見出し画像

【学会参加報告】カーテンとプロジェクタ映像を用いた空間拡張システム(エンターテイメントコンピューティング2022)

はじめに

こんにちは。杉浦裕太研究室に所属しています、B4の澤田直春です。
9/1~9/3に福知山公立大学で開催された、Entertainment Computing 2022(EC2022)にて、「カーテンとプロジェクタ映像を用いた空間拡張システム」に関して口頭発表を行いましたので、こちらで報告させていただきます。

研究の概要

人間が快適な日常生活を送る上で、生活環境は重要な役割を果たしますが、近年では、生活するために十分な空間が確保できていない場所や、窓が設けられず閉塞感がある地下空間があります。

そこで、本研究ではカーテンとプロジェクタ投影を用いて疑似的な窓を作り出し、空間演出を行う手法を提案しました。

壁にスクリーンとカーテンを設置し、開閉に合わせて映像を投影します。日用品として利用されるカーテンを用いることで、生活環境に対して溶け込ませるように窓を提示できます。さらに、カーテンが存在することで、立体感のあるシステムとなり、プロジェクタ投影による平面的な描写に奥行きが与えられ、違和感のない疑似窓になります。

また、ディスプレイを用いた疑似窓では、一度設置したら大きさや場所を変えることは難しいですが、本システムはプロジェクタを用いるため容易に変更可能です。

投影にはPC、Webカメラ、プロジェクタを用います。システムの利用を簡単にするため、Webカメラは、その画角にスクリーン領域全体が含まれていれば、任意の位置に設置できるように実装しました。同様に、プロジェクタは、その投影範囲にスクリーン領域全体が含まれていればシステムを利用できるように実装しました。

図は本システムを用いて作成した疑似窓の様子です。設置されたカーテンの間にプロジェクタで映像を投影しています。

投影した様子

本研究では実装したシステムを利用した複数のアプリケーションを提案しました。対外的な窓としての利用、室内窓としての利用、遠隔コミュニケーションツールとしての利用です。

本システムはプロジェクタ映像を用いているため、窓の景色を自由に変えることができます。そのため、対外的な窓として利用する際は、時間や場所に依存することなく自由な景色を投影できます。室外の環境を反映することで、室内にいる人に自然に情報提示を行うこともできます。本来の窓で得られる情報を、窓のない空間でも得られるようになります。

外の時間を反映して投影映像が変化

室内窓として利用する際は、もう1つのWebカメラを利用します。室内で、隣にある空間に向かう壁にスクリーンを設置し、奥にある部屋の映像をリアルタイムで投影します。壁の存在を意識すること無く、壁の奥にいる人、部屋の状態について、本来いる方向を見ることで情報が得られます。

室内窓

カーテンの役割に着目して遠隔コミュニケーションツールとして利用される手法が他の研究で提案されています。それに倣って本研究では、カーテンを開く動作で接続を要求し、閉じる動作で切断するといった機能を導入して、窓の奥に相手がいる映像を投影する遠隔コミュニケーションを提案しました。カーテンの開閉はプライバシー管理に密接な動作であるため、PCやスマートフォンを用いたビデオ通話より生活への親和性が高いコミュニケーションになると考えています。

本システムについての議論と制約として、以下の3つの要素が挙げられます。

  • 制約カーテンとスクリーンの明度が近すぎると誤作動をしてしまう

  • システム評価をする必要がある

  • 機能拡張を行う

今後は、先に挙げた3つの要素を中心に、本システムを更に拡張し、目的に沿った効果がより得られるように研究を進めていくことを考えています。

当日のフィードバック

当日は複数の質問を頂き、有意義な議論をすることができました。具体的には、ディスプレイと比べたときの本システムの利点、カーテンの隙間から漏れる光を再現したら面白いのではないか、カーテンは実物であるが窓枠も実物を利用したらどうなるかについて質問していただきました。開催に当たり、議論ができるチャットも用意されていて、そちらでも多くのコメントを頂いたため、知見が深まりました。

感想

初めての学会参加だったので、緊張する部分もありましたが、会場には学生も多くいて、参加しやすい環境が整っていました。研究室に配属されてから研究していた内容を対外的に発表して、様々な方面の方々からフィードバックを頂ける環境に驚くとともに、これまでには得られなかった多くの刺激を受けることができました。学会で発表された研究は考えもしなかった面白いアイデアで溢れていて、そういった場に参加できたことを嬉しく思います。
開催地は京都府福知山市でしたが、自然が多く、閑静な街並みが素敵でした。このような機会に訪れることができて良かったです。

発表中の様子

発表文献情報

澤田直春, and 杉浦裕太. "カーテンとプロジェクタ映像を用いた空間拡張システム." エンタテインメントコンピューティングシンポジウム 2022 論文集 2022 (2022): 203-207.

発表スライド

発表動画


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?