魚鵜左脳

デュエマの背景ストーリーに関する小説を書きます。好きなカードはシャングリラ様

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最近の記事

幽玄なる邪に誘われるは

ダーツがひとつ、投げられた。それは俊敏に空を裂き、的の中心に突き刺さる。 「つまんない」 ダーツ=デラアーツは大きく跳んで、ベッドを召喚し頭から落ちた。ぼふん。 ジャシン様が自然文明に向かっている間、特に何もやることがない。アルトゥス様から不用意に外へ出るなと言われているし、幾重もの暇がミルフィーユとなり私の心の働きを鈍らせている。 つまらなくて暇で、消えそうだ。退屈でクソで、死にそうだ。何の気なしに、矢を投げた。それはとても弱くて、勢いがなくて、ぐしゃぐしゃの折り紙で作られ

    • サファイア交響曲

      ズバババーン!と光が弾けた。 バキュバキューン!と音が爆ぜた。 夜闇に輝く星をバックに、ボクは架空のクリーチャーたちを踊らせる。 彼らは暗い紺碧色の体に、不気味な白がグラデーションのように混ざり込んでいた。全てを滅ぼす深淵の龍。記憶を求めて彷徨う悪夢の鎧。黒い空に暗色が溶け、白い部分だけが亡霊みたいに浮かび上がるのが面白かった。 それ、闇のビームだ。ほら、かっこいい剣舞だ。ボクは指揮者のように杖を振り乱し、幻惑の世界を作り出していく。 「また作り物で遊んでいるのかねペン

      • エキサイティング・バンキシー・アート:上位存在の饗宴

        「芸術というのはなにも実際の形に残る作品ばかりではない。巷ではハイクとかいう言葉のアートが流行っているようだが」 バンキシーは語った。水文明全体を見下ろす巨大な塔——レッドシック・タワーの最頂部で。タワーは遥か上空に浮かんでおり、透明化しているため普段は誰にも勘付かれない。 バンキシーのいる、ガラス張りの広大な部屋はたった1人には持て余すように見えるが、バンキシーのスケールと比べると随分ちっぽけなものだった。もちろん私と比べてもだけれど。 「アートというのは所詮自己の発露

        • エアプサスペンスとゼロ計画

          全てのゼニスはゼロより生まれる。 虚無より出でて虚無のために、ただその身を駆動し続ける。それがゼニスの存在意義であり、ゼニスが天頂の強者たる所以だった。 「そろそろ完成の時間です、サスペンス様」 布を全身に纏う少年、もといイズモが声を掛けた。声の先にいる対象、「呪」の頂サスペンスは、どうとも感じ取れない淡白な所作で顔を上げた。 眼前には、七色のトライストーンが集合し放射状に光を発していた。その光の周りを少しづつ禍々しい瘴気が漂い始める。ピリピリと肌がひりつくような空気

        幽玄なる邪に誘われるは

          ファンタジスタ・ライフ

          「こんなものか」 邪神はつまらなさそうにそう言い放つと、そこから腕を思い切り引き抜いた。赤い飛沫が飛び散り、地面の黒々とした深淵と深く混ざりあった。首領竜ゴルファンタジスタは、べちゃりと音を立ててうつ伏せに倒れ込む。彼の胸には剛流振のゴールのようにぽっかりと空いた穴が開いており、邪神がその生命をホールインワンで葬ったことを示していた。ゴルファンタジスタは邪神の足元に手を伸ばそうとするが、力を使い果たした今、スノーフェアリーの赤ん坊ほどの気力も湧いてこない。地に伏した巨体を中

          ファンタジスタ・ライフ