を休んでいるなら、平日にもぜひいらっしゃい!」と声をかけてくれたのは、以前から通うスポーツクラブで仲良くなった友人です。彼女は私より7歳年上で、2年前に完全リタイアし、今では平日も含め週4回通っています。平日のスイミング教室には、70代80代の大先輩たちが大勢参加しているので、「60代の私なんて、“ヒヨコ”って言われて小さくなってるのよ」と笑います。夏から私も平日に通い始めると、1キロや2キロの距離をゆっくりと軽やかに泳ぐ大先輩たちの姿を目の当たりにしました。聞けば、スイミング教室で指摘された部分をしっかり修正できたか、納得いくまで泳いでいるのだそうです。中には「マスターズ水泳大会」を目指しているメンバーもいて、思った以上に熱量のある平日のプールです。 

そして、平日のロッカールームのおしゃべりが実に面白い!有効な地元情報が無数に飛び交うので、私の耳はダンボになります。オープンしたばかりのパン屋のどの種類がおいしいか? せたがやPayを導入し始めた店舗がどこか? コロナワクチンの接種会場はどこがすいているか? などなど無限の情報が耳に入ってきます。さらに「〇〇に行ってきたから、はいお土産どうぞ」とか「羽生結弦のアイスショーのチケット買えたのよ~」「レディ・ガガ最高だったわ、来週は東京ドームでブルーノ・マーズよ」と、実にアクティブに過ごしている様子も聞こえてきます。スポーツやエンタメへの感度がとても高いのでしょう、還暦のラグビー観戦の翌日は、プールへ入った途端「昨日の試合は、よかったわね~」と何人かが声をかけてくれ、とても嬉しくなりました。

 ロッカールームで着替えを終えたマダムたちが、「12時45分には行きますから、4人で!」と電話でランチの予約をする様子もたびたび見かけます。プールのお仲間さんたちと、いそいそレストランへ向かう姿に、なんだか楽しそうだなあ、あんな風に年を重ねるのもいいなあと、つくづく感じます。好奇心たっぷりで、実にアクティブなプールのマダムたちは、『70歳の正解』に書かれた多くをすでに実践しているのかもしれません。スポーツクラブに通うことで生活のリズムを整え、目標に向かって泳ぎのスキルをあげ、友人たちと楽しくおしゃべりしながら食事をする、そんな暮らしには多くの『正解』が含まれているような気がします。身近にいる大先輩たちの姿を拝みつつ、時折『70歳の正解』を紐解けば、始まったばかりの60代も大いに楽しい時間を送れそう!と思えてきました。


文・藤本真穂 
株式会社ジャパンライフデザインシステムズで、生活者の分析を通して、求められる商品やサービスを考え、生み出す仕事に従事。女性たちの新たなライフスタイルを探った『直感する未来 都市で働く女性1000名の報告』(ライフデザインブックス刊/2014年3月)の編纂に関わる。2022年10月に60歳を迎えるのを機に、自分自身の働き方や生き方を振り返り、これからの10年をどうデザインするかが当面の課題。この3月、60歳まであと半年を残してプチ早期退職、37年間の会社員生活にひと区切りした。