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出会い週間 上流階級てやつは。

この文章は、2011年に書いたものです。異様にアクセスが多かったのですが、上流階級という言葉でヒットしたのかしら。それともラリーかな。
ゆるりと読んでやってください。(写真は私邸なので転載はお控え下さいね)

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このところ、色々と出かける機会があります。感動・驚きを忘れないうちに書き留めておかなくちゃ。

先日は夫の幼馴染のお宅に招かれていきました。Compiègneだったけな?パリから80キロほど北に行ったのどかな田舎です。素敵なお庭のある、広々としたメゾン・ド・カンパーニュに、子供3人の家族5人で暮らしているという、都会に疲れている私にとっては憧れの生活。

と、思ったのは最初だけ。実は、ちょっと不思議な時空に入っちゃった、そんな感じのご訪問だったのです。

うちの夫はいわゆる上流階級の出身で、この幼馴染も伯爵のタイトルを持つ良家の坊ちゃん。奥様も、やはりベルギーの伯爵家のお嬢です。同じ階級が混じわって縁組するという傾向は、ラリーについて書いたこのリンクを観てください。

まずご主人は、片道2時間近くかけてパリに通勤しています。ストも多いフランスで田舎電車、郊外電車、メトロ、バスを乗り継いでの通勤はさぞかしストレスフルでしょう。でも、パリの不動産高騰で、とても家族五人が住めるようなアパルトマンなど借りられないので、家族の資産である、空き家同然だったこの田舎の家に住もう、ということになったらしいです。

奥様はちょっとデリケートな感じの女性。敬虔なカトリックで、会話は信仰について。宗教画や十字架がそこら中に飾ってあります。
そうでないときは、彼女のご実家の栄華在りし頃の思い出話です。そのうちには、アルバムまで持ち出して、子供時代にシャトーで遊んでいる写真まで見せて貰いました。
でも決して自慢話って感じではないのです。本当に懐かしんでいるんだとおもう。
「○×での夏は素敵だったわ」(夫がここで私に耳打ち。○×というのは割りと有名なシャトーのことらしい)
「×○公爵がそのときいらしてね」(夫がここでも耳打ち、この公爵は彼女の大叔父)、
と、そんな話をひとしきりして、
「でも、これも今は昔の話。あの○×も屋根の修繕費用がないからって今や廃墟同然だし・・・。パパって経営センス、ゼロだったから、フフッ。」ってどう突っ込んでいいのか分からないです、私。

そのあとの会話も、壁の絵画の説明やアンティークの皿などを見せてくれて……。別にいいんだけど、私達、まだアラフォーでしょう?ほかに話すことあるよね?これでは、まるで義理の両親の世代と話しているような気になります。
くどいようですが、彼女、自慢って言う感じではないのです。
「あなたもこういうお話しお好きでしょう?ワタクシ達の世界はクラシックですし」という、何となくうっすら恐い感じでもあり。

邸宅は大きいだけにメンテナンスも大変なようで、壁紙が禿げていたり、「この前は雨漏りで大変だったわ、でも修繕も大変だから、テープ貼って済ませているの、ほら。ほほ。」って、そんなのばっかり聞いていると、なんか悲しいな上流階級、って、そんな邸宅も持たない私達はもっと悲しい哉、なんですが、つい同情しちゃう。

帰りの車中、夫に、
「 子供達はとっても可愛くて良い子だけど、あんな時間軸ゆがんでいる親に育てられちゃうと、将来現実社会で苦労するんじゃない?」
と、ミドルクラスの観点で発言をしてみると、夫は、
「う~ん、でもああいう人、フランスにはまだまだ残っていると思うから、何とかなるんじゃないか。」って。

そういわれてみれば、先月会ったやはり夫の幼馴染夫婦も、ちょっと浮世離れしていて、子供の教育などに関しては、昔ルイ何世かの家庭教師らに由縁のある、かなりオリジナルな学校(フランスの教育法に準じていない)に通わせていました。そこに入るのは頭もだけど、何より家柄がモノを言うらしい。今の時代もそんな学校があるなんて、驚いたものです。

そう思うと、フランスってやっぱり懐が広いのではないでしょうか。
現代のフランス社会を語るとき、BOBO(ブルジョワ・ボヘミアン)とか、低所得者層に対する社会保障、移民の多さなど、「共和国」方向に目が行きがちですが、こういう「アンシャン・レジーム(旧制度)」体質の人も受け入れているわけだし。

ちなみに、旧貴族らのゴシップマガジンは、常時、全仏雑誌売り上げ上位に入るそうです。

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