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「人を知るほど、人が分からなくなる」という現象

こんにちは。
この記事に目を通していただき、ありがとうございます。大坂谷(オオサカヤ)です。

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先日、開催したワークショップにて参加者からこのような質問をいただきました。

Q.年間、数百件もコーチングをしていると「あぁこのパターンか」となってしまい『答え』を教えたくならないですか?

つまり「人を知れば知るほど、コーチング(相手から答えを引き出すアプローチ)ではなくアドバイス(答えを教えることを)したくならない?」という問いです。
これは、なかなか考えごたえのあるテーマだったので、今回はこの質問をもとに綴ってみます。

|そもそも「答え」とは


まず、答えという言葉を調べてみました。

答えとは、呼びかけや問いに対して言葉で応じること。返事。返答

なるほど。

このままの意味で考えていったとしたら「悩み相談をされたら、返事はします」という謎の解が導き出されてしまうので、冒頭の質問の文脈になぞらえて「解答」という意味で考えていきます。

ちなみに解答の意味を調べてみると、

解答とは、問題を解いて答えを出すこと。また、そのこたえ。

おお。いい感じ。
問題集を解いていくようなイメージでしょうかね(このあと出てくる「答え」という言葉は以下⬇の意味で使っています)

答えとは、課題(または悩み)に対する解決策のこと

これならいけそう。
ちゃんと着地するかわかりませんが、不時着を目指して綴ります。

|「答え」は存在するのか

確かに、質問者の言う通り相手の抱える悩みや課題に対して、その答えを知っているなら言いたくなりますし、答えがあるなら教えてあげたほうが親切ですよね(わざわざ隠す必要もない)

と言いつつ、

そもそも、この世の中に「答え」が存在するものはどれだけあるのでしょう?

例えば、

1+1=

この答えは何でしょう?
ほとんど方は「」と答えるかと思います。

ただ、この「2」が本当に唯一の答えなのでしょうか?

例えば、リンゴ1つとリンゴ1つ一緒にすると、確かにリンゴは2つになりますが、1個100円のリンゴと1個100円のリンゴをあわせて買うと200円になるでしょうか?
実はそうとは限りません。スーパーでは、2個だと180円になることもあります。

コップの水だとどうでしょう?
コップ1杯の水とコップ1杯の水を足すと、2杯のコップの水ができるでしょうか?
実際には(なみなみに注がれた)コップ1杯の水ができます。

一休さんの「とんち」のように感じるかもしれませんが、これはこれで一つの事実といえます。この観点で考えてみると、答えの存在することの方が世の中には少ない気がします。

|「答え」は約束事に過ぎない


この文脈で考えていくと、、、

『1+1』の答えは、
どこかの国の賢い人が言ったであろう「『1+1』は『2』ということにしておこうか」という約束事の上に成り立っているのであって「1+1=2が真理」ということではありません。

すると、

当然ながら「1+1=2」という約束事を常識として信じていた人たちも、実体験を積み重ねるほど『1+1』の答えが10個、20個、、、あるいは100個、200個というように答えが急増します。

ここまで読んで「あのー、大坂谷さん。答えっていうのは、別に真理とか唯一無二の類を求めているわけではなくて、大体あっていればいいんだよ」そう思う人も少なくないかもしれません。

確かに、ここまで書いておいてなんですが「『1+1』の答えは何ですか?」そう質問されたなら『2』としておけば大体は当たるので、私もコンマ1秒以内に「『2』だよ。」と答えます。

ただ、こういった数学や歴史のように、課題(問い)に対して便宜上の答えが存在するものならまだマシですが、「対人」となるともっとややこしくなってくるんです。

|無尽蔵に増える「答えらしきもの」


話を戻しますと「人を知れば知るほど、コーチング(相手から答えを引き出すアプローチ)ではなくアドバイス(答えを教えることを)したくならない?」の質問に対する結論「答えを教えようがない(あるいは、教えられない)」です。

かのガンディーも、このような言葉を遺しています。

歴史を学んでわかることは、今まで歴史で起こったことのないことが、未来永劫起こらないとは限らないということです。マハトマ・ガンディー

つまり、歴史を学べば学ぶほど「未来は何が起こるか分からない」ということが分かるということです。

これは人も同じです。人の悩みや課題も聞けば聞くほど、不確定要素が多いことが分かるので、結果的に人のことがわからなくります。

なんだか禅問答のようになってしまいましたが、例えば、同僚の田中さんからこのような相談がきたとします。

田中「仕事のモチベーションが上がらないんです。どうしたらいいですかね…?」

よくありますよね。
あなたも一度は相談されたことがあるかと思います。
もしこのような相談を受けたなら、どのような答えを提示するでしょうか?

