見出し画像

ペットがいると生活は整う?/AND PET#25

ぼたんが旅立ち、飼い主はだらしなくなりました

ぼたんが旅立って、3カ月。寂しい、悲しいという感情は相変わらずですが、それ以外に気になっていることがあります。それは、私の生活がだらしなくなっているということ。

ぼたんがいた頃は、食事やトイレ掃除、一緒にのんびり過ごすための時間(別名イチャイチャタイム)など、私の1日の中にぼたんのためのルーティンがありました。

ところがぼたんがいなくなると、とたんにメリハリが無くなり、朝はギリギリまで寝ていたり、夜は食事の後片づけもせずにダラダラしてしまったりという状態に。掃除も「ぼたんの抜け毛もないし……」などと理由をつけて手を抜くようになりました。ぼたんとの遊びを自分の運動にも位置づけていましたが、代わりとなる運動をするかといえば、これまた気分がのりません。

誘えば必ず一緒にゴロゴロしてくれた、付き合いのいいぼたん。


ペットがもたらす「生活が整う」という効果

ペットが人間にもたらすよい効果には様々なものがあると分かってきていますが、その1つとして「生活が整う」もあると思います。

株式会社Fanimalが行った、犬を飼っている20代・30代の男女を対象にした調査によると、犬と暮らし始めてから「早寝早起きになった」という人の割合は、「あてはまる」「ややあてはまる」の合計で59.3%。平日でも平均30分、休日では平均41分早く起きるようになっています。これは犬の散歩が影響していると考えられます。

(出典)株式会社Fanimal
「犬を飼っている20代・30代男女に聞いたライフスタイルの変化に関する調査」

犬の散歩の影響といえば、「運動量が増えた」とする回答が「あてはまる」「ややあてはまる」の合計で70%以上というデータも出ています。

(出典)株式会社Fanimal
「犬を飼っている20代・30代男女に聞いたライフスタイルの変化に関する調査」

コロナ禍では、リモートワークの普及や仕事や学校が急に休みになるなど、生活のリズムを乱す要因が多く見受けられました。さらに、感染予防のため外出の機会も激減。そんな中でペットの存在は、共に暮らす人間の健康維持に大いに役立ったのではないでしょうか。

また、半数以上が「整理整頓を心がけるようになった」と回答しています。ペットの誤飲やけが、いたずらの予防のためでしょう。我が家もぼたんがいた頃は私なりに片づけていましたが、ぼたんがいなくなってからは部屋の中やテーブルの上に出しっぱなしになっている物が増えています。

スマホの利用時間が減った」という人も約43%にのぼり、犬と暮らすことで時間の使い方にも変化が表れるようです。私が最近眼精疲労の悪化に悩まされているのは、ぽっかりと空いてしまったぼたんとのイチャイチャタイムを、スマホで埋めてしまっているからかもしれません。

早寝早起きをして、運動も行い、部屋は片付き、スマホの使用を控えるようになる(こともある)ペットとの生活。今の私の生活より、体にも心にもよさそうです。


自由と自堕落は紙一重

先日読んだ本に、向田邦子さんの『独りを慎む』という短いエッセイがありました。一人暮らしを始めてから行儀が悪くなったという向田さんが、誰も見ていなくても慎むべきことは慎まなくてはならないと自戒する内容です。「自由と自堕落は紙一重」という言葉にドキッとしました。

『独りを慎む』が収録されたエッセイ集『伯爵のお気に入り』(河出書房新社)

一人暮らしでは、家の中に他者の目や共有するルールがありません。キチンとするのもだらしなくするのも全ては自分次第。人に迷惑をかけず、社会生活に支障がなければOKとも考えられます。でも、人は楽な方へ楽な方へと転がっていってしまうもの。そのうち自分ではどうしようもなくなってしまう危険性もはらんでいるでしょう。

私も以前は今のような暮らしに何の疑問も抱いていませんでしたが、ぼたんと過ごす中で、無意識のうちに行動が変わり、生活が整っていたのだなと改めて感じます。私のように自由が自堕落へとシフトしがちな人間にとっては、他者の存在は大切なのでしょう。その役割を課してしまうのは申し訳ないけれど、やっぱりまた猫と暮らしたいなと思います。

文・横山珠世
女一人と猫一匹の暮らしから人と猫が共に健康で幸せに生きていく術を考える、株式会社ジャパンライフデザインシステムズの編集兼ライター。『セルフドクター』や書籍などの制作・発行に携わる。