「転職しちゃえばいいじゃん」
「朝活をやると気分が晴れるよ」
「週末にリフレッシュするといいよ」
「信頼できる先輩と飲みに行ったらいいよ」

例えばこのような感じでしょうか。
この時点ですでに「答えらしきもの」はたくさん出てきます。

しかし、この答えらしきものを教えたところで田中さんは「いいですねー。それ、やってみます」と言いながらも、こちらの教えた答えは、高確率でお蔵入りです。きっと、田中さんはこちらのアドバイスを1時間後には忘れています。

なぜなら、不確定な要素の多い、人の課題や悩みに対して、背景(悩むに至った根本的な理由)を把握せずに答えを教えているからです。

例えば、田中さんに対して「何があったからモチベーションは上がらないと感じてるの?」このように質問してみたとします。すると、田中さんから以下のようなことが語られます。

「評価面談で年収が上がらなかった...
「会議の場でみんなの前で叱責された...
「希望している部署に異動できなかった...

「社内恋愛していた彼女と別れてしまった...

 だから、
 仕事のモチベーションが上がらないんです」by.田中

このように、最初に語られた悩みから分岐(細分化)し始めます。
分岐した時点で、最初にこちらが出した答えは全くの見当違い(もしくは精度の低い)な答えになってしまいます。

さらに、

私たちはロボットではなく人間なので、寸分の狂いもなく同じ悩みを抱えていた人が3人いたとしても、悩みや課題に対する答えはそれぞれの得手不得手、好き嫌い、経験、体験によって異なります

例えば「希望している部署に移動できなかったから、仕事のモチベーションが上がらない」というケースで考えてみると、、、

佐藤さんにとっての答えは「静かな場所で瞑想する」かもしれません
山本さんにとっての答えは「ジムで身体を鍛えること」かもしれません
田中さんにとっての答えは「PUNPEEのWe are Tanakaを聴く」かもしれません

こうなってくると「モチベーションが上がらない」の答えは、人の話を真剣に聴けば聴くほど、無尽蔵に増えていきます
それにも関わらず、田中さんに対して自分なりの答えを教えたところで、人それぞれ得手不得手、経験・体験が異なるため、田中さんにはできない(合わない)可能性が高いのです。

だからこそ、人を知れば知るほど人がわからなくなるという現象が起こってしまいますし、結果的に「(コーチング的なアプローチで)自分で答えを導き出してもらう方が、精度の高い答えにたどり着く確率って高くない?」という結論に至ります。

|じゃあ、何だったら教えられる?

もちろん教えることを否定しているわけではありません。例えば「型」になっているようなものは教えられるというか、教える必要があると思っています。

例えば、ビジネスマナー
細かく言えば流派とかあるかもしれませんが、基本的な所作は同じです。それにも関わらず「すべて自己流でやってください」とか言われたら、取引先からもらった名刺で鼻をかんでしまうかもしれません。

他にも、自転車の乗り方
自転車の乗り方には型がありますよね。これも「人によって乗り方違うから、自分なりにやってみなよ」とか言われたら、アクロバットな走法をしてしまい事故にあうかもしれません。

あとは、漢字の読み方もそうです。
「人によって読み方が違う」とかだったら困りますもんね。基本的には決まりきっています。

また、思考の進め方も同様です。
解決策そのものは提示できなくともコーチング的なアプローチによって「この角度から考えることは出来る」「過去のこの体験を掘り下げると解決策を導き出せる可能性がある」こういったポイントを示唆することはできます。

個別の課題や悩みごとについては、
自分の体験談・アイデアについては伝えることはできます。ただし、これはあくまで答えではないので情報を共有するという形式になります。

つまりこういった型のようなものは伝えたり示唆することはできる一方、「人間の悩み」というような不確定要素の多い事柄については、一緒に考えることが最適解なのかなと思っています。

|話をまとめると...


実はこの話にはまだ続きがあるのですが、、、

すこし情報量が多すぎたかと思いますので、一旦この辺でここまでの話をわかりやすく整理します。

整理するとこんな感じ⬇です。

Q.年間、数百人もコーチングをしていると「あぁこのパターンか」となってしまい『答え』を教えたくならないですか?

A.なりません。

以上!



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